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September 15, 2004

『東と西の語る日本の歴史』網野善彦

『東と西の語る日本の歴史』網野善彦、講談社学術文庫

網野善彦さんは、後年の日本史概論などにおいても、さかんに「日本が稲穂の国で昔から統一国家だったというのは幻想」「平将門と藤原純友の乱が同時に発生した時期には、王朝そのものが倒れてもおかしくはなかった」ということを強調していた。そうした主張に関する、多くの日本史研究を紹介してくれているのがこの本。

新鮮だったのが、西国(朝廷)が東国(武士)と対抗する上で東北地方と結びつこうとし、関東は九州と結んで朝廷を挟撃しようとした、という構図が見えるという指摘。特に、足利尊氏が権力を掌握する過程で、いったん九州に逃れてから建武朝廷を打倒する課程は、その構図が見事にあてはまる。確かに尊氏の「東北から九州をまたにかけた、日本史上まれにみるといっても決して過言でない、大きなスケールをもつこの軍勢の大移動は、まさしくさきの地域間の連合・対立の全面展開以外のなにものでもない」(p.261)という主張にはワクワクさせられる。

そして東北と関東の対立は、俘囚の長といわれた安倍氏の乱を関東の武士が抑えることによって生まれたという指摘も納得的だ。その対立の構造は前九年の役、後3年の役などで深刻化していく。

また、東と西の違いは、東日本が家父長制的なイエ社会であり、西日本では母系的なムラ社会であることに起因するという宮本常一さんの説も紹介されている(p.46)。

「人の心のまかれるをはすて、なおしきをば賞して、おのすから土民安堵の計り事」をなしてきたという武士たちがつくった御成敗式目に対する「前近代の合議体の規範としてはおそらく最高水準に属する」という石母田正氏の評価は知らなかった(p.217)。どうも、ぼく自身も関東の産だし、同じ網野さんの紹介してくれる事例は心地よすぎるのかもしれないが…。

東の西の違いは名主と庄屋という呼び方、交通手段における馬と船、やくざと忍者、宗教における曹洞宗と一向宗など学問的に解明されていないものも含めて、思った以上に深いものだな、と改めて感じた(pp.307-308)。
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