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January 19, 2006

『中世の夢』

『中世の夢』ジャック・ルゴフ (著), 池上俊一(訳)

 ルゴフの中世のイマジネールに関する様々な論文を集めて訳してみました、みたいな本なのかな。文学や美術の研究者が分析を行ってきた心的イメージを、歴史学者も研究してみました、というのが趣旨。その対象は科学、インド洋、夢、森、野人。

 『歴史・文化・表象 アナール派と歴史人類学』を読んで、チラッと紹介されていた趣旨に感激した「キリスト教と夢 2世紀から7世紀」に関しては、期待値が高すぎたためか、夢の「抑圧と操作は、性に対してとおなじように、教会の一大検閲によって課され、そこからわれわれはまだ完全には解放されていないし、またその検閲は、よかれあしかれ、精神分析を結果としてもたらし」、信徒に恐怖を与えて支配するというキリスト教は、個人の夢の世界にも安息を与えないという、という結語の部分だけが面白かった(pp.130-)。でも、途中の旧約聖書に関する分析は中途半端だし(ヘブライ語でやらないと…)、アウグスチヌスの夢に関する考察というのも、伝統に頼りすぎているというか、わざわざ補強する必要ないんじゃないかと思った。

それより魅せられたのはインド洋。1489年のベーハイムによってうけいれられたインド洋の開放の前には楽園の、<閉ざされし庭 hortus conclusus>として夢見られていた、というのは、そこまで知らなかったというか、新しいイメージを与えられた。南インドはマタイ、上インドはバルトロマイ、下インドはトマスという十二使徒が改宗させたという伝説が生まれ(このうち薄い根拠があるのはトマスのみ)、しかもネストリウス派の共同体の発見が、大司祭ヨハネが支配する理想の王国という根拠のないイメージをさらに膨らませていた、なんていうのは知らなかった(pp.51-55)。

閑話休題だが、北インドの町ファテブル・シークリーに残っている城門アーチに刻まれている「イエス-汝に祝福あれ-が言った『この世は橋である。/渡って行きなさい。/しかしそこに/棲家を建ててはならない』」という文章が、トマス41「イエスが言った『過ぎ去り行く者となりなさい』」の意味に近いという話は好きだなぁ(『トマスによる福音書』荒井献、講談社学術文庫、p.187)。

まあ、インドでさえ、ここまで夢に見られていたのだから、さらにその先にある真珠の島、セイロンでは"セレンディップ"みたいな話が生まれるのは当然だわなと思ったし、さらに先のジバングが黄金の島であるというイメージは、もはやイメージのインフレ化傾向としては避けられなかったんだろうな、と。

 あとは中世西欧においては、イスラエルの荒野のイメージが森に置き換えられているという第四論文「西洋中世の荒野=森」は好き。

 ということで、そろそろお腹いっぱいになってきたので、『煉獄の誕生』はどっか旅行する時の楽しみにとっておいて(GWの時の旅のお供は『時計職人とマルクス』渡辺孝次さんだったけど、そんな感じ)、とりあえずルゴフさんは終了。

 さっそくバランスをとるために『官邸主導』清水真人、日本経済新聞社を読んでいますww

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