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September 16, 2004

『ルー・リード詩集』

『ルー・リード詩集』河出書房、1992
こちらでハヴェルの言葉をちょっと読んだもので、以前に書いたものを、チラッとご紹介しようと思い、HDの片隅からファイルを探してきました。詩集と銘打っているだけあって、もちろん、詩もすばらしいけど(オリジナルの英語の歌詞もついている)、この本の白眉はチェコの大統領ヴァーツラフ・ハヴェルとの話。ルー・リードは民主化直後のチェコで、ベルベット・アンダーグラウンド(VU)の大ファンだった文人大統領のハヴェルに関するレポをものにしているんです。題して「正しいことをやる」(pp.211-236)

 共産党政権下で投獄された劇作家が大統領になったというのがハヴェル。ルーのインタビューに応えてハヴェルは「私たちのこの革命は他のすべての面とは別に音楽的な面をもっています。特に音楽的な背景を持つ革命」と語ります。そう、大昔は音楽でなんとか変えられるかもしれないということが、実際に信じられていたんだけど、ロックそのものを禁じられていた60年代のチェコでは、そうしたことがもっと真剣に信じられていたんですね。そうした当時のことをハヴェルはルーは語り合った後、今夜、私のためにクラブで演奏してくれないかと尋ねます。ルーは私はプライベートな人間だから(状況をコントロールしたいし、このインタビューの前にはマンデラ・コンサートでひどい目にあっていたし)、やりたくないと答えんですが、大統領のお誘いだがら、クラブには行くんですね。

 そこでルーが聞いた音楽は…。

「私は突然曲に聞き覚えがあることに気づいた。彼らはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌を演奏していた」「一夜漬けの練習でできるものではなかった」「編曲、強調されたライン、間のとりかた、まるで時間を遡って自分自身の演奏を聞きに戻ったような感じ」

 なぜか60年代のチェコでは、VUが大人気で、ハヴェルはルーの詩の翻訳私本までつくっていたんですね。もちろん、何かを感じたルーはそこで歌い、セッションを堪能します。演奏が終ると、バンドのメンバーがルーの許にやってきたのですが、そこで聞いた話というのは…。

「私(ルー)の音楽を演奏して刑務所に入っていた者もいた。刑務所に入っていた時、自分を勇気づけ慰めるために私の歌詞を暗唱していたと大勢が言った。中には、私が15年前に書いたエッセイの中の一行『誰もが音楽のために死ぬべきだ』を覚えている者もいた」

 「それは私にはとてつもない夢で私の最も遠大な期待をはるかに越えるものだった」「ヴェルヴェットと私自身のアルバムは表現の自由は、好きなことについて好きなように書く自由についてのものだった」

 最後には「そして、その音楽はここチェコスロバキアに安住の地を見いだした」とやや状況に酔っ払ったようなルーらしからぬ文章も書いているのですが、感動は伝わってきます。そして、ルーはハヴェルから200冊しかつくられなかった私家本の翻訳詩集(もちろんハヴェルが訳したルーの詩)をもらって、ローマ教皇の訪問を横目で見ながらチェコを旅立ちます。(pp.232-235)

 文人政治家というか理想的な政治家を描いた文章としては、カート・ヴォネガットがビアフラの政権を、エーリッヒ・フロムの娘かなんかにお願いされてルポした作品なんかが印象に残っていますが、これも、そのひとつ。残念ながら絶版のようですが、こちらで復刊リストの候補にもなっているようです。

lou_reed_poem.jpg

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Comments

トラックバックありがとうございます。
おかげで「時の翼にのって~ファラウェイ・ソー・クロース!」の
DVD買おうとしてたこと思い出しました(笑)
ちょこっとルー・リードがでてきます。

Posted by: しまじろう | September 17, 2004 at 02:31 AM

そっかぁ、ルー・リードはゴルバチョフと競演したのかぁ

Posted by: pata | September 17, 2004 at 07:28 AM

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