« 光の教会と中田英寿 | Main | 『ひまのつぶしかた』たま »

September 24, 2006

『生命 最初の30億年』

Life_on_a_young_planet

『生命 最初の30億年』アンドルー・H・ノール (著)、 斉藤隆央(訳)、紀伊國屋書店

 DNA関係には政府系のカネがどんどん入っていくためなのか、地質学者と古生物学と惑星学の知見がそれぞれの分野で拡大し、融合しあっているのか、とにかく生命に関するセンス・オブ・ワンダーあふれる、しかも上質な読み物が出てきて、それをぼくみたいな素人が読めるようになってきていることが嬉しいです。

 この本の中で、素人のぼくが一番、驚いたというか、得ることのできた新しい知見は、なんといっても8章「真核細胞の起源」。細菌の次の段階へのステップは、細胞内共生にあったというんです。葉緑体の起源が内部共生するシアノバクテリアであり、ミトコンドリアも別個に仕切られた部分にいて、真核細胞の一部になっている、というんです。

 このシアノバクテリアは『生命40億年全史』のリチャード・フォーティでも多くのページをさかれていましたが、二酸化炭素を取込み酸素を出すバクテリアで、20数億年前から10億年以上かけて酸素を大量に生産して、それまで生きていた大部分の嫌気性バクテリアを地球の一部においやり、酸素によって生きる大型生物の発生を加速させたという、進化の主役のようなバクテリアだというんですわ。

 p.184のシアノバクテリアとミトコンドリア、ヌクレオルモフなどの共生による"進化"の図は《自然の姿が「弱肉強食」というより「合併吸収」に思えるような初期の生命進化に対する見方》というか優れた仮説のワクワク感を感じました。生命の世界というのは、絶対君主が支配するというようなものではなく、委員会のようなものだ、みたいなこともノールは書いているんですが、この本を読む限りは、深い説得力を感じます。

 しかし、同時にカンブリア期の進化の大爆発以降は、《微生物だけでなく動物も、捕食者を避けなければならず、海藻も、食べられないように対処する必要に迫られた。要するに、捕食者の動物が、途方もなく重要な役割を及ぼす環境因子となった》(p.260)というのですから、もちろん、一筋縄ではいかないんですが。

 地球が小さいものまでも含めると4回ほど完璧に凍ったことがあるというスノーボール・アース仮説に関する中立的な見方も教えられました。

 『生命40億年全史』のリチャード・フォーティもそうですが、ノールも古典的な文学作品に関して、深い造詣をみせてくれます。これは、長い発掘作業と、その現場まで行き帰りの時間を、専門書や雑誌論文だけではなく、シェークスピアやヘッセなどと過ごしたからなのかもしれません。

翻訳の斉藤隆央さんは『タングステンおじさん』も含めて、良質な科学本を読ませてくれて、ありがたいです。

|

« 光の教会と中田英寿 | Main | 『ひまのつぶしかた』たま »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/12020968

Listed below are links to weblogs that reference 『生命 最初の30億年』:

« 光の教会と中田英寿 | Main | 『ひまのつぶしかた』たま »