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March 11, 2006

『テレビの罠 コイズミ現象を読みとく』

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『テレビの罠 コイズミ現象を読みとく』香山リカ、ちくま新書

まあ、新書なので、見立てというか、瞬間芸というか、パッと面白い見方がひとつでも提示されていればいいんじゃないかと思うんだけど、『ぷちナショナリズム症候群』以来、同じようなテーマで書き続けている(最近は生産量が多いので、ひょっとしたら構成とキモイところだけ書いて、後は別人が書いてるのかもしれないが)香山リカさんが、昨年の自民党の大勝を分析しているのがこの本。

 目新しいというか知らなかったのは、竹中大臣が郵政民営化のパンフレットを発注したスリード社が作成した「郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略」という企画書。ここでは郵政民営化の合意形成のためには「構造改革ポジティブ、IQハイ」に属するA層と「構造改革ポジティブ、IQロー」に属するB層をターゲットにすべきだが、特に「主婦層&子ども中心/シルバー層」で小泉内閣の支持基盤となっているB層にフォーカスした、徹底したラーニングプロモーションが必要と考える、という結論が出されていたという(p.98-)。もちろん、これだけではないだろうが、さもありなん、という感じはうける。

 高IQに分類されている「テレビ関係者」などは初めから対象外に置かれ、結果的には刺客報道などによって、小泉自民党の大勝利に貢献してしまうという二重の意味でのダメだしを喰らうことになる。

 そして、これまでの選挙では反感を買われていたセルブ感あふれる女性候補者や、クールビズを決めた安陪幹事長代理などメジャー感あふれる人たちの呼びかけに「イエス」と応えるのが、日々の不安から目をそらせ、勝ち馬に乗り遅れたらおしまいという切迫した投票行動を生んだのではないか、と書いている(p.130)。いいですね「メジャー感を漂わせた人たちの呼びかけに、『イエス』と答える」というあたりの文章。もう、格差がつきすぎて、現実には是正できなくなっているので、せめて「勝ち馬に乗っておこう」ということだ、と。

 そして弱者とされたような階層が保守的なマッチョな政治を支持するような「ぷちナショ」現象に関しては、新たに「ロマン主義ではないか」と少し発展させている。もっと書けば「世界の平和を考え、自分さがしをしていたらいつのまにかナショナリスト」みたいな流れが、「小泉さんが命をかけているなら、オレも」という投票行動に結びついたのではないか、と(p.156-)。

 まあ、見立てとしては以上のようなことが書かれていているのだけど、その他で面白かったのは、小泉首相は2003年に『タンホイザー』をバイロイトで当時のシュレーダー首相と観劇しているのだが、シュレーダー首相は第二次世界大戦後、はじめてバイロイトに出かけたドイツ首相となったのだという。指揮者の岩城宏之さんは「小泉さんのバイロイト行き希望は、ドイツ首相のドイツの『靖国』-ヒトラー解禁を助け、大きな貸しをつくったのだ」と書いているという(p.114)。

まあ、いろいろやってますな…。

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