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May 15, 2006

ジーコの会見

 まだ、ひとつのメディアでしか確認していないのだが、ジーコ監督が会見を締めくくった最後の言葉にはジーンとしたので、残しておきたい。

 「多くの方に生中継でこの発表会見を見てもらえるほどの関心事にまでなった日本サッカーの発展がうれしい 」

 シンプルだが、深いメッセージだ。

 ワールドカップに出場することなど夢のまた夢の状態だった日本の、しかも2部リーグの住友金属で現役復帰し、ほとんど観客のいない土のグラウンドで試合していたジーコは、まさに日本の代表監督にふさわしいと思う。選ばれた23人には、それ以前からサッカーがここまでになるまで下支えした人たちの分も頑張ってほしい。

W杯登録メンバー発表  ジーコ監督会見(1/2)
2006FIFAワールドカップ・ドイツ大会
2006年05月15日


■すべての責任は私、ジーコにある

15日、日本代表のワールドカップ登録メンバー23名が発表された【 スポーツナビ 】
登壇者
川淵三郎(財団法人日本サッカー協会 会長)
ジーコ(日本代表チーム 監督)

川淵 今日はお忙しいところをお集まりいただき、誠にありがとうございます。実はジーコと2人きりで――向こうに通訳の鈴木さんがいますけれどジーコと一心同体ということで、2人きりで記者会見をするのは、これが2回目です。1回目は4年前に、4年間のチーム作りをジーコ監督にお願いする調印式を、このホテルで行いました。そして4年後にまたワールドカップ(W杯)の23人の選手を発表する会見を行うということで、私としても非常に感慨もひとしおであります。
 その意味でジーコ監督は4年をかけて、W杯ドイツ大会で活躍するであろう選手を選んできたと言えると思いますが、この4年間で66人の選手たちが日本代表に呼ばれ、そのうち56人がピッチで活動してくれています。この機会に、これまでの道を切り開いてくれた66人の選手に対して、そしてまた全面的な協力をしていただいたJリーグ、Jリーグの各クラブ、ファンやサポーターの皆さま、そしてメディアの皆さまに心から御礼を申し上げたいと思います。

 今日、メンバーが発表されると同時に、最後の本格的なチームのまとめが始まると思います。ぜひ皆さまも、W杯ドイツ大会での日本の活躍を期待していただければと思います。
 実は30分ほど前にジーコ監督と別室でお会いしたのですが、「メンバーは?」と聞くとジーコ監督は白紙を掲げて「まだ書いていない。奥さんにも言っていない。もし事前に知りたいのなら、ここで書き始める」と言われたのですが、私自身は「いや、それは一切、教えてほしくない」と。ファンの皆さま、メディアの皆さま、日本中の皆さまと同じような緊張感をもって、その発表を見守りたいと思います。
 それではジーコ監督、ごあいさつと選手の発表をお願いします。

ジーコ この4年間、私は日本のためにすべてを出し尽くしてやってきた。自分がサッカーにかかわってきて得た経験すべてを出し尽くしたと確信している。これ以上のものを望まれるならば、自分はこれ以上のものを知らない。ひとつの隠し事もないし、自分の持っているものすべて、出し尽くしたと言えると思う。
 今日この場にはたくさんの方々がおられるが、日本中の方々が今日という日を待っていたということで、日本においてここまでサッカーの社会的地位が上がったのかと、自分はとてもうれしく思う。

 4年の仕事の間、練習も含めて皆さんの前でお話させていただいたことで、隠し事はひとつもしなかった。チーム、スタッフ含めて、それぞれの分野に対して土足で立ち入るようなことなく、分野分野でそれぞれ得意とするところを発揮するという考えをモットーとして、これまで貫いてきた。監督としての責任を逃れるつもりもないし、この場においてもそういうつもりはない。これから本大会に向けて、すべての責任は私にあると思っている。それぞれのセクションで、それぞれの方々が責任をもって仕事をやり抜くという難しさ――口で言ってしまうのは簡単だが、実際には難しい。これを4年間続けてこられたのは、川淵キャプテンの寛大なる支持があったからだと思っている。

 それから人のつながりというものも、つくづく感じざるを得ない。今日、この中にも浅野(哲也)さん、北澤(豪)さん、相馬(直樹)さんといった、自分が来日してから15年の間に、敵として味方としてやってきた選手たちが、今では違う分野でそれぞれ活躍されていることを考えると、自分が長きにわたってこの国とかかわってきたんだという思いでいっぱいだ。それぞれの皆さんに関しては――すみません、すべての名前を挙げられないのは残念だが、それぞれの分野でのご活躍を心より期待したいと思う。

 それでは、リストを発表したいと思う。
 川口、土肥、楢崎、加地、駒野、中澤、宮本、坪井、田中、アレックス(三都主)、中田浩、福西、稲本、中田英、小野、小笠原、遠藤、中村、高原、大黒、柳沢、玉田、巻(会場がどよめく)。

■すべてのポジションについて選考を悩んだ

――巻を選出した理由は?

