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August 29, 2005

『遙かなるケンブリッジ』

kembridge

『遙かなるケンブリッジ 一数学者のイギリス』藤原正彦、新潮文庫

 マイブームとなっている藤原正彦さんのエッセイというか、研究留学の紀行文。教育に追われて、なかなか集中して研究できない日々を送っていた筆者が、文部省の長期在外研究員として87年の8月から1年間、ケンブリッジで研究した日々を描いている。こんなところが研究者の素晴らしいところ。

 「主要な科学原理の半数が、人口六千万人足らずの国で生まれた、というのは異常なことである。これも、陰気というより陰惨な天候によるところ大ではないか、気持ちを外に向けるホルモンさえ出なければ、研究に長期間専念することはたやすい。私は窓の外の雨空を眺めながら、この天候は大きな味方だ、と一方的に思った」(p.50)。

 しかし、根っからのレイシストであるイギリス人の、しかもロウアークラスの師弟から受ける子供たちに対するイジメなどによって、「イギリスに住みながら、反英感情にとりつかれて生活する、というのは思ったより消耗することである」(p.192)という感情にとらわれがちになったが、子供たちに味方となってくれる友人が出来はじめる頃には、そうした感情も薄くなってくる。

 カレッジのひとつである「クイーンズ・カレッジ」で教える機会を得て、コレッジとは何か、カレッジにおける教育とは何かを知っていく、というあたりが本書のピークか。教育の中心はスーパーヴィジョンと呼ばれる少人数のグループ単位で教授から指導を受ける授業。学部の学生がこうした機会を得られるのは素晴らしいことだし、大講堂でいくら授業しても、そんなものは抜けていくだけしかないと思う。

 そんなケム川沿いに点在する昔ながらのコレッジにも、米国流のPublish or Perish原則が押し寄せてくる現実なども描かれているが、ハイテーブルとと呼ばれる一段高くなった教官用のテーブルでの食事など変わりようがないのかもしれない。

 しかし、フットボールのことが全く触れられていないイングランドに関する本を読んだのは久しぶりかも。

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