« 「焼き肉チャンピオン」 | Main | 『日本社会の歴史 上』 »

September 06, 2005

『官僚病の起源』

knryo_kishida

『官僚病の起源』岸田秀、新書館

 『靖国問題の精神分析』が面白かったので、復活のターニングポイントらしきこの本も読むことに。97年刊の本だが、思えば、岸田さんは、この頃から復調していたのかもしれない。

 薬害エイズなどの問題が沸騰していた時期に連載されていたもので、官僚組織は仲間内の利益を守るための自閉的共同体となっている、という論旨からスタート。では、なぜ、そうした組織が生まれるのかというと、それは日本人の精神構造に問題があるから、とw

 笑っちゃいけないのだが、ここまでなら、それまでの『ものぐさ精神分析』から一歩も出ていない。新しい視点は、日本人というのは、昔から鎖国したがる性癖を持っているのだ、という大きな仮説を立てたところ。証明しようもないことだが、岸田さんは、「日本というかヤマト政権は、おそらく百済の植民地だったのだろう」「その元の百済が新羅に破れたために、植民地だけが残って独立したのが日本の成り立ちではないか」と推論する。ここらへんは、『日本社会の歴史 上』網野善彦、岩波新書、1997などとも重なり合う部分も少なくない。

 ヤマト政権は白村江の戦いで百済の植民地として参戦したが、唐・新羅連合軍に惨敗したため、それらの勢力への対抗上、地域ごとに存在していた自閉的共同体が、おそらく最大勢力だったヤマト政権を中心に「日本」という国をつくらざるをえなくなったと。そして日本の起源が国外にあったという事実を覆い隠すために天孫降臨の神話をつくり上げ、アイデンティティを築いた、と。この自己欺瞞を正当化するために、日本は昔から朝鮮半島への出兵をくり返し行い、しかもそれを実行した豊臣秀吉やせっついた西郷隆盛などはなぜか人気がある、と。それは「失地回復」という日本人の潜在意識に働きかけているのだ、と。

 ヤマト政権は唐・新羅連合軍に対抗していったん鎖国したが、やはり新しい国づくりを学ぶために遣唐使を派遣するなど開国しなければならなくなる。律令制を好き勝手にいじくりまわして導入した後は、やっぱり自閉的な状態が好きなので遣唐使を廃止した、と。その後、ポルトガルやスペインがやってくると新しい文明に驚き素早く開国するが、やっぱりすぐに鎖国する、と。そして、ペリー、と。『ものぐさ精神分析』の黒船来航で強姦のように開国させられて以来、近代日本は内的自己と外的自己に引き裂かれているという説から一歩、前に出た感じ。つまり、建国の最初から分裂していたというわけだ。閉じていたい日本と、イヤイヤ開かざるを得ない日本に。

 イヤイヤ開かざるを得ないという気分があるから、いくら国際化とかいっても、日本人は英語をしゃべりたくない精神構造がある、というのも面白かった。だから日本人の英語は下手だし、英会話スクールなんてのはみんな確信犯的なサギだ、みたいな。

 あとは、フランスが実は独裁者が好き、というのも納得できる。それは200万人が死んだのに、実のところ、あまり成果らしい成果がなかったフランス革命に対する自信のなさが原因だという。

 とにかく証明のしようもない話だが、面白かった。新書館の編集とよほど呼吸があったんだろう。もっと前に読んでいてもよかった。

|

« 「焼き肉チャンピオン」 | Main | 『日本社会の歴史 上』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/5815495

Listed below are links to weblogs that reference 『官僚病の起源』:

» 嫉妬の時代 [依存症パチ打ち君のそれから]
嫉妬の時代 岸田秀・著 「積木くずし」は読んだこと無いのですが、「積木くずし」のことはこの本で知りました。父親がこんな本出してんじゃねえ、とかこんな本がベストセラーになってんなよ、当時の日本、とか思ってました。 で、2夜連続のドラマみました。娘さん亡く....... [Read More]

Tracked on September 09, 2005 at 07:47 PM

» 圭室諦成さんの『西郷隆盛』(岩波新書) [Nの読書日記]
 圭室諦成(たまむろたいじょう)さんの『西郷隆盛』(岩波新書)を読んだ。  この本は、今は絶版だ。  なぜかウチには、「1960年4月18日第1版発行」という初版本!がある。ただし、誰かが引いた傍線や私の引いた黄色いマーカーで、初版本の価値は失せている…(^_^... [Read More]

Tracked on September 10, 2005 at 12:34 PM

« 「焼き肉チャンピオン」 | Main | 『日本社会の歴史 上』 »