 去年あたりから所属クラブで顕著な活躍を見せていて、代表では出る試合、出る試合で、いいものを出していた。特にフィジカル的な強さ、それからコンディションの良さ。レギュラーとして仕事ができるし、FWとしての資質は高いものを持っている。今の調子を維持していけば、代表のためにも働いてくれると思う。

――23人を選ぶにあたって、一番悩んだ部分は?

 すべてのポジションを選出する上で悩んだ。4年前から自分にとって難しい問題だった、欧州でやっている人間と国内でやっている人間の融合。それがなかなか、かなわなかった。全体での練習量も、非常に限られていた。それを繰り返してきて一番の収穫は、国内の選手を主体に試合に臨むことが多かったために、精神的にも技術的にも、サッカー選手としての資質を高めてくれたということ。選手たちにも伝えたことだが、本当に著しい進歩、進化を遂げてくれたと思う。
 最終的に同じポジションの選手を2人にしようと決め、3人、4人、5人が同じくらいのレベルだったが、どの選手を選んでも(遜色がない)という状況で、選手たちはこのように伝えた。「自分は監督として、プロとして、23人を選ばなければならないけれど、たとえ漏れたとしてもここまでやってきて、まだまだ伸びしろもあるのだから、次のチャンス、また次のチャンスということで、それがサッカーを職業として選んだ者の責任ではないか」と。このことを選手たちには確認した。そうした気持ちを持ってやってくれれば、また次々とたくさん出てくる。その中で今回選ばれたのが、この23人。確信を持って選んだ選手なので、できるだけのことを日本への貢献のためにやっていきたいと思う。

――FWを5人選んだ理由は?

 後ろ(DF)にするか、前(FW)にするかということで悩んだ。大きなポイントとしては、玉田が本来の良さを出してきたということで、3トップで戦うことを考えると、彼の動き方、本来の良さを考えると、前で相手を背負ってというよりも、左右に流れたり縦への速さであったり、2列目からの飛び出しというところで彼の良さが出る。そういったことを考えると、彼を据えておくのは日本にとってもいいのではないかと考えた。それぞれのタイプ、巻もどちらかというとペナルティーエリアでの(仕事ができる)タイプ、大黒もそうだし、柳沢は左右に流れる動きはするが、そういったところで玉田を選んだ。
 茂庭についても、後ろのメンバーで考えたのだが、最終的には前の方を優先した。

 松井については、中盤の前の方では優秀で能力を持った人間がいる。あと後ろの部分で、周りをカバーするということ。自分はあまり好きなやり方ではなく、従来の慣れたポジションでやれれば一番いいのだが、福西であるとか、中田浩二であるとか、中盤の人間がそれぞれ最終ラインに、万が一の時に入れることもできる。彼らはそこのポジションをやった経験があるので、そういう部分で決定した。

■久保のプレーは大好きだった

有力と見られていた久保が落選。ジーコ監督は「今の状態では彼の良さを生かし切れない」とその理由を語った【 スポーツナビ 】
――これまで出場機会を与えてきた久保を外したのは?

 本当に久保は素晴らしい選手。数年間ずっと興味を持って見てきたが、彼のプレーは大好きだった。ただ今のサッカーにおいて、彼の良さを生かすためには非常にコンディションが良くない。現時点までずっと見てきたが、これは彼のせいではないと思うが腰、ひざ、さらに足首といろいろな場所に問題を抱えていた。どうしても完ぺきなコンディションではないということで、最後まで考え抜いた結果、こういうこと(落選)になった。

 では、(骨折でリハビリ中の)柳沢はどうなんだ? と聞かれるかもしれない。自分は多くの選手を見ているが、骨折から復帰してきた選手は、リハビリの経過が良く、肉体的なものが整えば、ほとんど何の支障もなく動ける。これは自分の経験から考えても思う。柳沢は現在、普通にボールを使って何でもできる状態にある。玉田もそうだが、骨折から良い形でリハビリを繰り返していれば、あとは肉体的な問題に尽きる。彼らは本大会でプレーできるという確信を持った。

