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September 03, 2006

『バイオポリティクス』

Biopolitics

『バイオポリティクス―人体を管理するとはどういうことか』米本昌平、中公新書

 題名にひかれて読んではみたけど、目的は違っていました。でも、ジャーナリスティックな視点で読みやすかったので、最後まで読めた本。

 ES細胞に関して、なんで、日米欧という著者の云う"先進三極"からではなく、捏造とはいえ韓国から一時、作成されたという論文が出たのか、という背景がよくわかる本ともいえます。

 どういうことかというと、主要な臓器に関しては、民間市場での売買は禁止されています。しかし、先進三極でも角膜、皮膚などは、いったんはNPOに流れるとはいえ、そこから先は、事実上、民間ルートに流れ、巨大な市場を形成しており、それ以外の中国、インド、東欧諸国などでは腎臓バザールが事実上存在し、韓国などでも、論文を捏造した教授の元には2000個の卵子が集められたというんです。そして、先進三極でも不妊治療で使われた"あまった卵子"をどうするかは大きな問題となっているというんですから、話半分に聞いても大変ですよね。

 時間がない方はオリフォルニアで報道された"人体仲買人"(The Body Brokers)という報道のサマライズだけを読んでもいいと思います(p.184-)。なにせ、まずNPOが遺族の前にあらわれて「火傷や怪我で苦しんでいるヒトを助けるために、皮膚や骨の一部をいただけないでしょうか」とすりよってきて、それが、上場もしているヒト組織加工会社に売られ、美容整形手術や、差し歯用のインプラントなどに使われるというですから。人体の"市場価格"は皮膚、アキレス腱、心臓弁、血管、角膜などを合わせて、最上のものでは22万ドル、通常価格では3~5万ドルに達するというですから驚きです。

 さらには、インド、中国、東欧などでは、金持ちを対象とした医療目的の移植ツアーが大人気で、いまや観光も組みこまれたものになっているというですな。

 1980年代初めにシンクロポリスAという免疫抑制剤が実用化されて以来、やたら政府公報では、臓器の提供が呼びかけられるようになりましたが、脳死でもないのに臓器を取り出される可能性もあるという提供する側の危険というのは、かなりあるんじゃないかと思うのに加えて、移植手術を受けた側も一生、免疫抑制剤なしではすごせなくなるわけで、そうしたことも含めて、一大市場なんだな、と改めて思います。

おりしも「政府は臓器を求めてる」みたいな動きもあって、不気味です。

臓器提供:保険証に意思表示欄 来年1月から政管健保
 社会保険庁は中小企業のサラリーマンや家族が加入する政府管掌健康保険(3562万人)の保険証について、来年1月から裏面に臓器提供の意思表示欄を設けたものに切り替える。脳死、心停止した際の臓器提供普及が目的で、プライバシーに配慮し、希望者には意思表示欄を隠すためのシールも配布する。

 臓器提供の意思表示カードは、日本臓器移植ネットワークが行政機関の窓口などで配っているが、普及していないのが現状。そこで政府が運営し、市町村の国民健康保険(4761万人)に次ぎ規模が大きい政管健保がリードすることで、普及を図ることにした。

 保険証の裏面には、脳死判定後または心停止後の臓器提供意思の有無、提供しても構わない臓器の種類などにチェックをつける方式の意思表示欄を設ける。記入するかはあくまで本人の任意で、途中で意思が変わった場合は、社保庁に申請し保険証の再交付を受ければよい。

 政管健保の保険証は03年度以降「家族に1枚ずつ」から、クレジットカードサイズの「加入者1人に1枚ずつ」へ順次切り替えられている。保険証に意思表示欄を設ける取り組みは、滋賀県内の国民健康保険などが先行している。【吉田啓志】

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Tracked on September 03, 2006 at 07:32 PM

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