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January 08, 2005

『福野礼一郎の宇宙 甲』福野礼一郎、双葉社

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『福野礼一郎の宇宙 甲』福野礼一郎、双葉社

 自動車評論家である福野礼一郎さんの、批評のモノサシみたいなものを、それだけを語ったような本。しかも、上下2巻。普通、こんな本は出してもらえない。普段から、クルマをネタに豪快にタンカを切りつつ自分を語るという小林秀雄的な伝統(?)に沿った評論を書きまくっている福野氏だが、機械工学というか製造技術の集積としてクルマを見るという、その拠って立つバックグラウンドを単純明快にさらけ出している。

 最初に取り上げられるのは、大韓航空機撃墜事件で悪名をはせた旧ソ連の攻撃機スホーイ15。ここで豊富なイラスト図解で語られるトピックスは、なぜ超音速機の主翼デザインがデルタ型になっていったか?という問題。それは、従来型の平行四辺形的な主翼だと、操縦桿を引いた時に主翼全体がねじりモーメントによって反りあがり、下降どころか上昇してしまうというエルロンリバーサルという現象が発生を回避するため。こうしたねじりモーメントが発生しないように、付け根の部分から最先端の部分まで胴体から直角に線が伸びるような三角形の後退翼になった、というもの。

 次に、超音速機にはなぜ双発タイプのパッケージが増えたかという問題。それはジェットエンジンの推進力は流入量と比例するが、それは空気の取り入れ口(エアーインテーク)の面積の大きさ(2乗)とジェットエンジンに体積(3乗)に比例すると単純化でき、それならば、大型1発よりも小型2発の方が効率がいい、ということなになるから。というようなことが延々とイラスト付きで説明される。

 そしてモノのカタチは断面の集積だという設計のイロハや、全ての部品ひとつひとつに設計図というものが存在するという話、空間を移動する際には重心からのX軸、Y軸、Z軸の運動によって説明できるなどの話も続く。

 この人、高校の物理の先生とかやらせたら、生徒は喜ぶだろうな、と思った。

 ただし、クルマだけでなく、モデルガン、プラモデル、時計など様々なモノを"延長感覚"で語っているから、ボロも見えてくる。

 ダメだな、と思ったのがB&Oのステレオを褒めているところ。もちろん、デザインはいいけど、福野さんは、基本的に音楽をあまり聴いていないんじゃないかと思った。ピュアとまでいかなくても、少しでもオーディオに興味があり、秋葉などで聴き比べをしたことがあれば、B&Oは褒められない。デザインはいいけどね。特に下巻の『乙』では音もイイみたいなこと書いてしまっているし…。そこだけちょっとガッカリ。でも、まあライター家業なら、どんな注文も受けなきゃならないし、しょうがない部分はあると思うけど。

 あまり積極的にホメるようなことがなかったような書き方だけど、タミヤに関する文章なんかはさすがに良かった。以下、アレンジした引用で終わりにします。

 「当時のプラモデル屋さんの品ぞろえの中にあってこいつの存在感はもう一頭他を抜きまくっていましたね。そこだけエアコン入っているてのか日本じゃねえっていうのか。タミヤの箱を手に取る瞬間というのは例えていえば「2001年宇宙の旅」でモノリスに触る猿。
 箱を開けるとね。
 めちゃめちゃクールですよ。めっちゃめっちゃクール。
 そんなものはこの世になかった。タミヤのプラモ以外にホントこの世に存在しなかった。この当時ガキであった自分はタミヤの箱を抱えながらインダストリアルデザインとグラフィックアートに彩られたコーポレートアイデンティティの世界を感動して見つめていたんだな今に思えば。
 タミヤはカタログ作りでも日本で突出していました。ソニーよりトヨタより十数年進んでいた。
 誰もこのことを言わないのは本当に不思議なんですが、タミヤのプラモデル、あのカタログ、その企業イメージ、これはもう1960年代の奇跡だったと思います。」
(「タミヤのプラモデル」pp.172-173をアレンジ)

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