清和会研究『ゴットル 生活としての経済』
清和会研究『ゴットル 生活としての経済』吉田和夫、同文舘出版
小泉政権とそれに続くであろう福田あるいは安部の息子たちによる旧清和会政権のゴッドファーザーというか、グランドファーザーともいうべき岸信介に関する本を読んでいて、なるほどと思いつつ、ゾッとしたところがあった。それは、岸信介がナチスドイツの「経営生物学(Betriebsbiologie)」の理論的なバックボーンとなったゴットルの影響を受けていた、というか面白く本を読んだという証言だ。
ちゃんとしなければならないと思うのだが、岸信介じたい北一輝の影響下にあり、国家社会主義というか白色社会主義というか、統制経済による富の再分配を志向していた"理想主義者"的な側面もあり(もちろんFX選定など疑惑は事欠かなかったのは百も承知だが)、ゴットルその人もあまりにも「ナチスのゴットル」というイメージが強すぎて、企業活動を生活者に合わせて規制する、という、この本の題名にもなっている「生活としての経済」を強く主張していたという面を忘れてはならず、ゾンビでも見るような目で見てはいけないと思う。
ゴットルの本というのは読んだことはないが、引用されたところなどからもまがまがしいゴチック感覚あふれる文章が恐ろしい。しかも、研究史というの無視しているというか、ほとんど引用なども行わず、わかけのわからない造語壁もあり、読み進むのは困難らしい。
だが、吉田教授の読み解きを信頼すれば、その主張というのは「個人と構成体との関係が、生きた主体としての個人と、生きた主体としての構成体との関係として問われることになる。つまり、個人と構成体とが生きた関係において問われることになる」「この社会構成体の中でも、家庭はいうまでもなく時代を超えたわれわれの生活の根源であり、また、もともと種族・氏族・村落共同体など共同体から生まれた国家も国民共同体としては時代を超えた根源的なものであり、その意味で根源構成体(Urgebilde)としての性格をもつが、これに対して、企業などは独自の目的をもって構成されたそれぞれの時代に特有なものであり、その意味で目的構成体(Zweckgebilde)としての性格を持つ」「企業は本来、家庭から派生したものであり、それゆえもともと家庭に奉仕しなければならず、そのため企業は収益性を追求しつつ、品質のよい材を豊富かつ経済的に家庭に供給しなければならず、ここに企業は経営という技術の場をもつという訴えである」(p.80)というあたりに収斂される。
ぼくは国という共同体が価値源泉だとは思わないし、最終的には解体されるべきものだと思うから「包括構成体たる国家は、在内構成体たる企業に対して何らかの処置」(p.102)つまり規制を加える、しかもかなり強力なものを…というのは全く賛成できない。ただし、国家主義的な匂いに関しては拒絶するが、企業は家庭に奉仕しなければならない、という言い切りは魅力的だ。
思い切り上空まで持ち上げれば、岸、福田には、こうした方向でモダニズムを超えようとする意志があり、そうした主体として動こうとする傾斜を意識していたのかもしれない。
ただ、個人的にはどうしても、ゴットルは浪漫的有機的社会観の近代的形態にすぎないと批判した福井孝治教授のように(p.117)、ゴットル流の構成体理論はゴチックの不気味さを感じるけど。
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