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September 26, 2005

FC東京と『監督』

 FC東京が勝てない。残り10試合を切った時点で、まだ降格争いをしている。25試合を戦って、まだ6勝10敗9分。勝数ではJ2とのプレーオフにまわる16位の位置にある大分の7勝よりも少ない。

 何をやっても勝てない、という感じがするのが一番怖い。選手全員が気合いを込めてサポーターに勝利を誓ったビラを配っても勝てなかった。高校からずっと左サイドでやってきたノリオを右で使っても長くは結果がでなかった。先発からスーパーサブ的に使い方を変えたナオはケガで長期離脱してしまった。4-2-3-1を4-4-2に変えてもダメ。元に戻してもダメ。

 ということで思い出した本がある。

 『本の雑誌30周年特大号』でも、ここ30年のベスト10に選ばれた海老沢泰久『監督』だ。ヤクルトの広岡監督が、チームを立て直しにかかるが、どうしても勝てない。そんな時に巨人でV9を達成した川上元監督を訪ねるシーンだ。

 「しかし、わたしもそういうときはあったよ」
 「どうしました?」
「いろいろやったよ、セオリーを無視して。だがその結果はさんざんだった。どうにもならなかった」
 「わたしもそうしました。結果は同じでした」
 (中略)
 「見えない影に脅かされるということはよくあるものだよ、どんな人間にだって一度や二度は必ずある。そして、わずかの聡明な人間だけが自滅をまぬがれるんだよ。たいていの人間はそこで自滅してしまう」
 「そうでしょうか?」
「見えるものに対してなら何とか手の打ちようがある。じっさいきみはつぎつぎすばらしい手を打ってきたじゃないか。しかし見えないものに対してどんな手が打てるのかね」
 (中略)
 「選手は-」
 と川上は言った。「本来、怠けものなんだよ。監督が一度でも絶望的になってみろ。すぐに伝染して、平気で試合を捨てるようになる。だが、いいか、だからといってバカにしてはいかん。彼らは潜在的な能力を持っていて、いつそれが爆発するか分からんのだ。そのときを辛抱強く待って、その能力を正しい方向に向けてやるのは監督の仕事なんだ」
 「まだ辛抱が足りないというんですか?」
 「きみはまちがったことはしてないんだ。だからそう考えるしかない。辛抱がまだ足りんのだよ」
 広岡はほとんど絶望的になった。
 (中略)
 「きみならできるよ」

 『監督』海老沢泰久。文春文庫、pp.271-274

ここからうまく回転して、破竹の連勝…というほどプロの世界は甘くはないと思うが、とにかくヒロミには頑張ってほしい。

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Comments

はじめまして。
いつも拝見しております。
何年か前に「監督」を読んだのを思い出してコメント入れさせていただきます。
本当におもしろい小説でした。
そのあと、海老沢泰久さんの作品を探して読みまくっていったのも懐かしい思い出です。

何年か前、原さんに辛抱できなかったフロントがいたチーム、
その後J2落ちして1年間苦労していましたよね。
我が東京はここまで辛抱してきたのだから、
最後には選手たちの潜在能力が爆発することを願ってやみません。
これは脳天気な願望でしょうか?

Posted by: わたなべ | September 27, 2005 at 03:10 PM

コメントありがとうございます。

>最後には選手たちの潜在能力が爆発することを願ってやみません。
>これは脳天気な願望でしょうか?

いやいや、ぼくも梶山、優太、ノリオが爆発してくれることを本当に祈ってますよ

かれら若い衆については特に川上の「選手は本来、怠けものなんだよ」でも「彼らは潜在的な能力を持っていて、いつそれが爆発するか分からんのだ」という言葉がピッタリくると思うんですよね。

Posted by: pata | September 27, 2005 at 03:51 PM

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