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October 02, 2004

『スタジアムの神と悪魔』

『スタジアムの神と悪魔』エドゥアルド・ガレアーノ、飯島みどり訳、みすず書房

98年に邦訳が出ていたが、まだ読んでいなかった。ABCがお休みしている間にAmazonから購入し、ようやく読み終えた。

なにせ、みすず書房が出したサッカー本である。格調高くないハズはない。ラテンアメリカ文学には不案内なのだが、とにかく、けっこう作家としても有名な人らしい。なにせ邦訳されている『収奪された大地――ラテンアメリカの500年』は藤原書店刊、『火の記憶』はみすず書房刊というのだから。そんな文学者がインプロビゼーションをきかせて、ペンが滑るまま、短いのも比較的長いのも含めて繰り広げる151話のカーニバルのようなエッセイ集。それがこの本。

「レフェリー(アルビトロ)とは、定義に従えば恣意(アルビトラリオ)をいう」(p.13)という一節だけで引き込まれる。カミュがゴール・キーパーだったということも教えてもらったし(「およそモラルというものについて、私はそのすべてをサッカーから学んだ」という述懐は今のサッカー界への警鐘だ p.231)一読してラテンアメリカのサッカーシーンの情報にいかに乏しいか、ということも思い知らされる。

中でも気に入ったのは1950年のワールドカップでイングランドを破ったスペインの監督が、フランコ総統に対して「閣下、われわれは不実なるブリテン(アルビオン)を打ち破りました」と1588年の無敵艦隊のあだ討ちを無線で報告した「サラのゴール」(p.117)。なんともはや、という…(ちなみに、稲本の移籍したイングランドのクラブはウエストブロミッチ・アルビオンというご大層な名前のチームだ)。

1958年のワールドカップで「ガリンシャはペナルティ・エリアに押し入り、ディフェンスをひとりひっくり返し、ひとりまたひとりと追撃をかわした。さらにはゴールキーパーまでもよけたとき、ゴールライン上にまたひとり選手が現れた。ガリンシャが行くぞ!いややめたぞと振り回し、隅に空シュートしてみせたので、気の毒な相手は鼻からポストに激突した。そのときキーパーが再び邪魔に入った。ガリンシャは敵の股間にボールを通し、まんまとアーチへ流し込んだ」という「ガリンシャのゴール」は動く映像があったら見てみたい!(p.129)

1966年にリベラもマッツォーラもいたイタリアを破ったゴールを決めた北朝鮮のパクは歯科医師だったというも知らなかったし(p.157)、ジーコが天皇杯で東北電力相手にあげた逆向きのオーバーヘッドを称える章を設けているのにも驚いた(p.243「ジーコのゴール」)。

原題は「光と影のフットボール」。光は南側で、影は欧米という図式のあまりにもクリアカットさ加減にはやや滅入る部分もあるが…。
stadium_kami_akuma.jpg

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