『日本社会の歴史 上』
『日本社会の歴史 上』網野善彦、岩波新書
『官僚病の起源』でも触れたこの本について、97年の発売当初、ネット上で書いた文章が見つかったので、チラッとご紹介させていただきます。特に古代史の天皇制論議を概観したところ。
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網野善彦さんといえば、学問の世界からすると、日本中世史の専門家、ということなのかもしれませんが、ぼくみたいな素人からすれば『異形の王権』(平凡社)、『日本王国論』(共著、春秋社)など、独自の天皇制論を展開している学者さん、というイメージがあります。その網野さんですが、岩波新書から上中下3巻で『日本社会の歴史』(本体640円)を完結させました。ちょっと旧聞に属するかもしれませんが、ま、ご紹介。
網野さんの議論をチラッと概括してみます。
まず、3~4世紀にかけての倭国大乱の後、列島西部を統括したのは、近畿の首長連合を率いる大首長であった、と(それが九州から出てきたか、近畿から出てきたかはわらないにしても)。
宋に貢ぎ物を送った近畿の大王ワカタケルに代表される倭の五王(宋書)の時代の後、現在の福井、新潟、伊勢湾あたりの首長を背景にしたオホド王が、ワカタケルなどとは別な系統から現れます。これに対して、北九州の大首長であった磐井氏が戦いを挑んで敗れ、ここに近畿と北九州の首長同士の勢力バランスが、はっきりと近畿有利に傾いた、と。そして、近畿の首長たちは、支配体制を正当化するために、大王の系譜である「帝記」と歴史的な伝承である「旧辞」を書き、それが古事記や日本書紀の原形になっていった、と。
6世紀半ばにヤマト政権は、大王の后たちを大后、後継者を大兄と称するようになっていった、と。しかし、後継者争いが深刻化するなか、古代のシャーマン的な女性首長(トヨケミカシキヒメ)を大王にもってくることで、動揺を押さえようとせざるをえなくなるなど、さらに混乱は続き、結局、大化のクーデターによって中大兄が独裁的な権力を握ったが、白村江の敗戦によって大王の空白が7年も続くなどの異常な事態となっていった、と。668年にいたって、ようやく大王天智として即位したが、また後継者争いが起きて、ごくわずかな手勢だけで吉野を出て東国勢力を組織化し、全権力を握っているはずの大友側を打倒するという奇跡的な勝利を収めた大王天武に対して「大君は神に坐せば」と歌って仰ぎ称えるということになり、彼も現御神を宣言、勝利を願った伊勢神宮に感謝の意を表するために王女のひとりを斎王として派遣。これによって、伊勢神宮が大王の祖先をまつることに定まった、と。
そして天武の死後、もっとも嘱望されていた大津王子が大后ウノノサララと草壁王子によって自死に追い込まれてたという混乱は続いたものの、倭にかわる国号「日本」、大王にかわる称号「天皇」が制度的に定められ、ここに始めて日本国が列島に姿を現した、と。天皇という称号は、中国を意識しつつ、自らも小帝国の道を歩もうとした、この国家の支配者たちの立場を明確に示している、と。同時に、列島西部を中心としたヤマト政権が勢力を伸ばしていった背景には、当時としては、やはり進歩性があったからだ、という面も評価しなければならない、と。
こんなことが書かれていると思いますます。
ちなみに、後におくられた名前を記しますと、大王ワカタケルは雄略、オホド王は継体、トヨケミカシキヒメは推古、ウノノサララは持統となります。
ぼくなんかは「なかなか、古代史に対する見方が、整理されたかな」と思いました。
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なんてことを書いていたんだなぁ、と。
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