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January 22, 2007

『日本の「戦争力」』

Niho_no_sensoryoku

『日本の「戦争力」』小川和久、アスコム

《湾岸戦争で、軍事評論家たちがテレビに出ている。民間に軍事評論家をもっているということは、自由な社会でいることのあざやかな証拠といえる。テレビをみながら、ふと、(こんな分析家たちが昭和一けたに五、六人もいたら、昭和は変わっていたろう)と妄想した。むろん、たわごとにすぎず、昭和一けたの時代にそんな自由はなかった。せめて大正デモクラシー時代にこういうひとびとが出て、前時代の日露戦争を徹底的に解剖してくれていたら、とも思ったりもする。以後の日本人の理性-国家を等身大でみる能力-が大きく成長したに相違ない》(『風塵抄』、司馬遼太郎、中央公論社)

 ということで、不思議ヘアの江畑謙介さんをはじめ、トンデモ系でない人たちの本は時々、読むようにしています。例えば『新軍事考』江畑謙介、光文社、1991はQ&A形式で「なんでロシアは北方領土を返還しないのか?」という質問に「オホーツク海に西側部隊の侵入をゆるせば沿岸都市がたちまち干上がるし、有事の際、最終報復手段としての潜水艦発射ミサイルという切札がなくなる」と明快に答えていたりします。こんな感じで、必ずしも、それが100%の正解ではないにしても、別の見方は提供してくれると思うんですよね。

 と、まえがきは長くなりましたが、友人から薦められて読んだ『日本の「戦争力」』ですが、この手の本にはQ&A形式が馴染むんでしょうか、わかりやすく(もちろんそれが100%の正解ではないにしても)、いま軍事的にかかえる問題について解説してくれます。

第1章…自衛隊の「戦争力」-いびつな自衛隊で本当に日本を守れるのか?
第2章…アメリカへの「戦争力」-アメリカにとって、日本の重要度はいかほどか?
第3章…テロへの「戦争力」-日本はアメリカとどう付き合っていくのか?
第4章…イラクにおける日本の「戦争力」-自衛隊のイラク派遣は間違っていたのか?
第5章…北朝鮮への「戦争力」-本当に北朝鮮は日本を攻めてくるのか?
第6章…日本国憲法の「戦争力」-平和国家をつくるためには、憲法9条をどうすべきか?

 と、ほぼ、いまシロートが考え得る疑問に関して、小川和久さんが答えてくれているのがありがたい。

 その中で新鮮だな、と思ったのが「戦力投射能力」(Power Projection)という概念。仮に朝鮮半島を自衛隊が攻めるとすれば、1)100万人程度の陸軍を上陸させることが必要2)そのためには空母と3000機程度の航空機によって制空権をとることが必要3)しかし、そのためにはAWACS(空中警戒管制機)が数十機、空中給油機も100機程度が必要だが、航空自衛隊が所有しているのはそれぞれ4機程度だし空母などはない、つまり敵国に戦力を投射できる能力はない、ということなんです。

 つまり、憲法九条を改正したいようなヒトたちは《自衛隊が、まさに憲法9条を絵にかいたような構造の軍事力であることを知らないのです》(p.58)というあたりは痛快。

 では、自衛隊は世界的にどの部分で優れているのか。それは海上自衛隊の対潜水艦戦能力と掃海能力。なぜか。米軍が自衛隊に対して、世界戦略の中で補完されるべき能力として必要だから。しかし、別に、それは自衛隊だけではなく、例えばドイツ軍は冷戦当時、東欧諸国に対抗するために戦車を中心として世界水準の陸軍だけは整備されました。《結局、日本やドイツの軍事力は、アメリカが望む部分だけは世界最高水準で整備されましたが、一人立ちができない構造》(p.51)というわけです。第二次大戦中にUボートで悩まされた記憶があるためか、ドイツ軍には潜水艦保有が事実上、認められていませんし、これは書いていなかったと思いますが、日本には、今後とも空母は持たせてくれないでしょう(人類史上、最初に機動部隊による奇襲を成功させたのは真珠湾ですし、空母対空母の戦いはミッドウェーが最初で最後ですからね)。

