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August 04, 2004

『粉飾国家』金子勝

『粉飾国家』金子勝、講談社現代新書
正直、年金問題に関してはよくわからないところが多い。一番の理由は社会保険庁が厚生労働省の外局であり、いわゆる地方の「中二階」止まりの人材ばっかりが集められているから、事務処理能力もないし、危機管理能力もないということなんだと思うが、とにかく問題点をハッキリさせるための資料だって整理されていない始末なのだと思う。まだまだ官僚はバカばかりじゃないから、次官レースに参加しているような人材を社会保険庁に送り込めば、こうした「何もわからない」状態は少し改善されると思う(まあ、火中の栗を拾いたいヤツは少ないが、官僚たちも、全員がそこまで腐ってはいない。各省庁の中には少なくとも3~4人はシッカリしたヤツはいると思うよ)。

金子教授のスタンスは、マスコミの国会議員年金未加入問題などのネガティブキャンペーンとバッシングに惑わされず、問題の本質を見ていこうというものだが、自身の本の内容も「年金の未積立金が480兆円(厚生年金430兆円+国民年金50兆円)もの規模に膨らんでいる」と人びとの恐怖心を煽っているだけのように思える。

どうして、こんなことになってしまったのか、ということに関しては、40%近い未加入・滞納者がいるというのと、年金積立金の運用が極めて不調だからだ。個人的には年金未加入・滞納者は許しがたいとは思うが、人びとはバカではないから、特に貰える額の少ない国民年金なんかは払いたくないという気持はわかる。

その問題はおいておいて、運用の不調さだが、グリーピアなどのムダ遣いはさておいて(たかが3000億円台だ)、株価が低調なときに株価対策として使われたおかげで累積損失額は6兆717億円に達していることや(もしかして、いまは少し持ち直しているかもしれないが)、年金積立金の69.1%にもなる112兆3000億円が、財政投融資資金として何も利益を生まないような特殊法人に貸し付けられているのが問題だと指摘する。そして、こうした特殊法人全体は35兆円の債務超過になっているというのだ。

ここらあたり(PP.130-134)は読みごたえがあると思うから、本屋さんでここだけ立ち読みして、買うかどうか決めたらどうかと思う。ちなみに「過去分も含めると厚生年金で530兆円(1999年度末)、公的年金全体で約800兆円(2001年度)」という年金の債務超過額が示されている(PP.108-109)。

金子教授は恣意的な操作でどうにでもなる未来の予測値によって設定された数字による粉飾予測に基づく年金制度を改め、拠出税方式によって若者の信頼を回復し、将来は政府を「中央政府、地方政府、社会保障基金政府」の3つに機能分化しろといっているが、まあ、最後のここらへんはマンガ。

危機感あおりすぎということで、それぐらいなら、個人的には改革の本丸として小泉内閣が掲げている郵政改革の行方を見守りたい。というか、約150あまりの特殊法人は「国営企業」なので倒産せず、赤字を流しつづけ、それを郵便貯金が支えているという図式をどうにかしない限り、年金問題だって解決しないからだ。民間企業は銀行からカネを借りてビジネスを展開するが、200兆円の郵便貯金は特殊法人にまわる。この200兆円を運用するために、旧住宅公団や道路公団などへ無理やり貸すことになり、公団側はムダな住宅や道路をつくるという構図ができる。さらに採算の取れない事業に対しては利子補給が税金から行われるので倒産しない。構造改革に郵政3事業が重要なのは、こうした構造そのものを変えるためだ、とぼくは思っているし、いくら国会で予算を決めても、それ以上のカネが恣意的に使われるという状況をどうにかしない限り、ダメだと思うから。

しかし、とにかく、年金については、専門家でもわからないことが多いというのが本当だったんだな、ということを確認できただけでも読んでよかった。民主党が年金改革法案を提出した際に、自民・公明両党が「具体的な数字が示されていないから無責任」だと批判したが「実際は、与党自身も計算できずに官僚たちに計算してもらっているだけであって、そういう批判をする資格はない」(p.37)というのはこの本の文章のなかで一番きまったところだ。
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