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April 01, 2006

『芸術人類学』

Art_anthropology

『芸術人類学』中沢新一、みすず書房

 基本的に前半は『カイエ・ソバージュ』全五巻の焼き直しというか整理じゃないのかな。

 いいな、と思ったのは流動的な心の働きをホモサピエンス・サピエンスは持っているために、外の現実と対応関係を持たない幻想界というものが生じ、結果として「動物とちがって人間は狂いやすいのです」(p.12)といったあたり。この論考はさらに「現世人類は自分の中に凶器への可能性を開くことによって、はじめてそれまでの人類たちを越えた存在になった、と言えるかもしれません」(p.21)あたりも、カッコ良い言い方だな、と。

 統合失調症の専門家であるマッテ・ブランコは「統合失調症ではあきらかな『対称性』の特徴を持つ思考が、日常生活のただ中に浮上して」くるので、それをたんなる病理現象として扱うのには反対し、「対称性の知性」の中に、もっとも原初的な「人間のしるし」を見いだそうとしている、というのは教えてもらった感じ。

 「十字架と鯨」では、中沢さん特有のキリスト教に対する見方が出ている。中沢さんは、イエスが神の子であるとしたキリスト教のドグマは、より神に近い派とより人間に近い派の対立を生み出し、不安定な対立をずっと続けていると『宗教入門』マドラ出版の中で語っていたが、ここでも、「野の花、空の鳥」のように自由に生きた自然人イエスの絶対的な自由を、キリスト教は十字架に自ら打ちつけてることで強力な拘束を加えようとした二重の性格を持っている、と気持ち良さそうに書いているうあたりは得意の論法からだろうか。

 プラトンの洞窟好きをラスコーの壁画からの照射があるのではないか、という「日本哲学にとって『観念』とは何か」という講演は、ひらめきの美しさを感じる。ヤポニカ種の哲学者という言い方もええな、と。

 山伏の初源を朝鮮半島から発生した花郎集会に求め、沖縄のアカマタ・クロマタ祭祀との共通点をさぐる「山伏の発生」は個人的には一番、面白かった。

 数学者、岡潔さんが犬と一緒にジャンプしている写真には感動した。

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