祐天寺散歩
年末、内回目かの忘年会を祐天寺で開いた。祐天寺は高校時代を過ごした町。今でも通勤途中の駅ではあるが、めったに降りない。当日は15:30からやっている「忠弥」での設定だったので、ついでというか、パスポートの書き換え申請がサクッと終わってしまったということもあり、ぶらりと歩いてみた。
駅前のロータリーを左方向に曲がると、そこにはカレーの「ナイアガラ」がある。もともとあったところからは移転している。今ある場所はケンタが日本上陸直後から開店していた。そんな巨大資本を、地元のいちカレー店が形の上でも駆逐したというのは、素晴らしい快挙ではないだろうか。もう20年以上も喰ってはいないが、当時から「ナイアガラ」で喰うと、友達から「あ、スパイスのいい香り。ナイアガラ行った?」とズボシにされるほど香り高い、スパイシーなカレーだった。それと忘れられないが店主の接客。高校生のガキ相手に「あ、お客さん、また、よくいらっしゃいました」とひと言かけてれる。こんな店は他に知らなかったな、当時。大事にされれば、行儀よく喰って、また来る。そんな善のスパライルが「ナイアガラ」をここまで立派な店にしたのだろうと思う。とはいっても、久しく喰っていないので、今度、途中下車して行ってみようと思う。
なんて考えながら祐天寺の方向にどんどん進むと、猪木vsアリ戦を街頭テレビ状態で観た電気店がまだあったり、当時から汚くて狭いけどタンメンは旨い「珍満」がまだ営業していたり、なかなか祐天寺の商店街は元気なので嬉しくなる。そういえば「桃鉄東京」でも、祐天寺の物件は配当が高い。「ナイアガラ」を指す「SLカレーの店」は50%、「のほほんベアーズ」を指す「テディベアの店」は100%、「PoePoe ポエポエ」を指す「ウクレレショップ」はなんと300%。全部買い占めれば、毎年6億9000万円の配当を得られる。と、ここで桃鉄東京の必勝法を披露してもしょうがないのだが、とにかく祐天寺がなかなか頑張っている町だというのはおわかりいただけると思う。
それにしても祐天寺は意外と鉄っ気が強い町だ。ミニSLに乗って運ばれてくる「ナイアガラ」のカレーだけではない。祐天寺に向かっての道の途中にある幼稚園の入口には、C-57の動輪が置かれている(実は、これも「ナイアガラ」のご主人のコレクションらしいのだが)。さらには「鉄道模型リトルジャパン」も祐天寺には店を構えている。それも、これも「ナイアガラ」のご主人の影響なのだろうか。
あと、祐天寺が素晴らしいと思うのは本屋さんが充実していること。芳林堂(昔からこの名前だっけ…)は渋谷と横浜を除けば、昔から東急沿線随一の大きさだったし、高校の時から随分、買わせてもらった。さらには、けっこう古本屋さんもある。
駒沢通りには新しくミステリー専門の「赤い鰊 Red Herrings」という店も出来ていた。小さいながらも充実した品揃え。当日はロス・マクドナルドの『地中の男』のカバー絵付きバージョンのハヤカワポケミスを購入した。昔からポケミスでは持っていたけど、カバー絵付きじゃなくて、単なるピニールカバー付きのやつだった。本は一点いってんハトロン紙で包まれていて、ご主人のミステリー本に対する愛情が感じられる。なんでも4年前からやっているとのこと。ちなみに、レッド・ヘリングスというのは、推理小説において犯人を特定されないための注意をそらす意図的な誤情報、みたいな意味。なんでもイギリスでは猟犬に、匂いのかぎ分け訓練をするとき、燻製の鰊を使うらしい。燻製の鰊の臭いは強烈。太宰治は「鰊を焼くとき、あんな臭いがする。なまぐさい」と『春の盗賊』で書いているが、そんな人を惑わす臭いを放つものなのだろうか。
とにかくこれからは祐天寺で降りたら、「ナイアガラ」~「赤い鰊」の周遊ルートで歩きたい。つか、こういう美味しい店と相性のいい本屋さんのふたつが確保されていれば、その町は散歩コースとしての背骨が確立されたも同然。そして、もちろん〆は「忠弥」となる。こんなんでも串からはずしながら、カクテルに黒ビールを注いでしまえば、極楽。
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Comments
pataさん TBさせていただいたヤッチです。
祐天寺散歩 楽しく読ませていただきました。
それにしても 忠弥っておいしそう(*^_^*)
写真もとってもよく撮れてるし・・・
またおじゃまさせていただきま~す。
Posted by: ヤッチ | January 01, 2006 05:26 PM
忠弥は時間があえばまた行きたいですね。
ただし「カクテル」は飲みすぎないこと。
Posted by: yasuzoh | January 01, 2006 06:21 PM
あけましておめでとう!
