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October 02, 2004

『源にふれろ』

『源にふれろ』ケム・ナン、大久保寛訳
 毎年、夏になると読んでいた本がこれだった。

 どうしようもないプア・ホワイトの家に生まれて孤児のように育った姉弟が、その街を抜け出し、カルフォルニアのハンティントン・ビーチで、妙なカルトにつかまる、というのがおおまかなあらすじだが、そんなことはどうでもよくて、主人公であるアイクが遭遇するサーフィンの圧倒的な美しさ(誰もやってこないプライベートビーチに忍び込み、酸っぱいオレンジジュースをガブ飲みしてから眠る昼寝なども含めて-ああ、何度、このシーンを読み直したことか!)、どうやっても理解できない頭のネジが緩んだ大人たちの殺し合い、気持ちだけでは抑えられない性の衝動、それをつつんでくれるような出会いなどが、奇跡的に、見事に描かれている。

 ケム・ナンに関して知っていることといえば、この小説と、2作目がやはりカルト宗教を扱っているものだという訳者あとがきの情報だけ。日本ではその2作目も翻訳されなかったし、86年にハードカバーで出版されたこの本は、どういう事情なのか20年ちかく文庫化されずにいた。まあ、おそらく版元の問題だと思うが、それはおいていて、Tapping the Saurce(源にふれろ)というメッセージは、ずっとこの本を読んだ人の中に残っていたんだと思う。

 ABCの文庫担当のMさんも、当たり前のようにポップをつくっている。

 いつもは夏に読んでいたけど、こんな時期のほうがいいかもしれない。
tapping_the_saurce.jpg

 幼い姉が居候先の親戚の親父さんにいたずらされそうになって、翌日、その親父さんが、銃の扱い方を教えて、次にオレが同じようなことをやったら撃ち殺せという場面なんかは、やたらリアリティというかプア・ホワイトのどうしようもない暗さ、閉塞感を感じた。

 姉と近親相姦的な関係になってしまったことで、うまくいかなくなったアイクが、出会った少女に励まされながらことに及ぶ場面とか、もちろん一番美しいのはサーフィン場面なんだけど、とにかく、すべのページがキラキラ光っているようなイメージの小説。

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Comments

「源にふれろ」とはなつかしい。
同じ頃ジェームズ・クラムリーの「さらば甘き口づけ」も思い出すのぉ。

Posted by: ken | October 02, 2004 at 11:11 AM

しかし、『源にふれろ』が幻の青春小説の傑作に祭り上げられていたというのを知ったのは最近。

単行本も絶版になっていたし、なんでハヤカワは20年近くも文庫化しなかったんだろう…。

ケチッて版権でも切らしていたのかなw

Posted by: pata | October 02, 2004 at 11:58 AM

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