 しかし《アメリカの同盟国のうち、アメリカと軍事的に対等だった国など存在しません。軍事面から見れば全同盟軍がアメリカのリーダーシップのもとにあり、すべてが片務条約であり、すべてが非対照的な同盟》(p.97)なのですから、それは現実として受けいれざるを得ない、と。

 そして、日本はアメリカに《戦略的根拠地を提供できる同盟国は世界中どこにもない》国であり、米軍が不祥事、事故を起した場合、唯一、大統領が謝罪する国だそうです(p.120-)。実際、湾岸戦争で展開した米軍57万の燃料と弾薬の8割以上は日本から運ばれたもので、貢献度はイギリスの3倍以上だとのこと。

 北朝鮮に関しては、航空機の90%以上は4世代前(40年前)の旧ソ連で開発されたオンボロで、しかも、北のパイロットの飛行時間は燃料油不足で10年間で35時間程度なのに対して、韓国空軍は年間200時間以上、航空自衛隊は年間150時間以上、アメリカ海軍のトップガンは年間400時間以上なので制空権はとれない、と。つまり、ほとんど戦争にならない、と。また、弾道ミサイルを発射しても、イスラエルがフセインのイラクから39発の弾道ミサイルを撃ち込まれた時の死者は2名にすぎず、唯一、心配しなければならないのは核兵器を弾頭に搭載できるようになることだけとして、無用に北朝鮮脅威論をふりかざすヒトたちはコストをかけずに北朝鮮の軍事プレゼンスを増大させて利するだけの《北朝鮮の手先》(p.230)とかなり激しい言葉で非難しています。

 このほか、「米本土や日本にある米軍基地が核攻撃で全滅しても、ブルーリッジが無事でいる限り、米海軍と海兵隊の作戦は継続できる」「日本に備蓄している燃料は世界最大最強の米軍第七艦隊を10回も満タンにできる量」など興味深い情報が出てきます。

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Comments

僕の従兄弟、実は陸自でヘータイをやっとるんですが、その従兄弟から訊いた事。
①現在陸自で正式採用されている銃は、部品点数が多すぎることと、異常に精密すぎて(すぐジャムる)実戦には全く不向きであること。これじゃ戦争できないよ~。
②北朝鮮との有事とかテレビでは言ってるけど、本腰入れて戦争するなら、陸上戦力の敵地への投入が不可欠だが、日本にはそもそも上陸用舟艇が無いの。ていうか、そういうノウハウも訓練もしてないよ。寝言は寝て言えとのこと。(pataさんがお書きになられてい制空権については彼が門外漢だからだと思うけど、何も言っていなかった)
③はっきり言って、憲法改正しようがしまいが、「軍隊持って自主独立」なんて妄想は布団の中だけにしてくれと。正直言って、日本の自衛隊(軍)は「サエキさんの好きなローマ史で云えば、同盟国から集める補助兵以外の何者でもないですよ。アメリカのプレゼンスの元、それ以上の選択はありえない。」

憲法改正したらアメリカと少し距離を置いてオトナの付き合いが出来るかも~~わ~まるで昔のニッポンだ~なんて夢想しているドリーマーちゃんたちはお尻ぺんぺんしてあげないといけません。

Posted by: サエキ | January 22, 2007 at 09:38 AM

あ、どーも。
「憲法改正したらアメリカと少し距離を置いてオトナの付き合いが出来るかも」ってのは、確かに妄想ですよねww
たぶん、現実の姿というのは、アニキである米軍が「これは中核業務じゃないから切り捨てたい」と思っている部分のアウトソーシングを請負うようなことに自衛隊はなるんじゃないかと思います。そんなことに愛する自衛隊の人たちを(これはマジメにそう思っています。自衛隊の人たちは施設庁関連だった以外の人たちは潰しがきかなかったのに結構マジメでヘンな人にあまり会ったことないですもん)コキ使わせるために憲法九条改正するよりは、いまのままの方がよっぽどいいと思うんですがね。

Posted by: pata | January 22, 2007 at 10:29 AM

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