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August 08, 2004

アジアカップ 日本vs中国と『サッカーの世紀』

 3-1というスコアは両チームの力量の差をかなり正確に反映した結果だと思う。

 中国は昔から、ガ体の大きな選手をまず集めて、サッカーの英才教育をほどこし、ブラジルなどに留学させてエリートを育てるという強化方針でやってきた。その結果、アジアではいつもナンバーワンのディフェンスラインを揃えてきたが、今回も前線の選手にはひらめきが感じられない。昨日も途中出場の孫継海(スンジンハイ、英マンチェスターシティ)によるサイドからの突破しか決め手を見出せなかった。FWもアジアカップを通じてふかすばかりだった29番と、老いたハオ・ハイドンからは危険な香りはただよってこなかった。

 今現在、中国がどのような強化方針でサッカー選手を育てているのかわからないが、ぼくが知っている状態から変わらなかったとしたら、これからもディフェンスは強いが、得点力には劣るという状態からは脱せないのではないか。残念ながら、中国のナショナルチームからはボールと戯れて飽きることがなったというような少年時代の姿を想像することができない。それが変わらない限り、あるいは中国共産党の独裁政権が終わらない限り、こうしたチームしかつくることはできないだろうと思う。アタシの友人も書いている。「中国のサッカーは実に単調であるな。フットボール的ひらめきというものが全く感じられない」と。まったくその通りだと思う。

 後藤健生さんの名著『サッカーの世紀』文春文庫の十三章に「サッカーは自由で発散的なスポーツ-全体主義にサッカーは似合わない」という文章がある。この中で、第二次世界大戦後、東欧諸国で急激に力をつけた瞬間というのは常に国内で自由化運動が起こっていた時期と重なっているという指摘がなされている(p.214)。50年代のハンガリー、70年代から80年代前半のポーランド、そしてユーゴスラビア。

 ぼくはこうした国のサッカーが本当に好きだった。特にポーランド。力強く守って、精力的にラッシュして泥臭い「ポーランド製ゴール」を決めるスタイル。ラトはいまだにぼくのなかで英雄だ。こうしたポーランドのスタイルを「ただ教え込まれた通りにパスを蹴っているのではない戦術眼、自主的判断という全体主義教育とは対極にあるようなもの」(p.215をアレンジ)と後藤さんは書いている。そして「パスが送られてくるであろうスペースに、前へ、前へと走りこんでくる精力的な動きには、イタリアとかフランスのような、相手をバカにしながらパスをまわす都会的な洒落たサッカーとは違った、もっとひたむきで純粋なものを感じさせる」(p.215)とも。

 後藤さんは全体主義体制の下では「サッカーという高度な駆け引きを要求されるスポーツ、自分の頭で、自分の責任で判断を下すことが要求されるスポーツでは、強いチームを生み出せなかった」(p.222)と書いている。「そもそもサッカーというこのスポーツは議会制民主主義、自由経済を信奉する十九世紀半ばのイングランドで作られ」(p.223)たのだから。

それにしても日本代表は強くなった。後藤さんがワールドカップ強豪国に共通していると書いていた「ワールドカップでの戦い方というのは、まなじりを決して、興奮状態のうちに、一か八かの勝負をいどむのではなく、常に冷静で、粘り強く、勝利の可能性を一パーセントでも高くするために努力する」ことが、キャプテン宮本をはじめ多くの選手が実行できるようになったのだと思う。日韓ワールドカップでも感じたことだが、そのクールさは他を圧倒していた。

 そして、ジーコ。サンケイスポーツがいいことを書いている「Jリーグが発足する2年前の91年5月に来日し、住友金属(現鹿島=当時日本リーグ2部)に入団した。1年目は8畳1間の独身寮に単身赴任。朝食は主に焼き魚にみそ汁だった。黙って食べた。日本の文化に接して日本人を知る。歴代の外国人代表監督との違いはここだ」

 絶対に負けない。自分たちを信じるというジーコイズムが浸透した結果だと思う。代表というのは「セレソン(選ばれた人たち)」なのだから、その責任を自覚してクールに全力をつくす、ということができるようになった。アジア各国は震撼していると思う。4年前に続き中田英抜きだけでなく、稲本、小野などを欠いた1.5軍でアジアカップを席巻してしまったのだから。

 ついでに蛇足だがサポティスタはこの時間になっても更新されない。そりゃそうだろう。これまでのジーコをナメきった一言コメント、非礼に対し、なんらかの説明をすべきだと思う。

 さらに蛇足だが、アウェイ感を満喫させてもらった中国人サポーターにも感謝してwアジアカップ勝利をかみ締めたいと思う。

soccer_no_seiki.jpg

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Comments

祝アジアカップ連覇!! ホント、めでたいっす。
これで来年はコンフェデ出場もあるってことだから、Jのカレンダーづくりも大変だろうなー。

まあ、中国の方々もそんなに悔しかったら、もっと強い代表チームを作ってくれってこったw

Posted by: 7号 | August 08, 2004 at 11:46 AM

昨日はお誘い本当にありがとうございます。野球の試合の後(前回負けているチームに逆転サヨナラ勝ち!)、二子玉のガーデンテラスでビール鯨飲の休息をとり、最初に見る予定だった小料理屋さんが突然休業というアクシデントにもかかわらず、常に代案を用意しておくという原則を忘れないことが幸いし、恵比寿のダーツバーに集合。元東海大翔洋のサッカー部出身のナイスミドルで、ぼくと一緒に日本代表の試合を観てまだ負けがないというWさんを含めて、全員で渾身の応援で盛り上げてきました。うちらのグループ以外にも10人ぐらいがサッカー目当てにきていて、アジアカップの盛り上がりを感じさせてくれました。

>まあ、中国の方々もそんなに悔しかったら、もっと強い代表チームを作ってくれってこったw


ま、そういうとでw
というか、はっきりいってまだ経験値少なすぎ。あれで日本代表にタイトルのかかった試合で勝とうなんて10年早い。

Posted by: pata | August 08, 2004 at 12:44 PM

Pataさんの文章は深いなぁ
私の目標です!

今回のアジアカップ、正直予選の間は不満ばかりが募りましたが、決勝Tに入ってからは本当によく頑張ってくれました
同じ日本人として誇りに思います

Posted by: shu | August 08, 2004 at 07:18 PM

いつもTBありがとうございます。お褒めに預かり恐縮です。
ぼくは、まあ、信者といっていいジーコ派なんですが、これまで見えてこなかった彼の強調するスピリットの部分が、少しわかったような気がします。
彼も長嶋さんみたいな天才型なので、論理的にしゃべるというのは得手じゃないと思うんです。で、誤解もうけてきたんじゃないかと思いますが、このアジアカップの日本代表は、まるでセレソン・ブラジレイラのような雰囲気を持つに至ったんじゃないかと。それは「日本代表のユニを着る誇り」「絶対に負けないという自信」じゃないかと。

Posted by: pata | August 08, 2004 at 07:43 PM

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