« 中本・新宿店のこと | Main | セリエBの試合を観にいく#2 »

November 03, 2006

セリエBの試合を観にいく#1

Piacenza1

 今回の出張では、中日となった土曜日にミラノにいましたので、サッカーの試合を観に行きました。この日は出張旅行での初めてのまとまった休みで、サッカー観戦は当初から漠然とプランには入っていました。でも、インテルのホームの試合は移動日に当てた日曜日にあるのために無理で、A.C.ミランはアウェイ。いろいろグズグズしているうちに出発日となり、結局、現地のホテルにあったガゼッタ・デ・スポルトをいろいろ検討した結果、セリエBのピアチェンツァvsベローナの試合を見に行くことに決めました。なぜ、そうした結論になったか、改めて思考の軌跡を辿りますと…。

1)日曜日はTGVでパリに行くことにしたので、そもそも試合を観にいけない(ユーベのアウェイ、インテルのホームなど)。

2)土曜日の試合でも、午後6時から始まるとか、ちょっと遠くだとホテルに帰って来られないのでいけない(A.C.ミランのアウェイ)。

3)近場で午後の比較的早い時間にやる試合で、思い入れのあるチームをガゼッタ・デ・スポルトで調べたら『狂熱のシーズン』のペローナが立ち上がってきた。しかも、相手はセリエAとのエレベーターチームで、なんとなく知っているピアチェンツァだし。

 ということでチェントロ(ミラノ中央駅)まで朝の散歩がてらに歩き、往復の切符を購入。行きはインターシティ、ミラノ発14:05。帰りはどうなるかわからなかったので、とりあえず、普通の切符にしました。

Verona_1

 ということで、ここらへんの事情をもっとわかっていただくために、突然ですが『狂熱のシーズン ヴェローナFCを追いかけて』ティム・パークス、北代美和子訳、白水社のブックガイド。ヴェローナFCを英国人作家がティフォジとなって追い掛け回した記録がこの本(ティフォジの語源がチフス患者だというのもこの本で知りました)。

 まず場面はいきなり南部の町バーリへのアウェイ・バスツアーから始まります(この時のバーリは10代のカッサーノが引っ張ってセリエAで頑張っていました。その後、陥落してカッサーノはローマに。居所のなくなったナカータはパルマにという展開が待っています)。主人公といいますか筆者のティム・パークスはイタリアの大学で教えているイングランド人。コカインで酔ってるおバカな少年もいるクスリ天国イタリアの現状をサラリと書いた後、外国人ということでなかなか受けいれられてもらえなかったパークスが、警官隊とサポたちの小競り合いのなかで機転を利かせて「試合を観たいんだ!」と警官たちを説得して全員を無事スタジアムに入れるという活躍をみせた後、サポたちに仲間としてのあだ名をもらうシーンなんか、今でも想い出します。そのあだ名は「パロッコ」(教区司祭)。「奇跡を祈ったかい、パロッコ」みたいな感じで、彼はこの後もサポ軍団「ブリガーデ」とともに行動をともにします。

 00/01シーズンは中田英寿がいたASローマが優勝した年。また、同じ町に本拠地を持つキエーボがセリエBからAへの昇格を決める一方、ヴェローナにとってはレッジーナとの降格を争うプレーオフにまで持ち込まれた厳しいシーズンでした。当然、キエーボとヴェローナはライバル関係。試合はデルビーになりますし、書いているのはヴェローナF.C.のサポなので、キエーボについてはメチャクチャ。パークスいわく、キエーボは2300人ぐらいの人口しか基盤にしておらず、TVサッカーの申し子でグローバリズムの権化だ、と。そうなのか…とやや悲しくなるとともに、ウルトラ地域主義と人種差別の代表選手的な「エラス(祖国)ヴェローナ」のサポとしてみれば、キエーボはいまいましい存在なのかもしれないな、と思って読んでました。スカパーでサッカーを観てるしかない身にとって、キエーボというのは、一種の奇跡のようなチームに思えたこともあったので、地元の見方はこんなにも違うのか、と。

 あと、南北問題。北に位置するヴエローナ人からすれば、南は「テッローニ」(地の底の人間)。南をバカにするその罵倒の豊富さ(pp.49-50)には圧倒されます。サッカー協会からホームの試合開催権を没収されそうになった「ウォッホ!ウォッホ!」と叫ぶ猿鳴きの声はあまりにも有名というかヒドイもんだったそうです。黒人選手あるいは東欧のジプシー系の選手がボールを持つとゴール裏からはこの声が渦巻いていたそうですから。特にひどかったのが、当時はパルマに所属していた「壮麗なまでに肌の黒い」テュラムに対するもの。テレビなどでも猿鳴きに包まれるスタジアム様子が繰り返し映され、ホームで試合できなくなる寸前までいきます。結局、この問題は「公平さを追求するあまりにっちもさっちもいかなくなる」イタリア式問題解決方法によって先送りにされるわけですが…。

 パルマといえば、「タンツィの金だけを元に作られたチームで、サッカーの伝統もなく、本当の観客もいない。スタジアムの収容人員はわずか2万2千」(p.399)という評価は、ナカータが移籍したということだけで知ってる気になっていたパルマというチームについて、理解できなかった何事かを了解させてくれるに十分な箴言でした。結局「プロヴィンチャにスクデットを」とブッフォン、クレスポ、テュラム、カンナバーロを擁したチームはタンツィ一族の破綻とともに解体されますが、今、改めて読むと、納得的です。

 そしてクライマックス。忘れもしないレッジーナが降格したプレーオフに勝った後のあっけないラスト。しかし、そのあっけなさが、フットボールは続いていくんだという現実の重さなのかもしれないと思いました。

 しかし、翌シーズン、黒人選手をひとりも抱えなかったヴェローナはあっという間にセリエBに沈みました。ともかく、こうした言葉とともに、この本は(原著と比較するとあまりにも抄訳でアタマくるところはあるのですが)ずっと残る本だと思います。原文とともに、チラッとご紹介。

「夢をみさせてくれ」(p.11)
"FACCI SOGNARE, says the banner. Make us dream! Please!"

「ブリガーデは讃える、選手でなく、監督でなく、オーナーでなく、ただカラーだけを」(p.55)
"The BRIGADE honour the colours GIALLOBLU, not the players, not the trainer, not the owner, only the colours."

「選手と監督は来ては去る。だけど、俺たちは永遠、永遠だ!」(p.55)
"Players and trainers come and go, but we are forever, BRIGADE, BRIGADE GIALLOBLU."

「夢を見続けろ」(p.73)
"Dream on."

「決して一歩を誤らず、決して後退せず、いいときも悪いときも微動だにしない人々と黄青旅団に栄光を」(p.92)
"Never a false step, never a retreat, for better or worse (but the literal translation would be: "in good and in evil") honour to the unmovable ones and the BRIGADE GIALLOBLU."

「エラスはひとつの信仰だ。決して、何故と問いかけてはならない」(p.123)
""HELLAS is a faith," ANDREA wrote back at once. "You must never ask why""

「エラス、ラ・ノストラ・ウーニカ・フェーデ 俺たちのただひとつの信仰。」(p.123)
""HELLAS, LA NOSTRA UNICA FEDE" Our only faith."

「永遠に、そしてエラス・ヴェローナただひとつ!」(p.172)
"Ever and only HELLAS VERONA! "

|

« 中本・新宿店のこと | Main | セリエBの試合を観にいく#2 »

W杯」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 中本・新宿店のこと | Main | セリエBの試合を観にいく#2 »