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March 01, 2005

『シナプスが人格をつくる』

synaptic_self

『シナプスが人格をつくる』ジョゼフ・ルドゥー、みすず書房

 これはもう、読んだもん勝ちの本。前書の『エモーショナル・ブレイン 情動の脳科学』東京大学出版会も素早く頼んでしまった。

 どういうことが書いてあるかというと、ぼくたちひとりひとりの人格というのはシナプス接続パターンよって形成されているということ。それだけ。

 シナプスとはニューロンとニューロンの間にある隙間。「ニューロンが活性化されると、電気的インパルスがその神経繊維を流れ、その終末から神経伝達物質と呼ばれる化学物質が放出される」(p.3)。脳の活動はほとんどがこのシナプス伝達であり、過去のシナプス伝達によって書き込まれた情報が呼び起こされることで知覚・記憶・情動などのプロセスが生まれる。

 例えば、ある人にとって犬の記憶が子供の頃に噛まれた記憶と抜きがたく接続されていたら、大きな犬が近寄ってきたらすくみあがったり、恐怖を味わうだろう。一方、かわいいネコとの思い出があれば、それは…という具合にシナプス結合のパターンによって、その人がどういう人間であるか、ということが決まってくるわけだ。しかも、ありがたいことに、こうした記憶パターンは固定されたものではなく、今日の経験がシナプスに書き込まれることによって明日のシステム(つまり私たちの人格)が大きく変わってくるという可塑的で動的なシステムになっている-ということがルドゥーの言いたいことだ。

 ペットのDNAを保存して、死んでしまった後に、それを使ってクローンをつくる、ということが実際にサービスとして行われているが、ルドゥーの立場からすれば、それはクローンではあり得ないということになる。だって、同じDNAを持っていたとしても、まったく同じ経験をさせないかぎり、同じシナプス結合はされ得ないわけで、性格まで完全に似てくるなんてことはどだいムリだからだ。

 最初と最後に同じことが書かれていて、500頁を超える本文と注によって、それを証明していく、というとてつもない試みがなされているのがこの本の構造。一時期、複雑系なんていう怪しげな概念がもとはやされ(結局、キチンと説明できないということしか言ってないと思う)、対象を要素に分割・還元して分析するという要素還元主義は古いなんてことがまことしやかに書かれていたりしたが、ルドゥーは徹底的な要素還元主義の立場から、人格とは何か、脳の働きとは何かというBig Questionに答えている。

 ルドゥーによると、脳内では無意識の活動が意識されている活動よりも遙かに大きく、視覚、聴覚などからもたらされた情報はワーキングメモリーなどにいったん収束され、脳内の化学物質の放出によってシナプスが次々と〝発火〟していき、意識に基づいたある行為につながるという、実も蓋もない話が延々と続く。

 そして考え、情動、モーティベーションという「心の三部作がばらばらになると、自己が崩壊しはじめ、精神の健康が損なわれていくだろう。統合失調症に見られるように、考えが情動とモティベーションから分離すると、人格が激変しかねない。不安障害やうつ病のように情動が暴走すると、以前とは違った人になってしまう。モーティベーションが薬物依存症の奴隷になってしまうと、生活の情動的側面と知的側面も損なわれる」(p.478)と、精神病に関してもキレイに説明してしまう。もう「心のうぶ毛」(by中井久夫先生)なんていってられないわけだ。

 とにかく、ぼくが紹介するには荷が重すぎるけど、とてつもないことがアッケラカンと書かれているということだけはなんとなくわかっていただけたのではないかと思う。

 自分でも忘れないように、もうちょっと細かく、内容については書いていきたい。

 とにかく、このブログを読んでくれている人には、こう言いたい「読んだもん勝ちだよ」と。

 昨年3月から初めたこのブログは読書日記みたいな感じでやってきたけど、この間に読んだ中では、内容を完全に理解できてないかもしれないので、最もすばらしいとは自信を持ってはいえないけど、勘違いも許していただくと、最も衝撃を受けた本だ。

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Comments

おもろそう。
明日、後藤さんの本と一緒に買ってみるかな。

Posted by: マグロ | March 05, 2005 at 01:04 AM

お久しぶりです。元ABCです。
pataさんにそこまで言われたら読むしかないでしょ、
ってことで購入します。楽しみです。勝ちます。

小田中さんの新刊読みました?
前著ほどのインパクトはなかったかなー。
今月は小田中作品をもう一度じっくり読もうかと
思います。前は図書館で借りたけど、今回は購入。

市井文学ってところから吉本さんの新刊が出たけど
何処にも見当たらず・・・。ABCにはあるのかな。

Posted by: yohan | March 05, 2005 at 01:49 AM

マグロさんもyohanさんも、ぜひ!

小田中さんの新作って『フランス7つの謎』ですか!いやー、知らなかったです。そうか、小田中さんはの専攻はフランス社会経済史だったんですねぇ。今度、読んでみます!

吉本さんの新刊の情報もサンクスです。Wさんにとりよせてもらいます。

Posted by: pata | March 05, 2005 at 07:03 AM

yohanさん

ABCで市井文学からとってもらおうとしたらダメでした…どうも一般売りはやってないみたいです

http://www.shiseibungaku.com/


ということで、ここから注文しました。
吉本隆明・著「中学生のための社会科」

あと小田中さんの『フランス7つの謎』読みました!面白かった!後で感想書きます。

Posted by: pata | March 09, 2005 at 02:25 PM

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