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February 05, 2006

『猟犬たちの山脈』

pepperdogs

『猟犬たちの山脈 上下』ビング・ウェスト(著)、村上和久(訳)、文春文庫

 『ファルージャ 栄光なき死闘―アメリカ軍兵士たちの20カ月』がなかなかよかったので海兵隊あがりの元国防次官補ビング・ウェストの作品で、他に唯一邦訳されている『猟犬たちの山脈』を注文して読んでみた。そしたら、なんとノンフィクションではなく冒険小説。ノンフィクションのライターが小説を書くと、なかなか読ませるものがあるので(例えばラピエール&コリンズの『第五の騎手』とか)最後まで読み切ってしまった。

 NATOはコソボに平和維持軍を派遣しているが、その中核となる米軍の主力のひとつは海兵隊の予備役で、そのひとりがセルビア軍の凶人のような軍曹に誘拐され、その人質を親友である海兵隊偵察チーム"ペッパードッグス"が奪還する、というストーリー。

 全体的には古くさいが、物語を新しく装っているのは、偵察隊が海兵隊の予備役で構成されており、通信兵はIT技術者で、自身が開設したセルビア人女性と米兵向けの出会い系サイトに、戦果をどんどんアップしてしまい、セルビア・モンテネグロから休戦協定違反だと非難され早く離脱してもらいたいNATO側の思惑から外れ、どんどん奥地まで潜入してコソボのゲリラたちとも遭遇し…というあたりの設定。

 いまや米軍はラップトップコンピュータ一台(クオトロン?)で音声、データ通信を行っているのかと改めて思ったし、先端に動画のカメラをつけたリモコン飛行機を飛ばして、その画面で状況把握をするのか、みたいな。火力支援を要請する場合でもGPSによって自分たちの位置を知らせることができて、Friendly Fireによって殺されるみたいなことは起きないのか、みたいな。そして最前線での戦闘を現地の司令室はおろか、ホワイトハウスでも確認できるのか、みたいな。湾岸戦争の時までは、ここまでリアルタイム化はできていなかったようで、シュワルツコフ将軍は自分の部隊がイラク軍の道路を遮断していたことに気づかずに攻撃を中止させたようなことは今では考えにくいのだろう(下巻、p.266)。

 ただし、「コンピュータを導入して以来、海兵隊は地図の等高線の読み方を忘れちまったんだ」(上巻、p.62)みたいなことも起こっているようだが。

 まあ、健全な信託基金によって人生を守られた成功者が本当の戦闘を求めて海兵隊の予備役にはずっと登録し、カラダを鍛えまくっているという設定にはいくらなんでも無理があるだろうが、海兵隊は現役と予備役をあまり区別せずに運用するというのは、本当にありそうだし、これからはもっとそうした状態になっていくんだろうな、と感じた。

まあ、本物の小説家ではないので、もっとヤマ場での盛り上げには気恥ずかしさが先に立っているし、ラストも引っ張りすぎという感じは受ける。でも、某トム・クランシーの作品なんかより、ずっと良かった。映画化されれば、もちろん見にいきます。

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