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August 04, 2006

『西洋哲学史 古代から中世へ』

Kumazawa_history_of_philosophy

『西洋哲学史 古代から中世へ』熊野純彦、岩波書店

 評判の高い本書に、ぼくなんかが付け加えることはあまりないのですが、もし高校生の夏休みの課題図書に今年の新刊書から何か選べと云われたら、これを選ぶと思います。哲学の本というのは、従来は大半を占めていた哲学研究者の分析みたいなものから、みずから考える楽しみや喜びを重視する、というものが主流になってきているように感じます。しかし、その内容はといえば、通俗的に流れすぎたり、単なるおちゃらけであったり、あまりにも唐突な展開をみせるものがあったりで、なんていいましょうか、やっぱり眼高手低であること感じさせるような本が多かったと思います。

 ところが、この本は、なかなかやってくれます。

 《ソクラテスは知者ではない。あくまで「知を愛し、もとめる者」(フィロ・ソフォス)である。この一点で、同時代人の目にはソフィストそのものと映っていたであろうソクラテスが、ソフィストから区別される。だから、ソフォス(知者)でもない。フィロソフォス(哲学者)なのである》(p.70)

という云い方も、やや聴き慣れた感じはあるのですが、著者の文章も、類書と比べものにならないぐらい、読みやすいというか、心を砕いている感じがして、そのリズムの中で読むと、改めて「なるほどなぁ」と思わせます。

 タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネスという哲学の始原(アルケー)から始まって、ディールス/クランツの『ソクラテス以前哲学者断片集』を中心にギリシア人の哲学者を追っていき、ストア派を経てアウクズティヌスやアンセルムス、オッカムそしてデカルトと哲学者たちの考えを縦断する旅は、十分、本格的でもあります。特にピタゴラス、ヘラクレイトス、クセノファネスを扱う2章「ハルモニアへ」は傑作だと思います。つまらない話だけど、来年の大学入試にはけっこう使われるんじゃないでしょうか。

 版元によると「近・現代を扱う続篇も近刊予定」というので、楽しみに待とうと思います。

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Tracked on August 04, 2006 at 04:42 PM

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