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November 04, 2006

『中世の街角で』

Kimura_shouzaburo

『中世の街角で』木村庄三郎、グラフィック社

 バブルのまっただ中、1989年に出版されたこの本は、歴史学者といいますかエッセイストでもあり、最後は愛知万博の総合プロデューサーもつとめた、なんといいましょうか「文化人」木村庄三郎先生の写真集です。

 ちょうど、出張中にお亡くなりになったことを知ったのですが、帰って、この写真集を読むと、改めてフランスの街角の風景が記憶の中から立ち上がってくる感じがします。

 エッセイストとしての面目躍如なのが、はじめのパリ歴史散歩。《パリには、三つの顔がある、中世のパリの顔、近代パリの顔、そして二十一世紀に向かうパリの顔である》という書き出しから、冗長にならず、かといって単なる観光案内に終わらず、中世からの歴史の重みを感じさせながら、現代と未来までみつめてしまう文章が名調子。よく存じ上げている方が、社業が運輸業ということもあり"Fluctuat nec mergitur"「たゆたえども沈まず」を好きな言葉としてあげていたのですが、実は木村先生との同級生ということだったというのも、お亡くなりになって知ったことでした(その言葉も「パリ歴史散歩」に出てきます)。

 後書きで書いているのですが、木村先生はカメラが趣味で、80-200mmの望遠ズームか28mm広角レンズを装着したニコンF2を重い三脚につけ、それを十字架のようにかついでフランスの街並み、カテドラルの中を歩くというのが唯一の趣味、ぜいたくだったそうです。

 カテドラル奥の内陣は「神は光なり」という中世の教えに従い常に東向き(est)につくられているので、西(ovest)に向いているファサード(正面の飾り)は午後にならないと日にあたらない、と書いているのは、いかにも写真を撮ってきた人の言葉。午後には観光客で教会の正面は一杯になり、その合間を縫って、目的の一枚を撮らなければならないから。

 もう絶版ですが、ユーズドはアマゾンで買えます。それにしても、歴史学の先生がこんな立派な写真集を出してもらえるなんて、バブルというのはいい時代でしたねぇ…。

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