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October 10, 2005

『宇宙生命、そして人間圏』

matsui_book

『宇宙、生命、そして人間圏 Reconsider, man's relation to earth』松井孝典、ワック

 歴史を考えるのに、Written Historyではなく、宇宙開闢以来の時間の流れを歴史としてとらえ、「私は歴史学者と称すべきかもしれない」(p.164)という松井孝典教授が今は亡き『シンラ』に連載していたコラムをまとめたのがこの本。とはいっても最近の「世界で最も受けたい授業ブーム」に乗った再販。まあ、松井さんなら、少しでも儲かってもらえば大許し。なにせ、「30年以上も前に、月の誕生過程において、内部より表面のほうが高温になる理由を、世界ではじめて理論的に解明したのが、私の修士論文である」(p.162)という人なのだから。修士論文ですよ…。いやはや、世の中にはできる人っていうのは本当にいるもんです。理系の本当の情報には高校2年の時に文転して以来、振り切られたぼくですが、その頃から松井さんの名前は聞いていた。そして、研究一筋でなかなか助教授にもなれず、みかねた政府筋(?)からの圧力で東大のアカハラが克服されたという話も聞いたことがある。
 
 ま、そんな生臭い話はおいておいて、やっぱり、感心するというか、日々の考えからジャンプさせてくれるのが「宇宙開闢以来の時間」をスタイムスケールとして考えるという発想。
 
 例えば「高等技術文明を持つ知的生命体との邂逅の可能性」。
 
 ドレイクの式の変数を松井教授的に設定すると、宇宙には100億個ほどの"高等技術文明を持つ知的生命体の星"が存在する可能性があるという。しかし、異なる星どうしの連絡となると絶望的だという。それは「高等技術文明の継続時間」が極端に短いとも考えられるからだという。
 
 地球で考えても46億年のうちまだ100年か1000年といった長さしかない。このため、高等知的生命体が現在、同時存在する可能性を持つ星の数は一気に1000個まで少なくなるという。そうなると、1000個の星を隔てる平均距離は数百光年より遙かに遠くなり、高等文明が継続する可能性が1000年と仮定すると、他の文明と交信したり、相互作用を及ぼしたりできる可能性はきわめて低い、と(p.pp.184-)。
 
 松井さんの仕事は、恐竜が滅んだ原因と考えられるメキシコ・ユカタン半島に落ちた隕石の影響を調べるというのがメインのようだが、地球はいうまでもなく、宇宙に対して開かれたオープンなシステムであり、特に地球誕生から6億年までは隕石重爆撃期とも呼べるような衝突が繰り返され、その後、激しい衝突が終わった後の深海の還元的環境で育った生物が進化を始めたのだという。
 
 原始地球に巨大隕石が衝突し、水を含んだ原始地殻物質が溶けて花崗岩ができ、これが会場に浮き上がって初期の大陸がつくられ、雨を浴びることにより削り取られた物質が海に流れ込み、このゴミによって汚染された結果、酸性だった海は中和され、大気に含まれていた二酸化炭素がとけ込みやすい状態となり減り続け、温室効果を減らし、気温が下がるようになったという(p.30-)。
 
 ここで重要になってくるのがプレートテクトニクスで大地を動かすことによる二酸化炭素の循環らしいが、詳しいことは本を読んでいただいて、個人的にうなったのが、「地球にやさしい」的な考え方を木っ端みじんにしているところ。松井さんによると、人間は農耕文明に移ったことにより、地球内部の物質を意識的に取り出して消費する「人間圏」ともよべるステージをつくり、それによって「ヒトは人としてゴミを捨てる存在」になったわけで、「地球に優しい」という言い方は、そもそも環境問題をわかりにくくしており、さらには、地球が冷える原因となり、温室効果を減らしたのも、原始地球における海洋汚染ではないか、というわけだ。
 
 「LOHAS」なんて言葉を聞くとぞっとするぼくみたいな人間にとって、非常に痛快な論議だった(前も書いたことはあるが、吉本さんが語っていたように政治的に最悪なのは『元左翼のエコロジスト』だと思う)。

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