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December 15, 2006

『アメリカの終わり』

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『アメリカの終わり』フランシス・フクヤマ、講談社

 "America at the Crossroads: Democracy, Power, And the Neoconservative Legacy"の全訳。原著の感想にも書きましたが、「現実的なウィルソン主義」こそがよりよい選択ではないかと提言して、アメリカの価値観を積極的に世界中に広めようとするbenevolent hegemony(善意による覇権)が必要だという、なんとも曖昧模糊した結論しか出していない本なのですが、日本版には終章が付け加えられていて、ブッシュ政権が中間選挙で敗れ、ラムズフェルド国防長官が更迭されたという事態を受けて、「そらみたことか」と書いている部分は面白かったですね。

ピンポイント爆撃など軍事技術の進展と実際にそれを使って成功した湾岸戦争やコソボでの経験もあってか、《「9.11」後、ブッシュ政権当局者の多くは、このテロが非国家的主体によって準備されたということを信じることができず、背後で支援した国家を追い求めてバクダッドへとたどり着き、破滅的な事態を招いてしまった》(p.227)。その結果《核兵器開発国をこれ以上増やさないよう、核拡散抑止を狙ったイラクへの攻撃は、意に反して北朝鮮とイランの核開発のペースを速めるように促してしまったように思える》(p.233)。

 81年のイスラエルによるイラク・オシラク原発への爆撃成功は、単独作戦としてはこれ以上、成功を望めない結果をもたらしましたが、イランと北朝鮮は開発施設を地下深く設置することで、脅威を取り除くことは難しくなってしまいました(北朝鮮は朝鮮戦争での米軍爆撃にこりて、その前から軍事施設は地下に置いていたのですが)。

 結局、アフガニスタンへの侵攻は成功しましたが、イラク戦争は失敗したことによって、アメリカは今後、長期間にわたって体制変更(レジーム・チェンジ)を目指す"予防戦争"が行えないようになったのではないかということは、唯一、良い結果なのかもしれません。

 予防戦争という考え方はビスマルクが看破したように「死ぬのが怖くて自殺するようなもの」(p.105)であり、フランスとオーストリアを相手に勝った後「ドイツの次の重要課題が、萎縮して恨みをいだいている周囲の国々をなだめ、ドイツがこれ以上世界を攪乱しない大国なのだと安心させることであると気付いた」ビスマルクのような叡智がブッシュ政権には必要だったのかもしれません(p.216)。

 ビスマルクに関しては、ほとんど専門的な知識を持っていないのですが、中井久夫さんも『樹をみつめて』で《1)中クラスの国家にとどまるべきこと2)アングロサクソンを挑発しないこと3)近隣の恨みを買わないこと》を基本としたビスマルクを絶賛していたのですが、改めて何か読んでみようかな、と思いましたね。

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