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March 10, 2006

『他人を見下す若者たち』

tanin

『他人を見下す若者たち』速水敏彦、講談社現代新書

 これと『テレビの罠 コイズミ現象を読みとく』香山リカ、ちくま新書。両方とも瞬間芸みたいな本なんだけど、合わせ技で読むと、まあ、どこか当たっている部分もあるかもしれないというか、当たってないかもしれないんだけど、「あ、こういう見方もあるんか」というぐらいの感想にはなるのでご紹介。『他人を見下す若者たち』は心理学者、『テレビの罠』は精神分析医による本というので似通ってくる部分はあるのかもしれない。

 まず、『他人を見下す若者たち』だが、著者の専門は教育心理学。モチーフは日本が格差社会に変貌をとげたことによって"負け組"となった若者が、仮想的有能感にすがって自己肯定感を獲得せざるを得なくなってきており、結果としての他者軽視が社会的に様々な弊害を生じさせている、というもの(自分が悪いことをしているのに謝らない子供が増え、さらには親も謝らない)。

 なんか、書いているうちに本当につまらないと感じてしまうのだが、もう少し頑張って書くと、唯一こういった整理もありなのかな、と思ったのが、「経験に基づかない仮想的有能感vs.経験に基づく自尊感情」という対比の仕方。これも当たりまえっちゃ当たり前なんだけど、「友だちに無視されこと」「先生から注意を受けたこと」「周りの大人に信用されなかった」という人間関係においてネガティブな経験を仮想的有能感が高い人ほど多く経験しているという報告(p.159-)。

 そして仮想的有能感と自尊感情をタテヨコの座標軸に据えると、自尊感情と仮想的有能感のどちらも高い「全能型」。どちらも低い「萎縮型」。自尊感情は高いが仮想型有能感は低い「自尊型」。仮想的有能感は高いが自尊感情は低いのが「仮想型」と4種類に分類できるのではないか、と整理している(p.162)。

 なんというか、論議を進める際に使っているのがパッとしないデータのためか、いまひとつ「勝手な整理と分析なんじゃないの」という思いはぬぐいきれないが、最近のヒット曲の歌詞を読むと、努力や経験という代償なしに誇りを得たいという「根拠なき自己肯定」を歌いあげた"癒しソング"や、長引く不況の中で物質的には豊かでなくても自分らしく夢を追う"等身大ソング"が多くなってきているというのも、なんか改めて紹介しているとバカみたいに感じるだが、それなりに読んでいる最中は納得した(p.43)。

 また、これもどれほど標本数からとったのかわからないが、インターネット利用頻度と仮想的有能感の高さは有意の関係にあり、毎日のように流されるネガティブなニュースを身ながら「何やってんだ、バカ者め」という内言を発するか、あるいは2chに書き込むことで有能感を感じようとしているのかもしれないという(p.149)。

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