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October 10, 2004

『ベルリン陥落 1945』その1

『ベルリン陥落 1945』アントニー ビーヴァー、川上洸訳、白水社
 非常に疲れる読書だった。しかし、いろいろ考えさせられたので、何回かに分けて書きたい。それにしても、完全に読書スピードが狂わされるほどの暴力の描写がすさまじい。

 第二次大戦における旧ソ連によるドイツ敗北というテーマで思い浮かぶのは、ぼくの場合、映画。まず印象に残っているのが『ヨーロッパの解放』ユーリー・オーゼロフ監督。これは旧ソ連が70年代前半にカネに糸目をつけずにつくった国策プロパガンダ映画。当時はタミヤの1/35スケールの戦車づくりに燃えていたせいもあって、一生懸命観にいった記憶がある。結構、T34の機能美あふれる姿は好きだったので、第一作の『クルスク大戦車戦/ドニエプル渡河大作戦』にT34が大量に出てきて川を渡ったりする場面や、縦列で走行している場面の空撮なんかには興奮した。ただ、敵方であるドイツの戦車はモロ、T34ベースのハリボテだったのにはガッカリしたが。

 その三作目『オーデル河大突破作戦/ベルリン大攻防戦』でベルリン陥落は描かれている。市内に突入した戦車兵がツォー(動物園)に迷い込んで、珍しい動物を見て興奮しているうちに狙撃兵に撃たれてしまう場面や、ヒトラーがピストル自殺できず、シアン化合物による服毒自殺を選んだので、外で待機していたドイツの司令官が部下に「軍人らしくピストル自殺したようにしておけ」と命ずる場面なんかが印象に残っている。最後に物凄い死傷者の数が画面に映し出されて「これだけの犠牲者を出して解放してやったんだぞゴルァ!」と言いたかったんだろうが、まあ、それは感謝されていないことの裏返しなんだろうなと子供心にも思ったりした。

 もうひとつは『プリキの太鼓』フォルカー・シュレンドルフ監督。舞台はポーランドのダンツィヒ。ドイツに侵略されたポーランドはソ連によって解放されるが、やってきた赤軍の兵士たちは、地下室に隠れていた主人公オスカル一家を発見すると父を射殺、女たちをレイプしまくる、というのがラストに近い場面だった。ソ連兵がドイツを蹴散らしてヨーロッパを解放するにつれ、その地では大規模なレイプが行われていた、というのは、本の世界などは語られてはいたが、これほどまでに露骨に描かれたのは初めてだったろうと思う。しかもこの映画がつくられたのは1978年。まだ東欧世界というかワルシャワ条約機構に属していたポーランドでロケが行われた映画だということにも驚かされた記憶がある。

 まあ、その程度のイメージしかないまま、この本を読んでいったのだが、正直、650頁という厚さもさることながら、ドイツ人とロシア人という長年、殺し合いを続けてきた民族同士のむき出しの暴力には気が滅入った。両方とも戦争捕虜の半分以上は厳しい労働や満足な食事を与えないことで死なせているし、互いに占領地域での民間人に対する処刑、女性へのレイプなどの報復の連鎖を繰り返す。ドイツはスターリングラードの攻防後、モスクワに迫るまでの時期に行った暴力がすさまじいし、逆に旧ソ連は、占領されたスターリングラードを逆包囲してから陥落させ、東欧から一気にドイツ領土内に攻め込んでからの報復がすさまじい。しかも、互いに自国政府への批判を認めない全体主義国家だったので、敵に対するだけでなく自国民に対する処刑、投獄なども大量に行うという念の入れぶり。

 考えてみれば、ドイツ騎士修道会を撃退した「アレクサンドル・ネフスキー」の時代から、ドイツとロシアはすさまじい殺し合いをしてきたわけで、それが第一次大戦やスターリングラードを経て、暴発したのがベルリン陥落のときだったのかもしれない。これも映画の話にはなるが、エイゼンシュテインの『アレクサンドル・ネフスキー』に描かれているドイツ騎士修道会の悪人っぷりはすさまじい。ほぼ悪魔のようなその目つきは一度観たら忘れられない怖さだ。これは1938年のソ連映画。ナチスが政権を握ったのが1933年なので、スターリンがドイツを仮想敵国として考えたプロパガンダ映画であることは間違いなのだが(その後、不可侵条約を結んだりはするが)、逆にこんな映画みせたら、ドイツ人怖いというトラウマが残るんじゃないかといらぬ心配がおきるほどの描きっぷりだった記憶がある(もちろん最後はネヴァ河のアレクサンドルことアレクサンドル・ネフスキーはドイツ騎士修道会を凍てついたチュード湖で撃退したのだが)。

 ソ連崩壊前後からドイツとロシアは和解をみせはじめているが、その動きが本物であるならば、もう奇跡に近いようなことなんだと思う。

 ということで、まったく本論には入れないのだが、今日は、ここまで…。
berin_fall_1945.jpg

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