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April 01, 2005

『DNAから見た日本人』

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『DNAから見た日本人』斎藤成也、ちくま新書

 従来は頭骨計測など不確かな方法による推測でしか答えられなかった「日本人はどこから来たのか」という疑問に、「DNAの分析によって一応ここまでわかりました」という解答を一般読者向けに解説付きで教えてくれているのがこの本。

 研究者なのであまり断定的なことは書いていないが、pp.97-1008にかけて系統図付きで説明しているところでは、ざっくり言って大陸からの人類集団が朝鮮半島人と日本の縄文人とに分かれ、その縄文人がアイヌと日本列島本島人に分かれ、弥生時代に本島人が大陸からの混血が進むことによって、混血の度合いが少なかった沖縄人と系統的分かれていった、という定説となりつつある「アイヌ沖縄同系論」というか「二重構造説」を支持している。

 また、弥生人の骨を土甕に埋葬されていたものと、単に土坑に埋められていたものには、ミトコンドリアDNAに差があった、という議論も刺激的(p.125)。もっと研究が進み、明瞭なパターンが浮かび上がることが期待されている、とやや逃げて書いてはいるが、つまりは土甕に埋葬されていた支配階級の人骨がより現代本島人的で、単に土に埋められていた人骨は縄文的ということだろうか?

この斎藤教授はもちろん理系なのだが、文系の最後の砦みたいな言語学にまでズカズカ入ってきて、文系の言語学の論議は細かすぎると苦言を呈し「自然科学の研究者は、どうせ同じ人間だから」と大胆な議論をすべきとして、定量的手法を紹介しているのがコワイ(p.155)。定量的手法とは基本単語100語の類似性とか、子音の一致、アクセントの型などだが、少し大胆すぎというか、それはちょっと楽天的だと思う。

 1個の細胞にあるDNAだけでも全長は1mを超え、60兆の細胞からなっている人間は太陽系の直径に匹敵する60兆メートルのDNAを持っているとか、人類の祖先は2回にわたって「出アフリカ」を行い、1回目は絶滅しているとか、でももしかしたら絶滅したネアンデルタール人のDNAをほんの少しでも持つ現代人もいる可能性があるとか、X染色体を2本持つ女性はDNAの総量が男性より多いだけでなく、1本のX染色体しかもたない男性は遺伝子の突然変異による病気にかかりやすい(女性は1本が突然変異しても、もう片方のX染色体には普通の遺伝子が保持される)などの基礎的情報もためになる。

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