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September 24, 2005

清和会研究『回顧九十年』福田赳夫#3

[福田赳夫の財政]

 福田赳夫は岸信介に師事していたから、吉田自由党の中心人物だった池田勇人とは、なにかとぶつかることが多かった。岸退陣の後、首相に就いた池田は"低姿勢"を打ち出し、60年安保という政治の季節にやや疲れた国民に対して所得倍増政策を提示、高度経済成長の基礎をつくっていく。

 この高度経済成長-所得倍増計画に対して福田は「消費が盛んになりすぎて生産と需要に不均衡が生じてはしないか、ここが問題である。経済政策は、安定成長路線に切り替えるべきだ」という談話を政調会長として発表。もちろん池田は福田を党三役から降ろす。

 この間の世相を「昭和元禄」と評した言葉は有名だ。福田はこのほかにも「狂乱物価」など、実にうまい四文字熟語をつくっている。小泉首相ほど親しめる人柄ではなかったが、ワンワードポリティクスも実は、小泉首相が福田赳夫から受け継いだもののひとつではないか。

 また、福田はたびたび派閥解消を提唱している。これは岸信介が提唱していた「機関中心の党運営」(p.150)を受け継いだものだ。ここでも岸は小泉の祖父、福田は父という図式がみえるのではないか。ちなみに、首相だった当時、自民党本部の9階に「リバティー・クラブ」という脱派閥を目指すためのクラブ施設をつくったが、大量当選した小泉チルドレンたちが先日、党の研修会を受けたのは、この「リバティー・クラブ」だった。小泉首相には、なんらかの感慨があったのではないか。

 さらにいえば「池田さんはとにかく岸さんのやったことをみんなひっくり返すし、『低姿勢』などといった表現で暗に岸さんを批判する。先輩であり、功労者である岸さんの顔に泥を塗るようなやり方だ。けしからん、という感情的な要素があったことは否定できない」(p.152)としているが、これも選挙に落ちて野沢の福田邸で下足番をしている時に、ことごとく自分の師匠である福田赳夫が田中派+宏池会(歴代の派閥会長は池田勇人、大平正芳、宮澤喜一など)にやられっぱなしだったことを片時も忘れず、道路公団と郵便局という田中派と宏池会の票とカネの出所を"ぶっこわした"小泉首相のパトスに通じるものがあるのではないか。

 そして、田中派+宏池会が財政に関しては総じて積極的だったのに対し、福田財政は引き締めにウエイトを置いたものではないかと思う。もちろん、東京オリンピック後の「四十年不況」に対しては初めての赤字国債発行も行ったが、「景気の調整というところに読みがある」(p.169)と言う姿勢だったと思う。

 その後、福田は田中角栄との総裁選挙に敗れたが、列島改造ブームと第一次石油ショックによるインフレ、そして100億ドルを超す国際収支の赤字という危機的状況を乗り切るために、総需要管理政策をとる。

 福田はかなり控えめに語ってはいるが、この時の総需要管理政策によって、日本経済は第一次石油ショックを乗り切っただけでなく、第二次石油ショックの影響を先進諸国では唯一受けなかったことにより、アメリカに次ぐ経済大国の地位を安定的に確立したのだと思う。

 その後、首相にはなるが、たった二年間で田中派+宏池会によってその座を追われ、自民党は田中派とその後の経世界支配が続くことになる。

 政策通でもあるし、世の中に通る言葉ももっていたが、どこかひ弱いというか、泥臭くなれずに、政争では常に角栄にやられっぱなしだった印象の福田赳夫だが、そのDNAを強烈に受け継いだ小泉首相が旧田中派を事実上解体し「派閥解消による機関中心の党運営」「国民に負担を強いる緊縮財政」「自主憲法制定」という路線を易々と実行に移す姿をどう泉下から見つめているのだろうか。

 さて、次に『岸伸介回顧録』廣済堂出版も読んだので、しばらく、小泉首相のルーツを見つめ直す作業を続けていきたい。

最後に、宏池会が岸信介をどう見ていたか、ということに関しては『宮澤喜一回顧録』岩波書店で思い 出す箇所がある。それは安保騒動に対して「アイゼンハワーという人に来てもらって、セレモニーを派手にやろうと考えていた岸さんの持っている、それこそ回帰路線、おまけにこの人は戦争犯罪人容疑者でもあった。岸さんは決して軍部と腹を合わせてやった人ではないかもしれないけれど、そうであるような印象が、ああいう騒ぎになったんだと私は思うんですね」(p.190)と書いているところ。実に面白いな、と。

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