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June 23, 2004

『創価学会』

『創価学会』新潮新書、島田裕巳

オウムでポン女の教授職を棒に振った宗教学者の島田裕巳さんが、創価学会と訴訟合戦を繰り広げる新潮社からズバリ『創価学会』という新書を出したのだから読むしかないだろう。ということで買ってきたのだが、いたって穏当な内容。さすがアカデミックの世界で生きてきただけあって、扇情的な書き方はしていない。それがかえっていい。

考えてみれば、ぼく自身、創価学会関係の本を読むのは初めてだ。自民党と野合して政権与党の一翼を担う公明党を支える団体だけに、そろそろ誰かがマジメな批判を加えなければならない時期なんだと思う。教祖的存在の人物に関するセックススキャンダルなどではなく、もっと正確な事実を踏まえた本格的な批判が望まれる時期にきている。

ぼくが創価学会を評価していた唯一に近い情報は初代会長の牧口常三郎が戦前、治安維持法で検挙されて極中死したというものだったが、実は検挙される原因となった行動が「純粋な天皇崇拝を確立するために、神宮大麻を焼却した」(p.38)というのには多少ガックリした。「一般の宗教団体においては、教祖の死が、その教団を飛躍的に発展させていく契機になることがある」が、牧口の死はただ一人残っていた三男が中国で戦病死したことに衝撃を受けたものであるなど「きわめて人間的なもので、神秘的な出来事に彩られたものではなかった」(p.38-40)という指摘も当然知らなかったし。

二代目会長の戸田城聖は初代の牧口が小学校の校長だったのに対し、代用教員にすぎなかったが、学習塾で大当たりを取り、受験参考書『推理式指導算術』もベストセラーになるなどのやり手の教育ビジネスマンだというのも知らなかった(鶴見俊輔さんもこの本には助けられたという)。出獄後、かつて経営していた17もの会社は爆撃などで焼失して、それでもビジネスを軌道にのせたのもつかのま、信用組合の経営に失敗したのを立て直すのに奔走して評価されたのが三代目会長の池田大作だったという。

戸田に関しては酔っ払いながらの講演など、個人的には共感できるがw創価学会がここまで伸びたのは、戦後の高度成長期にあって、地方から都会にやってきた農村の次男・三男などを組織化した、という島田の指摘はなるほどと思う。低学歴の未熟練工など都市下層民は総評、同盟傘下など大規模組合からも相手にされず、共産党などの左翼勢力と創価学会が奪い合う形で組織化を進めていったが、結果をみれば創価学会の1人勝ちに終った。その原動力となったのが自分たちを故郷から追い出し、都市での新しくはあるが困難の多い生活を強いた社会への、強い反発心」(p.68)であったとしても、そうした情熱をうまく布教活動に結びつけた戸田、池田の指導力はさすがだと思う。

そして、ここまでは書いていないが、同じように都市下層民の組織化に走った共産党や新左翼などのグループが60年安保闘争において、壊滅的な打撃を受けたのに対し、安保闘争に関しては傍観して勢力を温存しつつ、同時に情熱を暴力的ともいえるような布教活動に振り向けることによって信徒を獲得できたというのも最終的な1人勝ちの原因ではないか。そして60年代末の言論弾圧事件でそういた行動に自主的に歯止めをかけた後は(この判断は偉いと思うが)、公明党などの選挙活動に情熱のハケ口を向けるという具合に、うまい展開も続く。安保に反対しなかったということは、保守勢力から評価を受け、現在の自民党との連立にもつながっていくわけだし。

三代目会長の池田に関しては、後継者として目された次男を失い、これから内部にカリスマ的人物が生まれてくることも期待できないことを一番よく知っているためか、死後は集団指導体制に移るだろうという予測も行なっている。

ぼくが興味深かったのは池田が98年から衛星放送を通じて、幹部会の会議を全国に中継しているという点だ。東大卒など学歴の高い信者が組織の中枢を担うようになってきた中で、「組織が官僚化していく道を閉ざし、組織の活動の中心的な担い手があくまで庶民である一般の会員であることを確認」できるよう、池田は会議で「人材がいない」などと幹部を叱りつけるという。こうした放送が中継されれば、「庶民である一般会員にとっては、幹部たちが池田から叱られる光景に溜飲が下がるだろうが、学歴の高い幹部たち」の「プライドは、幹部会の席上で粉砕されてしまう」。ここに創価学会の抱える今日的なジレンマがあるという指摘はなるほどなぁ、と思うとともに、個人的には池田はなかなかヤルなと感じる。さすがに800万人近い組織のリーダーではあるわけだ。

島田の「創価学会は戦後日本の戯画だ」(p.183-)という結論には深く頷く。いくら毛嫌いしても「創価学会という組織は日本人の誰にとっても決して遠い組織ではない。むしろ、私たちの欲望を肥大化させたものが創価学会であるとも言えるのである」というのが結語だ。

橋爪大三郎さんも創価学会に関しては書きたいといっているし、これから、もっとこの組織に関する研究がなされていくことを期待したい。

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