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June 28, 2005

『牢屋でやせるダイエット』

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『牢屋でやせるダイエット』中島らも、青春文庫

 タイトルは自作からのパクリ。『今夜すべてのバーで』の中で、主人公(らもさん)が、『病院でやせるダイエット』というハウツー本を書けばよかった、みたいなことをつぶやくシーンがあったと思う。らもさんは、03年2月に大麻取締法違反で逮捕され、21日間、拘置所で取り調べを受ける。その間に考えたことをまとめたのがこの本。同じ年に執行猶予付きの有罪判決を受けて「OK! I'm Free !」となるが、結局、翌04年7月に亡くなられてしまう。『心が雨漏りする日には』でも書いていたが、躁鬱病と不眠症で相当、キツイ薬を飲んでいて、まっすく歩けない状態になっていたこともあったというが、やはり逮捕と拘留のショックはあったのではないかと思えてならない。

 らもさんは高血圧症だったが逮捕直後に血圧を下げるクスリを貰えなかったことで、血圧が230以上にあがってしまったという。しかも、これは医師の治療を受けられた直後なので、ピーク時にはもっと上がっていた可能性が高く、本人曰く臨死体験に近い状態だったという。その時の医師によると血圧というのは「二百五十を超えて生きている人は見たことがないです。たいてい、それまでに死んでいます」(p.42)とのこと。

 獄中体験も面白おかしく書くのがらもさん流なのだが、不摂生な生活が獄中で改善され、インポテンツが直るというのも『今夜すべてのバーで』と同じパターンというか、もはや落語の名人のような語り口。

 そんな中で割とマジメに書いているのが時間に関する考察「人の一生は、あり余る時間との戦い」(p.112)。「楽しい時間はあっという間に過ぎる。退屈な時間はじりじりとしか進まない。時間を早く進ませるために、人は楽しさを求めるのではないか。これがおれのたどりついた答えだ」(p.116)、「生きているということは、すなわち時間という監獄の中に入れられているようなものではないか。時間から釈放されることはありえない。あるとすれば、それは死ぬということだけだ」(p.118)あたりはさえているな、と。

 もっとも、そうしたマニフェストをぶちあげたところで、牢獄の辛さは身に染みるようで、21日で出られた時にはホッとしているし、裁判で執行猶予がついてホッとして「OK! I'm Free !」とつぶやくわけだが、まあ、それは仕方ない。

 パイされた日、ケイバーでバカ話をして飲んだ後、勘定は「今日はいいわ、らもちゃん」ということで出所祝いでタダにしてもらったという話もなかなかいいなぁ。ちゃんとこういうシステムがちゃんと働いているというのは、なんか泣けてくる(p.164)。

 解説で宇梶剛士さんが、らもさんに最初に会った時「何を呑むの?すきなもん呑んだらええよ」と言ってくれたと書いているが、このいいまわしはいいなぁ。

 それにしても、これを読むと、ハイテンションだったということがわかる。

「日本全国民善男善女、ことに読者の皆さま、出版社、知人、友人、妻、子供、飼っている犬、猫、ハムスター、すべての動物たち、留置所、拘置所の悪党たち、伏しておわびを申し上げます。とにかくざんきの念に堪えません。」と深々と頭を下げた。
「大麻解放論者だが、法治国家の日本では吸わないと著作で公言していたのに、魔が差して大麻を吸ってしまいました。オランダ・アムステルダムで吸うべきでした。自身の法に照らして、アメリカ式に56億7000万年の刑に処します」

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