『シーズン・チケット』
いろいろ買いだめしていたDVDを消化しているのだが、これやっぱりよかったです。『シーズン・チケット』。原題の"Purely Belter"は「本当に最高!」ぐらいの意味か。応援しているチームが勝ったときサポーターが叫ぶ言葉のようだが、詳しくは知らない。
ニューキャッスルは炭鉱の町。New Castle Unitedを愛する心優しきジェリーとスーウェルが500ポンドするシーズン・チケットを手に入れるために奮闘する話。どこまで誇張されているのかわからないが、主人公ジェリーはアル中で暴力を振るう父から逃げて母親と暮らしている。しかし、すぐ上の姉は家出していないは、母親はタバコの吸い過ぎで気管支をやられてゲホゲホいってるは、電話がかかってきてもどうせ借金取りかなんかなので出ないわ、ジェリー自身も勝手に休学するは、崩壊寸前というか絶賛崩壊中の家庭で過ごす。しかし、なぜか悲惨ではない。なぜなんだろう。フランスやアメリカ映画でも、なんかドッーと転落していくような展開になりそうなのに。
主人公二人のサッカーへの想いがピュアだからだろうか?それが、どこかで踏みとどまらせているのだろうか。とにかく2年間かけて二人で1000ポンド(いまじゃ約20万円?ポンドって値上がりしたな…)のシーズンチケットを買うために、タバコもクスリもやめるというのが、なんともいじらしい。主人公ジェリーに民生委員のおばちゃんから「2週間学校に行ったらサッカーのタダ券やる」と言われれば、いろいろ我慢して学校の授業を受けるというのも含めて。
とにかく、今シーズン、最初のゲームでは紅茶を飲むことを決めた。サッカーのチケット目当てに通っている学校での授業の場面。自分の体験を語る、みたいな授業で。
「(最初に連れていってもらったサッカーの試合のこと)何か覚えている?」
「父さんのコート。分厚くてすごく暖かかった。寒くて震える僕に掛けてくれて、すっぽりくるまるとホカホカした。風も吹いたし、雨も降ったけど、まるで平気だった。時々僕を気にする父さんはジャンパー1枚。でも満足そうだった」
「やさしいわ」
「ハーフタイムには紅茶を買ってくれて一緒に飲んだ」
「おいしかった?」
「最高(Belter)だった。本当に最高(Purely Belter)だった。砂糖は二つ。ミルクはたっぷりで。どう例えたらいいのか、あれは世界一の紅茶だった」
万引きしたツルゲーネフの『猟人日記』を売りつけようとする場面には笑った。英語に翻訳された題名は"A Sportsman's Notebook "。これを主人公ジェリーは「ケビン・キーガンが書いたんたけど、ひとりじゃ書けなくって、友人のツルちゃんが一緒に書いてやったのさ」と説明する。
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Comments
主役の男の子って実生活ではサンダーランドのファンだったような。
仕事とはいえ、カワイソス。
Posted by: PINA | January 03, 2006 06:14 PM
でしたね(笑)
「サンランのサポーターなのにな~」
って、メイキングで言ってましたね。
原作も読んだんですが、原作とは違って、
ハッピーエンドっぽい、爽やかなラストで
感動しましたよ。
オシムさんの本・・・どこにも、見当たらない。
Posted by: GIG | January 03, 2006 11:23 PM
PINAさん、GIGさん、どーもでした
いやー、でも、よかったすねぇ、この映画
おいらの先輩でこの映画、劇場で見た人から「はよ見んかい!」といわれ続けて、やっと見ました…
にしてもStadium of Lightには今年も日が差しませんねぇ。サンダーランドは典型的なエレベーターチームになってますよね…。あと、この男の子は他に映画とか出ていないんでしょうかねぇ
さにかく、今年は味スタでミルクたっぷりの紅茶を持ち込んで、あの子たちがStadium of Lightでサッカーを観戦するような気持ちで試合に臨もうかと思います!
Posted by: pata | January 03, 2006 11:54 PM
サンダーランドの監督って、ミック?!
ニューカッスルもスーさんとスイサイダルなシーズンを過ごしているようです…。
>GIGさん
私の会社の近所でも「オシムの言葉」は瞬時に売り切れていたようで、私はタッチの差で手に入りませんでした。早くお手元に、をご所望であればアマゾンでオーダーが一番かと思います。
Posted by: PINA | January 04, 2006 08:19 AM
だけど、改めて新城ってビッグクラブって感じしますよね。結果はついてこないし、今は監督もいないけどw
シアラーがそのまま監督になるのかな
『オシムの言葉』はぼくもアマゾンから買いました
Posted by: pata | January 04, 2006 09:45 AM
クリス・ベアッティ君ですね。
劇団に所属してて、デビュー作でしたっけ?
この映画が。
その後は・・・見ませんね;
サンランの応援で忙しいのかな(笑)
『オシムの言葉』・・・諦めて、アマゾンでポチしました。
ウチのチームは、ミルクティどころか、
鍋でも食わなきゃ、見てらんない有様で・・・
いったい、何時んなったら、J1なんだろうか・・・
PATAさん、PINAさん
どうも有難うでした。
Posted by: GIG | January 04, 2006 09:06 PM
GIGさん、どーも。そうですか、クリス・ベアッティ君みませんか…
つか、この人の名前っていまはエバトンにいるビーティとスペル同じじゃないのか…どうなんでしょ
なかなか目ぢからがあって、よさげな感じもするんですがねぇ…
Posted by: pata | January 04, 2006 09:27 PM
イギリス映画はあまり見ませんがマイク・ハーマンとケン・ローチは好きです。虐待や失業,、薬物問題など深刻な社会問題がベースにあり、シリアスだけど心暖まるものが多いですね。ところで主役の子、アラン・スミスに似てません?
Posted by: KYO | January 07, 2006 12:01 PM
『ブラス!』は観てみようとおもっとります!
ケン・ローチ監督のは観てないんすけど…何がいいっすかね?『SWEET SIXTEEN』でしょうか…
それと、確かにアラン・スミスの子供の頃ってああいう感じじゃないかな、と思いますよねw
Posted by: pata | January 07, 2006 11:02 PM
ケン・ローチといえば、「ケス」!
Posted by: PINA | January 10, 2006 02:45 PM
ケン・ローチって、あまりDVDで売ってる作品ってないんですよね…
Posted by: pata | January 11, 2006 08:16 AM
そういえば「ケス」ってビデオはあるはずだけど、DVDってみたことがないかも…。
「the smiths is dead」という、the smithsってバンドのカヴァー集のジャケットに「ケス」の写真が使われてます。
Posted by: PINA | January 12, 2006 12:21 AM
アマゾンUKにはありました。
日本でリリースがないだけかもしれない。まぁそのうち出そうですけど。
Posted by: PINA | January 12, 2006 12:23 AM
おお、では、出たらさっそく!
Posted by: pata | January 12, 2006 12:40 AM