お久し振りです。
祐天寺で高校時代を過ごしたのですか?
羨ましい。僕の知人の古本屋も祐天寺にありました。(今もあるはず)
色々なオカシイ名前で東横、中央線に出店しているみたいですが、第一号店が祐天寺の「あるご書店」でした。残念なことにこの第一号店はなくなりましたが、第一回の書皮大賞をもらっています(1984年)。
蛇頭川のブログを書いているichikinさんも良く祐天寺のことを書いてくださっている。
僕自身は実際、十回も行っていないのですが、何か懐かしいのです。
本年もよろしく。
Posted by: 葉っぱ64 | January 01, 2006 06:37 PM
すみません、ブログ名が間違っていました。
『蛇崩川、どぶ録』でした。
ichikinさん、ごめんなさい、
http://d.hatena.ne.jp/ichikin/
Posted by: 葉っぱ64 | January 01, 2006 06:45 PM
ヤッチさん、よろしかったら、また読んでください!
やすぞうさん「縄のれん」のカクテルよりも、かなーり効くということが実感できましたw
葉っぱさん、お久しぶりです!おお、かっちょイイ、カバーですねぇ!
http://homepage2.nifty.com/bcover/taisyo/84taisyo.html
Posted by: pata | January 01, 2006 09:26 PM
あのタレで食べた串とカクテルのコンビは最強ですね・・・
また、お願いします!!
Posted by: Jacquie | January 03, 2006 10:47 PM
Jacquieさん、先日は恐縮でした…
その後の調査によっても、ワインバーで撃沈していたので、今度は縄のれんのハラミステーキでも…
Posted by: pata | January 03, 2006 11:48 PM
pataさん。はじめまして。葉っぱ64さんから紹介にあずかりましたichikinと申します。祐天寺在住です。忠弥は、すぐに閉まってしまうので、まだ未体験です。ときどき、ロータリーから右奧(学大側)にいったところにある「K's キッチン」という店で、飯&酒をしています。地元の若い人が集ういい店ですよ。なんか左サイドバーで紹介されている曲も、なじみ深いものばかりです。John Prine なんて、渋すぎ!
これからもよろしくお願いします。
Posted by: ichikin | January 04, 2006 12:21 PM
ichikinさん、はじめまして!コメントありがとうございます。
いやー、ブログも読ませていただき、感激のあまり、思わずリンクさせていただきました。しかし、あの店主はずっと、あの姿勢でやっておられるのが偉いですねぇ…。ぼくなんか、イイ人で行こう、なんて思っても23日でオワですよ。素晴らしいなぁ。
それと、John Prineいいですよねぇ…。
これからも、時々、のぞいてください!
Posted by: pata | January 04, 2006 09:15 PM
お元気ですか?12月にメールいただいたのに、島への移動やらナンやらでお返事が出来なくなってましたです。
早速、まずは。明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
我がぶろぐにも遊びにいらして下さいです。たいしたこと書いてないけど。
そういえば某書の石井氏は石井師ではないですよ。別人。
ではでは。
Posted by: あんとに庵 | January 06, 2006 12:47 AM
あ、どーも。あけまして、おめでとうございます!
>某書の石井氏は石井師ではないですよ。別人。
ビジュアル的にそうじゃないな、とは思っていたのですw
Posted by: pata | January 06, 2006 07:47 AM
いやぁ、その勘違い、しばらくネタにさせていただきましたよ。
両方の石井氏を知る人には大変に受けました。
しかし、書評が参考になるですねぇ。相変わらずすごい読書量ですね。
そういえばネグりのヨブは某ローマにいる伊○さんに頼まれて運び屋しました。そんなにいい本なら飛行機の中で盗み読みすりゃぁよかったでする。
7月にそっち帰りますんで、今度こそ遊びましょう。
Posted by: あんとに庵 | January 06, 2006 10:44 PM
>両方の石井氏を知る人には大変に受けました。
そうだったのかぁw
>7月にそっち帰りますんで、今度こそ遊びましょう。
行きたいとこ、みつくろっておいてくださいね!
それと、ネグリのヨブは本当に感動しまっせ。お勧め。
Posted by: pata | January 07, 2006 12:15 AM
> それにしても祐天寺は意外と鉄っ気が強い町だ。
(中略)
> それも、これも「ナイアガラ」のご主人の影響なのだろうか。
今日偶然ほぼ日刊イトイ新聞を見ていたのですが、
タモリさんによると、昔、
学芸大学に鉄道の工場があったんそうです。
http://www.1101.com/tamori/2006-01-21.html
その影響かもしれませんね。
Posted by: narito | January 23, 2006 05:42 PM
なるほど、なるほど。ナリトさん、情報サンクスです。
「土地の記憶」ってけっこうありますよね
Posted by: pata | January 23, 2006 05:51 PM