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November 14, 2005

クラマーさんの講演@パークタワー

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 13日にはパークハイアットのあるタワーで行われた500人近い人を入れることのできるホールでの後援会とシンポジウムがあった。当然、出席。

 司会はNHKの山本浩アナというより今や山本解説委員。前日の手作りのイベントでは思う存分暴れられたクラマーさんも、この日はやや自重気味。しかし、岡野さん、長沼さんなど懐かしい顔を見て、ゴキゲンな顔で入場。そして「講演時間は30分でお願いしたいと言うと『通訳を使わなければいけないので事実上は15分だ。それでは短すぎる』とご立腹」(山本解説委員)ということで、やっぱりヤンチャぶりを発揮。講演時間は45分に及んだ。

 ということだが、前日の内容とダブルところも多いので、今回はエキスを紹介したい(今回も、私的なメモを見ながらの再構成ですので、間違いなどがあったら、指摘してください)。

 「プレーヤーに要求されるものは、そのパフォーマンスです。90分あるいはワールドカップなら120分の試合でどれだけのパフォーマンスを見せられるのか。昨日、釜本に関する興味深いデータを見せてもらいました。1967年の試合で釜本は3.5kmしか走っていなかったのですが、67年にはそれが6kmに伸びていたのです。重要なのは、彼が6kmを走った上で、シュートしゴールを決めていることなのですが、プレーヤーの走る能力に関する要求は年々高くなっています。今やMFは12~15kmは走らなければなりません。FWでも10~12kmのランニングが要求されます。これだけ走れるようになった背景には栄養、身体的トレーニング、スポーツ医学など様々な進歩があったからで、これからの若いプレーヤーは15km以上走ることを求められるでしょう。本当はその上でゴールを決めなければならないのですが、基本的な走力がなければ通用しなくなってきています」

 「しかし、私は技術が最も大切だと思う。技術といってもサーカスのような曲芸ではありません。ちょっとした小技なら、いまや小学生でもやってのけます。しかし、リラックスした状態なら誰でもできるような技術を速いテンポの試合の中で、しかも相手がいる中で、ボールをコントロールして行わなければならないのです」

 「昨日、ベルディ対セレッソ戦を観戦しました。ベルディの選手たちはスペースがあるところでは素晴らしいプレーを見せるのですが、段々相手ゴールが近くなり、プレッシャーを受け始めると、ボールをコントロールできなくなっていきました。昨日の試合は87分のFKを決めた0-1でセレッソが勝ったのですが、それまではベルディが押しまくっていました。しかし、せっかくボールを獲って相手陣に攻め入っても、あるところまでくると、とたんにコントロールできなくなり、シュートもふかしてしまう。そんな連続でした」

 「私はスポーツの美とはダイナミックさの中にあると思います。ですから選手は観客にダイナミックな生き生きとした姿を見せようとする意志が必要です。そして、その背景には効率性があると思う。サッカーは実にシンプルなスポーツです。相手チームよりも1点でも多くゴールを決めれば勝ちなのですから。ですから、戦術も相手に勝つための戦術である必要があります。昨日の試合では、ベルディの選手たちは実に無益な努力をしていたと思います。ゴール前までボールを運び、シュートしてはふかす。最後には同情心までわいてきてしまいました(笑)。シュートが決まらなければ、いくら一生懸命やっても、それは無益な労働なのです。トレーニングはゴールを決める効率をあげるためのものでなければなりません」

 「私が1000円で柿を買って、それを1500円で売ったとしたら500円しか儲かりません。しかし、そんな少ない利益でいつまでやっていられるでしょうか。せっかくエネルギーを注ぎ込んだのだったら、たくさんの利益を得なければなりません」

 「あそこで聞いている長沼健さん(日本サッカー協会元会長、現最高顧問)は素晴らしいFWでした。彼はここぞという時に正しいポジションにいてゴールを決めました。62年、彼に代表選手たちの前で話してもらったことがあります。彼はこう言っていました『みんなが走り回っていたら、FWは立ち止まるんだ』『みんなが立ち止まっていたら、FWは走り回るんだ』と」

 「ゲルト・ミューラーはドイツ代表として62試合で68得点を決めた男ですが、私がバイエルン・ミュンヘンの監督をやっている時も、27試合で40点を決めたことがあります。ワールドカップでもペレより高い得点率を記録しました。いま、バイエルン・ミュンヘンにマカーイというFWがいますが、彼は1200分、12試合ゴールを決めていませんでした。マカーイにはセラピストがついていろいろアドバイスをしてもらったらしいのですが、ゲルト・ミューラーは単にこう言ったそうです。『お前はゴール前で動きすぎだ!狂ったように走り回っていればいいってもんじゃない!』と。私はこの話しを電話で聞かされた時、死ぬほど笑いころげると同時に、長沼さんの話を思い出したのです」

 「何がいいたいのかと言いますと、FWにとっては1962年の昔も2005年の現在も、状況をよく見て、予想しながら動くことが重要だということです。『みんなが走り回っていたら、FWは立ち止まるんだ』『みんなが立ち止まっていたら、FWは走り回るんだ』という長沼さんの言葉は今でも真実です」

 「サッカーにゴールがなかったとしたら、それは塩の入っていないスープ、主張のない芸術と同じです。トレーニングはゴールを決めるために行うのです。シュートを打つためではありません。そしてサッカーの美とは、ゴールを決める効率性にあるのではないでしょうか。効率よく試合を進めれば、それだけ勝利は近づきます。そして勝利に勝る喜びはないのです」

[追記]

ちなみにミューラーのアドバイスはしっかり効いたようだ「マカーイ転生、13戦ぶりゴール」

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