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June 03, 2006

『精神現象学』読書日記#1

Hegel2

 いつまでも躊躇していてもしょうがないので、いきます。長谷川宏訳のヘーゲル読書日記の第二弾『精神現象学』。

 『精神現象学』を読み通したことがなくても、主人と奴隷の話は有名だと思います。人間は自由で自律的な存在であろうとするが、そのためには他者からの承認が必要で…みたいな話が展開していくところですね。哲学に関する小話ではプラトン『国家』第七巻の冒頭に出てくる洞窟の喩えぐらい有名なところではないでしょうか。ところが、実際に全部を読もうとなると、金子武蔵訳の全集版などは上巻だけで730頁、さらに厚い下巻をあわせると1837頁です。なかなか読めるものではありせん。しかも、日本語としてもスゴイものがある。何回も紹介しますが、廣松渉さんでも「要するに、何も分からないけれども、ただ一生懸命読んだ(笑)」と語っているほどです(『哲学者廣松渉の告白的回想録』)。

 ぼくも全集は妙な責任感にかられて買いましたが、もちろん挫折しました。

 そういう中で、現れたのが長谷川宏さんであり、待望の『精神現象学』が上梓されたのは1998年でした。

 これ画期的でしたね。まず薄さ。なにせ、訳者あとがきを入れても560頁。いや、確かにそれでも厚いですが、註などを本文に入れ込み、長谷川さんが編集者のような立場で本文を再構成し、興味がある人間なら、なんとか読み通せるものに仕上げてくれたのです。木田元先生も「目からうろこの落ちる思い。うわさばかり高かったこの本が、やっと日本語で読めるようになった」と書いておられるほどです(『法哲学講義』の時にも紹介した日経の記事の中)。

 そう、長谷川さんの、この訳が出る前は『精神現象学』はうわさばかりが高く、実際には日本の中でほとんど消化されていなかった本なのだと思います。

 『精神現象学』は二万部を売ったといいます。すごいことですが、残念なことに、インターネットにあがってくるような書評でまともなものはお目にかかったことがありません。でも、それはそうなんですよ。ぼくも読み通したことは読み通したけど、それは半分「活字だけを最後まで追った」ようなものでした。しかも、短くまとめるなんてことはとてもできない。

 ということで、ある程度、内容をかみ砕きながら読んでいくには、この読書日記みたいなスタイルなのかな、ということで、また始めます。

 そして、なんと、ありがたいことにアンチョコがあるんですよ。

 そう、長谷川宏さん自らが書いた『ヘーゲル『精神現象学』入門』。98年に訳出した後、講談社メチエから99年に出ています。

 トリビアリズムで長谷川宏さんの訳を批判する人は多いけど、こんな入門書まで用意してくれた哲学の先生はいません。ヘーゲル先生は時に実に優しいというか、大哲学者としての公平な心構えを持っているのですが、なんと少しでも哲学を学びたいということを考えたなら《個人は、学問がその立場へと昇っていく梯子くらいは提供してくれることを、しかも、その立場が個人の内部にあるのを示してくれることを、要求する権利をもっている》とまで書いてくれています(p.16)。そう、長谷川さんは、日本語訳を出すだけでなく、梯子も用意してくれたわけです。

 とにかく、このアンチョコを読むとヘーゲルがさかんに強調する「主体」がスピノザの「実体」を乗りこえようとするものである、みたいなことがスッと入るといいますか、どこが出口かわからないような鬱蒼とした森を彷徨っているような読書の中での羅針盤となってくれます。

 そういうことで、今回はガイダンスみたいになりましたが、次から本格的に読んでいきます。

A 意識
  Ⅰ 感覚的確信
  Ⅱ 知覚
  Ⅲ 力と科学的思考
B 自己意識
  Ⅳ 自己確信の真理
C (AA) 理性
  Ⅴ 理性の確信と真理
  (BB) 精神     
  Ⅵ 精神
  (CC) 宗教
  Ⅶ 宗教
  (DD) 絶対知
  Ⅷ 絶対知

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