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October 01, 2006

『オーケストラは素敵だ―オーボエ吹きの修行帖』

Migi_ohckestra

『オーケストラは素敵だ―オーボエ吹きの修行帖』茂木大輔、中公文庫

 名著『オーケストラ楽器別人間学』の著者であり、N響の主席オーボエ奏者であり、最近では指揮などもこなし、テレビのクラシック番組でも燕尾服に有名なチョビ髭の似合う姿でちょくちょく登場し、さらには『のだめカンタービレ』のアドバイザーでもあるのが、茂木大輔さん。最近ではブログも開設、頑張っておられますが、旧著が文庫化されました。

 いやー、この本は初めて読んだのですが、楽しいですね。ドイツ留学の影響なのでしょうか、教養小説(ビルドゥングスロマーン、Bildungsroman)の主人公たちのように修行しながら自己形成する過程を活き活きと書いています。

 どうやってオーケストラの入団したらいいのかあたりが素晴らしい。リハーサルにもくり込むまでが大変で、道場破りのような飛び込みなども行われる現場の様子や、最後に二人となって、延々とカーテンで覆われた舞台で、審査員であるオーケストラの団員たちを前に演奏することなんか知りませんでした。

 茂木さんはシュトッツガルト・フィルに入ることはできたのですが、実は、その前にバイエルン放送交響楽団というメジャーなオーケストラで24歳という若さながら実際の現場で審査されるという幸運に浴していたんです。でも、ちょっと有頂天になってしまったばかりに、最後に候補からハズされたという経験も語られます。《このクラスのオケに入るチャンスは、おれにはもう二度と訪れないことが、おれにはよく理解できた》(pp.73-74)というあたりはほろ苦いけど、いい味出ています。

 それにしても、よく分かったのが、オーケストラでは失敗は許されず、一発で決めなければならないというプレッシャーが個々の団員に重くのしかかっていること。だから、一度でいいから、副音声で実況中継をやらせて解説させてほしいというあたりは、本当に笑えたし、そういう番組があれば観てみたいですね。

 《「さあまもなくホルンソロ。松崎緊張した面持ち微動もせず指揮者を見た。吹いた。ストライク!
 決まった、決まりました。見事に決まっています。
 次はオーボエ。指揮の合図を見て、ふりかぶって第一小節を、吹いた。低い!
 茂木表情に焦り。リードが悪いのか。
 低い!これまた低い。ワンバウンドの音。カウントが一杯になりました。
 N響ピンチ!
 おっと、指揮の外山、タイム、タイムを要求しました」
 「ここは茂木を変えますね」
 「オーボエ北島!」(指揮者の声)
 「ああ、交代です。オーボエは北島に交代!」
 「N響の、選手交代をお知らせいたします。オーボエ一番、茂木に代わりまして、北島。北島、背番号十六」(場内アナウンス)》(p.148)

 いや、面白い!

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Comments

いま故矢代秋雄『オルフェオの死』の毒舌に嵌ってます。作曲課程ですがのだめがいるコンセルヴァトワールの教育理念についても一家言持っておられる。
故岩城宏之も古書店で漁りがいのある膨大なコラムを残していますが、本当に申し訳なく思うのは、読んだものに比べて、岩城さんの演奏で聴いたものの方が本当に少ないのです。

Posted by: hisa | October 01, 2006 at 11:43 PM

hisaさん、どーも
そういえば、ぼくも岩城さんの指揮って、ほとんど聴いたことないですねぇ。確かに申し訳ないww

Posted by: pata | October 02, 2006 at 08:08 AM

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茂木 大輔 オーケストラは素敵だ―オーボエ吹きの修行帖 もともと,音楽の友社から出版されていた本を, 続編ともども再編集し,中央公論社から再販. 1993年です.前の出版年. 1993年といえば,まだ,私は21歳. 大学に在学中で,仕事をするということにつ... [Read More]

Tracked on October 21, 2006 at 09:50 PM

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