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January 23, 2006

『官邸主導』

kantei_shudo

『官邸主導 小泉純一郎の革命』清水真人、日本経済新聞社

 えー、たぶん、ここで「読んだモン勝ち」という表現を使うのは、『シナプスが人格をつくる 脳細胞から自己の総体へ』ジョセフ・ルドゥー、みすず書房以来ではないかと思うのだが、これも「読んだモン勝ち」の本だと思う。それまでの派閥連合体という自民党政権下の議会制民主主義が抱えた意志非決定のメカニズムが、小泉政権によって根本的に変えられたことを真摯に考察している。

 そして、それが単に小泉本人のキャラクター分析などではなく、自民党本部が呑まなければ何も動かなかったという「双頭の鷲」のシステムが(全会一致の総務会!)何も変えられない状態を生みだしていたことへの反省から、政権交替可能な二大政党制を目指した小選挙区制を生みだし、小選挙区制度に「総裁や党執行部が独裁的な権力を持つ」と最も反対した小泉が、実は橋本政権以降、着々と強化された首相の権力基盤を武器に、一気に医療制度や道路公団さらには郵政まで変えてみせたという、皮肉な流れを大河ドラマのように浮かび上がらせている。

 著者によると小泉が郵政解散に打って出た背景には、三木首相や橋本首相が解散権を公使しなかったことへの歯がゆさだったとしている。小選挙区によって派閥が融解し始めた時期に首相となった小泉は、派閥の思惑など関係なく解散権は行使できたし、「衆院議員全員のクビを一瞬にして切ることができる衆院の解散権」(p.320)という内閣総理大臣しか持っていない権力の本質をとことん考え抜いた末のことだとしているが、ぼくは、もっと福田や岸の影響なども考え合わせるべきだとは思う。しかし、小泉首相は個人的な取材はあまり受け付けないためからなのか、そこら辺りの取材不足がやや残念に思う。

 最も心配なのは、ポスト小泉よりも、官邸主導の基盤となる経済財政諮問会議をうまくまとめるポスト竹中の存在だとか、官邸を支えるスタッフの体制整備だ、なんていうあたりも新味はあった。

 後で、もう少し書きます。

序章 小泉純一郎 最後の人事
第1章 武村正義の誤算
第2章 梶山静六の直感
第3章 孤高の橋本龍太郎
第4章 「真空」の小渕恵三
第5章 「司令塔」竹中平蔵の挑戦
第6章 ラ・マンチャの男の「正気」
終章 「強い首相」登場の必然と皮肉

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