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January 23, 2007

『外国人投資家』

Gaikokuji_toushika

『外国人投資家』菊地正俊、洋泉社

 日頃、新聞の株式欄やテレビの経済番組でよく使われる「外国人投資家」という言葉。その実態について、メリルリンチ日本証券チーフ株式ストラテジスト、マネージングディレクターである著者が長い"現場"での経験を生かして、新書ならでは要にして簡、しかもあきさせない文書で読ませてくれました。

 日頃から、薄っぺらな新書ばかりを出す版元が多い中にあって、洋泉社は岩波と並んで良心的だと褒めてきたのですが、今回も素晴らしい出来。株式投資をやっている個人投資家、これからやろうとする団塊の世代の人々などが読めば、そうですね、思い切っていえば「100万円の価値がある本」じゃないですかね。もう、本当に情報満載って感じです。

 日本の《株式市場で外国人投資家に次ぐ売買シェアを持っているのは個人投資家です》《外国人投資家といっても、外国資産運用会社の資金を日本人が調査・運用しているケースが多く、マンションの隣の住人が外国人投資家であったりするケースもあるのです》《株価の方向性としては、外国人投資家が買い手で、国内投資家が売り手の場合に、圧倒的に株価は上がるケースが多くなっています》《残念ながら、日本の金融産業は国際比較で比較劣位にあるといわざるを得ません》《2003年に始まった長期上昇相場は終わっていないと判断しています》なんて感じで「はじめに 外国人投資家を知らずして日本経済は語れない」からして興味津々。グイグイ引き込まれます。

 《米国投資家は資金規模が大きいうえに、日本株だけでなく、欧州株やアジア株も一緒に運用していることが多いので、日本株の運用は大型株が中心となり、中小株までは手が回らない傾向があります》(p.23)なんてのは実感ありますねぇ。こうした投資傾向に関しても、例えば財閥のタタや情報サービス最大手のインフォシスぐらいしか知らない著者がほとんど経験のないインドで相場をはるとしたら《インド株が値上がりすると予想して、株式時価総額の大きい企業へ投資するでしょう》(p.34)なんてことで説明してくれます。これは上手い説明の仕方ですね。まあ、もっとも、欧州の投資家は日本に対する知識水準も高く、中小株への興味も高いそうですが。

 安倍内閣に関しては《小泉首相や竹中前総務相の名前は知っていても、2006年9月に就任した安倍晋三首相は、外国人投資家間では知名度が低い面がありました》《安倍内閣の閣僚の中で竹中前総務相ほど外国人投資家に知名度の高い閣僚がでるかどうかは疑問です》(p.33)なんて書いていて、内閣発足直後の株安時にささやかれていたことが本当だったことがわかりました。

 欧米にはヘッジファンドが8000以上あるのに、経済規模が米国の1/2もある日本では80程度しかなく、1000程度まで増やすように金融インフラを増やすべきという主張も納得的です(p.40)。

 少数の企業へ大量投資するプライベートエクイティ、5%程度の株式を得ることによって経営陣に働きかけようとするアクティビィスト・ファンドなどファンドの違いもじっくり説明してくれます(あ、もちろん村上ファンドはアクティビィスト・ファンドに分類できますね)。

 《もっとも、個人投資家は株価が下がった時には日本株を買うという押し目買いの傾向がある一方、外国人投資家は積極的に上値を買うので、高値掴みになってしまうケースがあると推測されます》(p.81)なんてことまで書いてあります。ぼくは細々と金融資産の1割程度(なくなってもかまわない額)を株式市場で運用していますが、ちょっと溜飲をさげました。《本来、日本の投資家は貿易黒字で稼いだ資金を米国債などに振り向けるのではなく、日本株に振り向けるべきでしょう》(p.89)として子どもの頃からの金融教育の重要性なども説きます。

 日本株は世界の景気が回復すると、輸出関連大企業の業績が向上、それによって日本の内需も回復するというパターンをとるため、《日本株は世界景気に対する敏感株》(p.97)ととらえられているという整理も、ここまでハッキリ書かれると面白かったですね。

 あと、ハッキリ書いているのが《オイルマネーは欧米の主要機関投資家に比べると影響力はあまり大きくないという印象です》(p.101)ということ。05年の日本株買い越し額は米国投資家が5.5兆円だったのに対し、その他の地域は1900億円にしかすぎないとのこと。

 と「第3章」のここぐらいまでが面白いのですが、「第4章 外国人投資家に買われる株・売られる株」「第5章 外国人投資家は日本の政治・経済をいかに読み解いているか」「第6章 外国人投資家は日本企業に何を要求するのか」「付章 大手外国人投資家の紹介 規模が大きい大手外国資産運用会社」などもデータはいっぱい。

 お勧めです。

 いや、にしても洋泉社新書は素晴らしい!

[目次]

はじめに 外国人投資家を知らずして日本経済は語れない

第1章 そもそも外国人投資家とは誰なのか

第2章 日本市場において外国人投資家の存在感はなぜ高まっているのか

第3章 外国人投資家が買わないと上がらない日本株の仕組み

第4章 外国人投資家に買われる株・売られる株

第5章 外国人投資家は日本の政治・経済をいかに読み解いているか

第6章 外国人投資家は日本企業に何を要求するのか

付章 大手外国人投資家の紹介
規模が大きい大手外国資産運用会社
[北米の投資家]フィデリティ/キャピタル・グループ/ステート・ストリー
ト/パトナム・インベストメンツ/ウェリントン・マネジメント/エバーグリー
ン/アライアンス・バーンスタイン/AIGグループ/フェデレーティド/バン
ガード/T・ロウ&プライス/ドッジ&コックス/フランクリン・テンプルト
ン/ブランデス・インベストメント/ジャナス/レッグ・メイソン/JPモルガ
ン・アセットマネジメント/ブラックロック/ゴールドマン・サックス・アセッ
ト・マネジメント/モルガン・スタンレー・アセット・マネジメント/カルパー
ス/TIAA-CREF/チューダー・インベストメント/マニュライフ
[欧州の投資家]UBSグローバル・アセット・マネジメント/クレディ・スイ
ス/ドイツ銀行グループ/シュローダー/インベスコ/ヘンダーソン/ガートモ
ア/モーリー・ファンドマネジメント/マン・グループ/マーティン・カリー/
スコテッシュ・ウィドウズ/ベイリー・ギフォード/バークレーズ・グローバ
ル・インベスターズ/ハーミーズ/ソシエテ・ジェネラル/BNPパリバ/ロベ
コ/ING/フォルティス/ピクテ/TTインターナショナル/パイオニア・イ
ンベストメンツ
[アジア・中東の投資家]GIC/テマセク/ADIA/KIA

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