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January 11, 2006

『白の軍団』

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『白の軍団 ベッカムとレアル・マドリードの真実』ジョン・カーリン (著)、有沢善樹 (訳)、ランダムハウス講談社

 スペイン国内では02/03シーズンのリーグ戦を制しての03年スペインスーパーカップ、ヨーロッパでは忘れもしないジダンのスーパボレーが決まった01/02のCL決勝以来、レアル・マドリーはタイトルから見放されている。考えて見れば、最もギャラクティコたちが輝いていたのは01年から03年頃にかけてなのかもしれないが、フロレンティーノ・ペレス会長は03/04シーズンに向けて、ベッカムを獲る。しかもはした金(ピーナッツ)で。当時、関係が悪化していたベッカムをマンUの絶対君主ファーガソン監督が放出することを決意し、たった2500万ユーロに1000万ユーロのオプションをつけただけでマドリーに売りに出した。当時、マドリーのマーケティング部門を統括する、ホセ・アンヘル・サンチェスはベッカムの価値を5億ユーロと見積もり、その10分の1の5000万ユーロまで用意して交渉に臨んでいた。

 この本はベッカムが初年度に在籍し、見事にガス欠となって自滅した03/04シーズンの終了直後で終わっているが、ベッカムが在籍することによって、マドリーはアディダス社と8年で総額4億8000万ユーロの契約を結び、04/05シーズンの収益予測は単年度で3億ユーロに達したという。

 つまり、マドリーはベッカム獲得によって、それ以降、タイトルに見放されているが、マドリーという「ブランドを強化し、そこから金を生み出す方が、優勝するサッカーチームを作るよりもずっと簡単だと結論付けてもいいのではないか」(p.489)ということなのかもしれない。

 この本は、ベッカムがファーガソンとの確執が決定的に表面化した02/03シーズンのCL準々決勝から始まる。マドリーvsマンUの2ndレグ、ファーガソンはベッカムを控えに廻すという感情的な采配を見せて敗退。同時に、シーズン終了後のベッカム移籍を確定させた。そして、マンUはクラブのブランド力を半減させる。

 なぜ、マドリーはベッカムを獲得したのか。それはフロレンティーノ・ペレス会長が定義するマドリーのあるべき姿による。「マドリディスモはセニョーリオだ、とペレスは言った。そして、セニョーリオの決定的な本質は、自分が威風堂々とした卓越した存在であると信じて疑わないことある」(p.177)。そう、この本の主人公は、ペレス会長なのだ。もしかしたら、こんな副題の方がいいかもしれない「フロレンティーノ・ペレス:または私は如何にして敗北を心配するのをやめてギャラクティコを愛するようになったか」

 ベッカムは最初の数試合こそ、弱点をつかれるが、すぐに立ち直り、ジダンやロナウドよりも早くベルナベウの観衆から受け入れられる。ちなみに、ベッカムはトラップが他のギャラクティコたちと比べるとお粗末で、ボールを奪われそうになると体を180度回転させるが、逆に体を寄せられてボールを奪取され、しかも、ボールを奪われると我を忘れて取り戻そうと深追いする、という(pp.210-211)。しかも、この欠点をファーガソンは矯正しなかった。

 このシーズン、レアルはリーグも独走するが、終盤になって5連敗。CLも取り損ね、以来、タイトルから見放されている。リーガでは今やひとりギャラクティコというか一人銀河団のロナウジーニョにやられっぱなしだし、CLでも話題になる中心はバルサとギャラクティコ監督モウリーニョ率いるチェルシー。マドリーといえばフィーゴは去り、ジダンを含めてギャラクティコたちも年老いた。

 ペレス会長は勝利よりも、ギャラクティコたちが攻撃的なサッカーをする、というマッチョなチームをつくると宣言し、その通りにやってきた。しかし、04/05でやや方針転換してDFサムエルとCMFグラベセンを獲得したが、あまり機能せず、サムエルはすでに退団。05/06に獲得したロビーニョは、バルサのメッシと比べると、今のところ見劣りする。

 確かにマーケティングとしては「世界の超一流選手ほどお安い」というのは真実だろうし、確実に勝てるほどサッカーは甘くないのはわかるけど、このままの路線でいくのだろうか、マドリーは。それで最終的な勝利を得られるのだろうか。

 1シーズンで解雇されたケイロスはこんなことを語っている。ペレス会長は世界中の監督が知っていることを知らない、と。それは攻撃側と守備側にわかれて6対6のミニゲームをやると、必ず守備側が勝つということ。「試合を始めると、攻撃側は背後に大きなスペースを作っていまう。それは、自分たちが作る得点チャンス以上に、相手に得点チャンスを与える。それが真実だ。現実だ。サッカーの真理なんだ」(p.456)。

 ライターはアルゼンチンとイングランドのハーフで、イングランド在住のレアル・ファンという、この本を書くために生まれてきたような人物。ベッカムの入団会見とかのインタビュー役も仰せつかった、サッカーライターというより、普通のジャーナリスト。なかなか読ませてくれた。

 いまやマドリーというとネタのような感じにもなっているし、500頁超の本だけど、サッカーファンなら読んでも損はない。

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