朝日の書評欄
読みたい本が一冊もないときもあれば、今日みたいに、実際に読んだ本、読んでいる本、読みたい本とかなりダブる日もある。それが朝日の書評欄。
橋爪大三郎さんは『私・今・そして神』永井均、講談社現代新書を紹介しているが、これは「読んじまったけど、どうやって紹介しようか」と実は悩んでいる本。橋爪さんがやっているのは、噛み砕いて説明するというよりも(もちろん紙幅の問題もあるが)、喰いつきやすいところをパパッと並べているだけ。本当に読んでもらいたい本なら、逆に、こんなんでもいいのかな、と考える。
同じく橋爪さんが紹介していた『武士道の逆襲』菅野覚明、講談社現代新書は刺激的。なにせ「本物の武士道は、(敵に首実験をさせないために)負け戦で大将が死ねば、額から縦に切りつけ、小便をかけて踏みつけて頭の皮を剥ぐといった、血みどろの作法だった」という。本書はそれが国民道徳としての明治武士道に変形していく様を描いているらしい。両書ともカバーが簡略化された講談社現代新書だというのが講談社の決意のあらわれか。
橋爪さんのは「カジュアル読書」の頁に紹介されているが、ここの頁だけでも後2冊の紹介にビビッときた。『日韓ワールドカップの覚書』川端康生、講談社は、単にドラマ化されたネタ本だと思っていたが、書評を読むとマトモそうなので、後で買うことにする。マンガ『PLUTO』浦沢直樹、小学館も面白そう。
次の見開きでも『神谷美恵子の世界』みすず書房編集部、『私の神保町』紀田順一郎、晶文社は読もうか読むまいか悩んでいた本。、第一次世界大戦の中東を混乱させ、今も引きずる問題を描いた『平和を破滅させた和平―中東問題の始まり(1914‐1922)』フロムキン、紀伊国屋書店は米国の学者らしい、論文マニュアルに沿った書きまくり大部なのでいまさら読もうとも思わなかったのだが、やっぱりそれほど新味はなさそうだ。
買おうと思ったのは『いとしこいし 漫才の世界』喜味こいし、戸田学、岩波書店。「いとこい」漫才の素晴らしさを深く味わいたくなった。
本来は読書欄の最初となる頁だが、新聞は後ろから読むので、紹介も最後。ここでメインの『グローバル化で世界はどう変わるか ガバナンスへの挑戦と展望』ナイ、ドナヒュー、英治出版は「こんなもんだろうな」と思ってた内容が要約されていたので、読んだ気にさせてくれたのがありがたい。もっとも論説委員による手馴れすぎるまとめなのがかえって心配だが。
『人口減少経済の新しい公式』松谷明彦、日本経済新聞社がベストセラーになっているとは知らなかった。各国では十数年続いた第二次世界大戦後のベビーブームが日本では優生保護法によって数年で終了し、それが高い貯蓄率を生み、産業投資にまわされていった-という仮説は面白い。
以上、今日の朝日の読書欄4頁でした。さすがに読書の秋、ということなんだろうか。
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Comments
はじめまして、涼 と言います。
書籍・雑誌の新着案内から来ました。
∥いとしこいし 漫才の世界
朝刊の書評をみて、さっそく注文しようと思っていたのを、今思い出して、さっそく注文しました。24時間内発送ということで、楽しみです。
思い出させて頂いて、有り難うございました。
Posted by: 涼 | October 31, 2004 07:13 PM
涼さん、はじめまして!
>書籍・雑誌の新着案内から来ました。
おお、そうでしたか。
「いとしこいし」素晴らしい芸だったですよね。ぼくはこの本、六本木ABCで買おうと思っています。
Posted by: pata | October 31, 2004 09:19 PM
TB返し、ありがとうございました。
かなりの濫読家なのですね、すばらしい。
今後、参考にさせていただきたいと思います。
Posted by: 六甲びと | November 25, 2004 02:09 PM
>濫読家なのですね
先日、うすーく関係のありそうな、なさそうな研究会の人から見つかった時も「読書計画は持ってないようだね」といわれました…
Posted by: pata | November 25, 2004 02:41 PM