 自分自身の経験を踏まえても思うことだが、中途半端な形で(大会に)臨んでしまうことが、どれほどチームにとって影響を及ぼすか。気持ちの面は、どの選手も強い意志をもって臨んでくる。だがコンディション、肉体的なものはだましきれない部分がある。自分が指揮をしているこのチームで、そういうことが起こってほしくないと考え、今、最も戦えるメンバーということで今回の選出となった。

――予備のメンバーは考えていないということだが、その気持ちは変わらないか

 この選手、この選手と名前を挙げてスタンバイをかけることはしない。ただしルール上、グループリーグ第1戦の前まで、事前にけがなどのアクシデントが起こった場合は、選手を替えることができる。起こってほしくないことだが、仮に(アクシデントが)起こった場合には、今まで自分の下でプレーした代表のメンバーすべてにチャンスがある。

「可能性は薄いじゃないか」と皆さんは考えるだろう。だが前回のW杯では、ブラジルのエメルソンが開幕前のレクリエーションで骨折してしまい、リカルジーニョという選手が抜てきされたケースがある。最後まで気を抜かずに自分を高めてほしい。あえてこの時点で「スタンバイはこの選手」という言い方はしない。

――川淵キャプテンは、これまでの名前を聞いてどんな印象を持ったか

川淵 正直言って、驚いた。先ほど皆さんから「オッ」という歓声が起こったが、僕があの時どういう表情をしていたか、あとでビデオで確かめたい。僕も多分驚いていたのではないかな。

(巻選手の選出について)やはりチームの中で(選ばれる)可能性が仮にないとしても一生懸命やる、という姿勢が高く評価されたということで、私自身非常にうれしく思っている。

(落選した)久保選手については、本来的なコンディションならば日本一のストライカー。だが、この長い間ジーコ監督がチームの中で使った後、残り4週間では彼の体調が十分に戻らないと判断をしたのだろうと、今日の発表を聞いて思う。最後まであきらめずに頑張ることがいかに尊いことか、今日の選手発表にはそれが表れたと思う。

■この場にいることができて、感激している

――監督として初めて臨むW杯は、どういう気持ちか
 
ジーコ 選手時代は3回出場したが、その時は自分のコンディションを中心に考えていれば良かった。それ以上の難しさはなかった。(1998年大会で務めた)テクニカル・コーディネーターというポジションでは、チームの中、グループの中でバランスを取りながら監督、選手、スタッフを含めて1人1人がスムーズに働けるようにする仕事だった。この仕事は特殊な仕事でいろいろな苦労はしたが、結果はある程度得た。その時に得た経験は、代表の監督をやる上で非常に生きている。

 今回初めて代表監督をやったが、自分の場合はピッチの中でもそうだけれども、「自由」を掲げてやってきた。それがなかなか理解されず、あるいは結果に結びつかず、厳しいご意見をいただいたこともあった。だが自分は「物事を強いる」というやり方では、これ以上日本サッカーの進歩はないと考えている。これは選手だけでなくスタッフもそうだが、自分の与えられた役割の中で、自分がチームの中で最高のものを考えてアクションを起こさない限り、それ以上の進歩は望めない。
 そういうやり方に慣れていない選手たちの中で仕事を始めて、4年後に実際に皆さんの前で23人の名前を呼べるような場所にいられることは、(自分が考えている)そういうことが浸透してきた、少なくとも自分のグループでは浸透して結果を得たということで、うれしく思っている。

 自分が監督として就任した時期は、世界中で多くの方々が監督として就任した。代表監督は結果がすべてであり、結果を残せなければその座を渡さなければいけない。しかし自分は最終的に支持をいただけて、この場でW杯に臨む23人の選手を選出することができた。そのことに対して自分は感激しているし、15年前に自分が来日したときにはこういうことが起こるとは予想していなかった。
 本日の会見を、日本の多くの方々に生中継でご覧いただくというのは、サッカーが日本の中でそれほどまでに大きな関心事になったということ。来日した当時は想像できなかったことだ。それを思うと非常に感慨深いものがある。

――最終的に23名のメンバー選考が固まったのはいつか

ジーコ (メンバー選考は)大変な作業で責任もある。23人を選ぶ過程の中では、常に2、3人というふうにコンディションのことを考えたり、あるいはそのほかの部分を考えて、固まらずにいた。最終的に名前をキッチリ出せる状態になったのは、スコットランド戦(13日)の後だった。実際にはキリンカップの開幕前である8日に23名は決めていたが、自分で確信できたのはスコットランド戦の後だった。

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