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February 23, 2007

『天皇家の“ふるさと”日向をゆく』

Umehara

『天皇家の“ふるさと”日向をゆく』梅原猛、新潮社

 高千穂を旅行するのならば、事前にこれを読んでいけば、かなり楽しい旅になることはうけあい、というのが梅原猛先生のこの本。カラー写真は満載だし、語り口もやさしい。

 梅原先生がなぜ、日向を旅したのかというと、記紀の内容は歴史的資料としては使えないという津田左右吉以来の日本史の"常識"があまりにも浸透してしまった結果、記紀を読むことが少なくなりすぎているのではないか、というあたりが出発点になっていると思います。それならば、古代からの伝承が冷凍保存されているかもしれない日向の神社などを訪れ、宮司などから直接、話を聞いてみよう、というセンチメンタルなロードムービーのような本になっています。

 梅原先生は《高千穂で私は、ここにはたしてサルタヒコ伝承があるかどうかを最も重視した。なぜなら、サルタヒコこそニニギノミコトの道案内をして、天孫降臨を可能にした神だからである》(p.42)としてサルタヒコを祀る荒立神社を訪れます。ガイドの方が優秀な方なのでぼくも案内してもらいました荒立神社。天孫降臨の櫛触岳に擬せられる櫛触峰の裏にあるというのも、位置関係として整合性がとれていて素晴らしい。

Aradate_jinja

 古事記ではニニギノミコトが天降りした時に、それを遮るような国つ神としてのサルタヒコが現れたので、ニニギノミコトはお供の女神であるアメノウズメ遣わして何事かと問いただすと、道案内をしようと思っていたというので、素早く結婚してしまった、というのが大筋なんですが、神楽などではサルタヒコは天狗、アメノウズメはオカメの姿であらわされます。それは、それぞれ目鼻立ちの深い縄文人、凹凸の少ない弥生人をあらわしているともいわれています。また、二人の結婚は急だったので、荒木のままで宮を立てたということから荒立神社といわれているのですが、実際の荒立神社もこの通り、素朴すぎるつくりです。

 宮司さんの姓は興梠(こうろぎ)。これは昔は男神の敬称である神呂木(カムロギ)からきたらしいです(女神はカムロミ)。ちなみに鹿島アントラーズに所属するMF興梠選手も高千穂の出身だそうです。

Shioujigamine

 櫛触神社の近くにはカムヤマトイワレコヒノミコト(神武天皇)を含む四兄弟を祀った四皇子峰もあり(神社がかつて立っていたといわれているが今はない)、神武天皇だけでなく四兄弟が同列に祀ってあったというのが、なんとも地元的なリアリティを感じさせてくれる場所です。ここも印象的な場所でしたねぇ。

 また、夜神楽に関しては《修験道、陰陽道、仏教などの要素が加わり、また明らかに国学者の手によって整理され、改造された跡もある》としながらも、もともと日本文化は様々な要素が渾然一体となったものであり、こうした要素を分析して、どう発展したかという過程を研究することが重要だという指摘も、全体のトーンとあっています(p.70)。

 この後、霧島、薩摩半島へと旅は続きます。今年は夏場に霧島に行くことになりそうなので、また、その時にでも、じっくりとご紹介しますが、神武天皇の7/8はハヤトの血であるということは、天皇の神聖性を弱めるハズであり、本来ならば三輪山に降臨したと書けばいいものを、天皇の祖先がはるか九州からやってきて、しかも反乱分子のハヤトの血が濃厚であるという記紀の記述は、事実を背景にしているからではないか、という「旅の終わりに」あたりはなるほどな、と思わせるものがありました。

 また、「薩摩半島はワタツミの国か」の章で、八紘一宇の文字が大書された塔が残っているのはいかがなものかと書き、そういった姿勢で記紀を読むことは《日本国民に降りかかっている死の運命よりも自分たちの権力の崩壊を恐れ、世にも無謀な特攻隊による神風作戦を考え出した》戦前の軍部と同じ過ちを犯すことになる、ということもハッキリ書かれていて気持ちよかったです(p.197)。

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