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August 02, 2004

『サッカーの国際政治学』小倉純二

 日本人初のFIFA理事となった川渕キャプテンの懐刀、小倉純二さんの書き下ろし新書だ。非常に興味深い。川渕キャプテンの人物評では「あいつは将来FIFA理事になれる」というのが最上等のものらしいが(知る限りでは中田英と広山がメガネにかなっているらしい)、それもそのはず、1994年に初めて立候補した村田忠男さんはわずか2票しかとれずにあの鄭夢準氏に敗れていた日本サッカー協会にとっては"憧れのイス"だったのだ。

 日本のスポーツ界において、なんやかんや言われてもサッカー協会の風通しがいいと思うのは、こうした国際社会を舞台にした駆け引きをこなしてきた経験値があるからではないかと思う。FIFAの世界では、例えば06年のワールドカップをドイツか南アかのどちらかで開催するかの決選投票の際に、ノイローゼ状態に陥ったために棄権してしまい、やがて確定的だったワールドカップの出場枠「1」をとりのがすことになるオセアニアサッカー協会の会長のような失態さえ生むことになる過酷な場なのだ。内向きの政治だけでなく、外向きを意識した政治力も鍛えられるハズだ。以上のことがだいたい「第1章 FIFA理事とは」に書かれていて、サッカーファンなら素早く引き込まれるだろう。

 次の「第2章 『アジアの誇り』を担って」は日韓ワールドカップの共催までの舞台裏が描かれている。最初、なぜジョホールバルがフランス大会のアジア第三代表選出決定戦の場として選ばれたかが明かされる。ぼくが知らなかっただけかもしれないが、イランがマレーシアでもOKといったのは、その時、もしかして日本と戦うかもしれなかったサウジアラビアが希望したバーレーンを宗教上の理由から忌避したからだったという。おそらくシーア派とスンニ派の問題だとは思うが、まさか、そのためにわざわざ日本に有利なマレーシアが選ばれたのかというのは思いもつかないことだった。

 「第3章 FIFAのおきて」では組織のことが書かれているが、一番面白かったのはトイレ事情。日韓ワールドカップの時に、和式が"Japanese"と書かれていたのを「日本人専用とは差別的だ」とうけとられかねないとして"Style"をつけるすべきだという意見が出されたことや、ようやくアジアでも一般的となったホーム&アウェー方式だと、中東の場合スタジアムの女性トイレがないので、日本人の女性記者が困ったとかの話が出てくる。
 
 残りの「第4章 Jリーグは夜つくられた」「第5章 FIFAの新しい挑戦」「第6章 2人の先輩」は古河時代を上司であった長沼元会長や川淵キャプテンをヨイショしながらJSLからJリーグへの歩みを語るという内容。

 いろいろあるが、ワールドカップ予選でアジアでも一般的となったホーム&アウェー方式が、各国サッカー協会の財政を確立する上で非常に役立っているとか(入場料収入やテレビ放映料)、サッカー日本男子の国際試合のテレビ放映料が1億円を超えるとかの情報は「なるほどね」と思った。

 サッカーファンは必読でしょ。少なくとも協会を批判するなら、これぐらいは読んでおかないと無意味なジーコ批判をしたあげくに「願わくば、二次予選がセントラル方式になりませんように・・・(苦笑)」なんて無知をさらすことになる。ホーム&アウェーの旨味を知ってしまった各国のFAが、いまさらセントラル方式に戻るなんてことは、よっぽどのことがないかぎりあり得ない。

 古河電工時代、ロンドン事務所長として英国に滞在することになった小倉さんに、当時の長沼専務が「日本サッカー協会国際委員会委員」の名刺を与えてくれて、「日本では誰にも相手にされない肩書きが、イングランドでは正反対の扱いを受けたことは新鮮な驚きだった」(p.118)という一節は印象に残る。
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