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February 02, 2005

『高齢者グループリビング COCO湘南台』

coco_shounandai
『高齢者グループリビング「COCO湘南台」 10人10色の虹のマーチ』西条節子

かなり遠距離の目標にはなるのだが、とりあえず高齢者福祉に関する勉強でも今年からやりはじめようと本を探しに新宿の紀伊国屋で粘ってみたことがあったのだが、ざっくり見渡した限りでは、高齢者福祉のプロになろうとする人向けの本か、厚生省のお役人さんが書いたような本や、低所得者層向けの本、あるいは宗教がかったような本ばかりみたいな印象を受けた。

 つまり、サプライヤーサイドからの本ばっかり。役人さんは権限をチラつかせ、雇用不安の中で喰いっぱぐれがない職業みたいな感じで福祉関係の仕事の資格をとろうみたいな感じや、宗教団体が不幸せな人に安心を与えるみたいな文脈で語られているというか。とにかく、サービスを受ける高齢者の側からの情報発信というのが目立たなかった。あっても、いかに心豊かに暮らすかみたいな本ね。老後は哲学じゃ切り抜けられないでしょ。もっと、具体的にやらんとね。老後にとって哲学や宗教は十分条件ではあるけれど、必要条件が整ってなさすぎ、と思うし。

 福祉住環境コーディネーターの資格本が「高齢者に対する"サービス業"」というような視点がややあるかな、みたいな感じは受けたが、圧倒的に感じられるのは、福祉とは上から与えるもので、そこにあるのはサービスではなく"仕様書"のみ、みたいな印象だった。

 世の福祉関係者は、どちらかといえばリベラルというかレフトウィングから触手を伸ばしてくる人たちが多いわけで、そうした中でのオールドタイプの筆者たちは、いかに画一的なサービスを効率的にコストをかけずに行うかみたいなことばかりに気をかけているんじゃないだろうかなんて感じ。広く浅く、みたいな。でも、自分が広く浅く受ける立場になったらヤなんじゃないのか。

 しかし、一方で超高級老人ホームみたいなところも、契約書の細かな字のところに何が書いてあるかわからず、結局は営利目的でやっているから最後に本当に拠り所になるかどうかというのも疑問だ(1億円ぐらいポンと払える人は除いて)。

 こんな中で、唯一、ピカッと光ったのがこの本。もっとも、知ったのはムックのような本の中でだが、ざっくり書くと、市議会議員だった西条節子さんが、悲惨さを絵に描いて額縁に入れて床の間に飾ってスポットライトを浴びせたおしたような老人ホームにあきれ(そこの施設は結局、閉鎖)、自分の終の棲家となる理想の施設はどんなものがいいのかという問題を研究会を立ち上げて考え抜き、そして実現してしまった報告だ。

 そこでは完全パリアフリーでトイレ付きの25㎡の個室に、広い共有スペース(アトリエ、食堂)などが自由に使えて入居費370万円、月々13万6000円で昼夜2食付という生活が実現できている。

 もちろん多少は理想的に描いてはいるだろうが、抹香臭くなく、貧乏たらしくなく、もちろん悲惨でもない、自立した個人の老後の生活があるように思える。

 建築面積が150坪を超えると耐火住宅にしなくてはならず、建設費が膨大になるので、木造の良さを生かすためにも10人の個室を若干狭くしたことや、厚生省が考えているグループリビングは9人以下で、10人以上となると有料老人ホームになるなどの情報は実際に建てた者でなければ得られないものだと思う。

 そして国や自治体からうまくカネを出させる方法や(今や藤沢市の予算にはCOCO湘南台関連のものが独立して計上されているという)、ボランティアグループを組織化する必要性などについても書かれている。

 結局「福祉 for Myself」という発想で、こういう西條さんのような人の実践がなければ、現実は変わっていかないんだと思う。高齢者グループリビングみたいなことを考えている方には必読書だろう。巻末の資料、提案書、契約書なども貴重。

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