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November 25, 2004

『シカゴ育ち』

『シカゴ育ち』スチュアート・ダイベック、柴田元幸訳、白水Uブックス

 『ナイン・インタビューズ』を読んで、個人的に一番、高感度が高かったのがスチュアート・ダイベック。「シカゴ出の青二才の書いたものを読んでくれる読者が日本にいると思うと本当に感動する」みたいな。この『シカゴ育ち』は7本の短篇と7本の掌篇からなる。

 例えば「冬のショパン」。

 アパートの上の階から漏れてくるピアノに耳を澄ましていた少年。そのピアノの主はやがて音楽大生となるが、どうやら黒人の子を妊娠して家に急遽、家に戻る。階段で言葉を交わす二人。

「あなたが小さかったころ、夜になると時どき、あなたがわあわあ泣いているのが聞こえたわ。たぶん、私には聞こえた声が、あなたのママには聞こえなかったのね。音が上に伝わってきたのよ」
「僕の泣き声で起きちゃったの?」
「それは心配いらないわ。私、もともとすごく眠りが浅いの。雪が降っても目がさめちゃうから」(p.16)

少年の住む階には、元ポーランドの将校という叔父が尾羽散らしてまいこんでくる。凍傷となった足を暖めるために、足湯にポトンと発泡する薬剤を入れて休む叔父。上の階から聞こえてくるのはショパン。弾いている曲が何かを少年は、その叔父から教えてもらう。

 やがて妊娠した娘は、ショパンを弾けるだけ弾き、ひとりで家を出て子供を生む。叔父もやや元気を取り戻して放浪の旅に出そうだ。そして、最後になって、誰が泣いていたがわかる。そして沈黙に耳を澄ます。

 こんな淡々とした話が続く短編集。

 忙しい人は「冬のショパン」と「ペット・ミルク」だけでも、ぜひ。

 柴田元幸さんは後書きで「いままで訳した本のなかでいちばん好きな本を選ぶとしたら、この『シカゴ育ち』だと思う」と書いている。

the_coast_of_chicago.jpg

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