« 05年の人文書ベストワンは『宮澤喜一回顧録』 | Main | 『松井教授の東大駒場講義録』 »

December 25, 2005

05年サッカー本ベストワンは『トーキョーワッショイ』

 昨年も同じことを書いたのだけど、めぼしいサッカー関連の本が少なくなっている。リアルタイムでネットやケータイに情報が流れ、プロ野球よりもファンと選手、クラブのフロントの距離が近いものだから、サッカーのサポーターたちは様々な情報を簡単に得ることができて、わざわざ一冊の本を読む気になれないのかもしれないし、だから本が売れないのかもしれない。

 ということで、良かった順から…。

tokyo_washoi

 『トーキョーワッショイ』後藤勝、双葉社は身につまされた。Jリーグが生まれた時には、なんで電通のマーケティングにのせられて皆んなにわかサポを演じているわけ?と思ったし、そういった違和感は今でもぬぐえない。筆者にしてもJ2に昇格した1999年に初めて駒場に赴いたのがFC東京との出会いだったというが、クラブとコミットしていくことに、違和感を感じつつ、漸近線をたどっていくという感じが伝わってきて好きだ。これが個人的には05年サッカー本のベストワン。

soccer_meshi1

 『サッカーでメシが食えるか?―サッカーのお仕事大紹介』スタジオダンクは新しいジャンルを切り開いた。それと同時に、クラマーさんに直接、指導を受けた現在の日本サッカー協会幹部たちは、Jリーグを立ち上げたことによって、すごい雇用市場も同時につくりあげたんだな、と改めて感じた。誰が語った言葉だかは忘れたが、いまや付加価値はものすごい切り返しからのシュートを決めるサッカー選手、150キロを投げるピッチャーの中にあるんだ、と思う。

bundesliga

 来年、ワールドカップに行く方は『ブンデスリーガ―ドイツサッカーの軌跡』ヘッセ・リヒテンベルガー(著)、 秋吉香代子 (訳)、バジリコをぜひ読んでからどうぞ。体操クラブから出発したクラブが多いこと、アマチュアリズムが1950年代まで濃厚に意識されていたこと、そしてベルンの奇跡のすごさなどは知っておいて損はない。

game_of_people

 『Game of People アジアカップ&ユーロ2004超観戦記』西部謙司、双葉社はジーコ・ジャパンのわかりにくさというか、アンチクライマックスさを唯一、そのまま描いているんじゃないかと思った。ジーコは気負うでもなく、たんたんと自分たちを信じて、最優秀のメンバーを集め、試合に備えての練習を行っているだけ。そこにはキッャチフレーズもなければ、「死ぬ気で行きます」的な決意表明もない。でも、ジーコによって日本代表は少なくともアジアではアンタッチャブルな存在、つまりブラジルやアルゼンチン、ドイツ、イタリアのようにほぼ確実にワールドカップ行けるという領域に近づいているんじゃないだろうか。

 最後は苦言。

 『アヤックスの戦争』サイモン・クーパー、柳下毅一郎訳は盛り上がらないが、それが原書のせいか、翻訳のせいかわからないし、だいたい二重の意味で信用できない。サイモン・クーパー自体が資料もよく調べずに勢いで書くライターだし、訳者は自分が訳した『サッカーの敵』に関して「英国の監督がしばしば選手を賞賛するときに兵士にたとえることを指摘した(邦訳からは省かれている)」とカッコの中で書いているだけで、ほったらかしにしている不誠実さだ(p.221)。白水社の編集はサッカーが文化だと思うなら、まともな訳書を出すべきだろう。何回も書くが『サッカーの敵』は原書とは構成もまったく違うし、『狂熱のシーズン ヴェローナFCを追いかけて』でも相当、省略部分がある。抄訳なら抄訳ともっとハッキリ書くべきだし、そうでないなら、ちゃんとすべて翻訳すべきだ。たいしたコストもかからないんだから。つか、ありがたいとは思うけど、だからこそ、もう少しだけ頑張ってほしい。お願いします。

|

« 05年の人文書ベストワンは『宮澤喜一回顧録』 | Main | 『松井教授の東大駒場講義録』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/7819739

Listed below are links to weblogs that reference 05年サッカー本ベストワンは『トーキョーワッショイ』:

« 05年の人文書ベストワンは『宮澤喜一回顧録』 | Main | 『松井教授の東大駒場講義録』 »