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February 17, 2007

『逃亡日記』

Escape_diary

『逃亡日記』吾妻ひでお、日本文芸社

 『失踪日記』イースト・プレスで再ブレイクした吾妻ひでおさんですが、ブレイクしたからといって、量産体制に入るわけでもなく、続編は2年たっても刊行のメドすらたっていないのはさすがです。秋田書店時代に使い捨てされたからでしょうか。どうせ人気なんか出ても長続きはしない、というあきらめでしょうか。同人誌みたいなのに発表していたのをかきあつめた『うつうつひでお日記』は角川書店から出ましたが、今回は新趣向。漫画は少ししか書かずに、基本的には随舌。インタビューで語ったのを編集の方でまとめました、という本。

 個人的には『逃亡日記』の背景をもっと知りたいし、特にアル中病棟のことは、もっと深く知りたいので全然OK。ただし、お手軽感はいなめない。吾妻さんもp.9でこの本は買わなくていいから立ち読みしてくれ、とか書いているけど、その正直さで、やっぱ買ってしまう。ここまで言い切れるのは、やっぱナンかあると思うし。

 『失踪日記』はホームレスの生活も面白かったけど、とにかく興味深かったのはアル中病院の入院体験。小説では中島らもさんの『今夜すべてのバーで』ではじめてリアリティをもって伝えられたけど、『失踪日記』のアル中篇はもっと衝撃的でした。アセトアルデヒドを分解する酵素の働きを妨害するシアナマイドを服用していても、初めて許された外出で関係なく酒を飲むような患者がいるというのには本当に驚きました。いまでこそシアナマイドの服用後飲酒を繰り返すとやがて酒を過飲できるというNemann's conditioning現象も報告されているのを知っていますが、こんなことはありえないと思ってましたもん。

 ということで『逃亡日記』でも興味深かったのはアル中時代篇の話。退院してもすぐに酒を飲んでしまうような人もいるそうで《退院してすぐまた飲んで入院。"直帰"って言われている(笑)そういう人の話を聞くと、こいつは飲むしかないだろううなって人が多いんだよ。もうね、妻子に逃げられて仕事なくて福祉だけって。もちろん仕事もできない。身体もボロボロ。…これだったらオレでも飲むなって(笑)。もうなんの希望もないんだもん。それは飲むよ》(pp.69-70)あたりは壮絶。また、『失踪日記』に出てくる詐欺の常習犯A川さんについてシーツが替えられない、段ボールが組立てられないといった失見当識じゃないのか、みたいな話も新鮮でした(p.73)。《社会福祉受けている人は一年くらい経つと働けって言われる。でも働くのがいやだから飲んじゃってまた入院しちゃう。オレの知っている人は一年ごとに入院している「あっ、またか」って》(p.82)あたりも。

 『失踪日記』は二回目の失踪の時はホームレスしていた時に東京ガスの下請けの下請けあたりにスカウトされるみたいなのがあって、本人も配管工としてガテン仕事で筋肉ついて健康な生活していたというあたりは面白かったんですが《でも、アナを掘ってて自己主張、自己表現はできないよ(笑)》(p.212)あたりの云い方は、素晴らしいな、と。

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