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May 09, 2004

稲本のフルアム完全移籍のゆくえ:公表された報道から

 稲本に関して書かれた文章でよく取材しているな、と思ったのは『Number』の530号(01年9月)だった。扉の写真が見開きで、右に青黒のパナのユニを着た稲本(伏目)、左には赤いアーセナルのユニを着た稲本(前を向く眼差し)を配置したビジュアルが素晴らしい。サカマガ、サカダイにないのはこういうセンスなのだが、それはおいといて、リー小林さんが書いた記事の眼目は、稲本の育ての親ともいうべき、ガンバ大阪の上野山信行元ジュニアユース、ユース監督の話。

 上野山さんは、稲本が中学を卒業すると普通の高校から単位制の高校への転校を薦めると同時に、ユースの稲本をトップにあげるためにパナのフロントを説得したという。

 「16歳!そんなんで大丈夫なんか?」
 「せっかくJの下部組織はトップとつながっているんですから、1個飛ばしましょう-中略-世界に行けるかもしれない。外国のクラブに認められたら、3億、4億の移籍金がもらえますよ。やってみましょう」(p.53をアレンジ)

 こんな会話があったという。どうもガンバが3~4億円という移籍金にこだわるのは、こうした会話があったからではないかと思うのだが、とにかくフラムとの交渉はこうした金額で始まったんだろうと思う。

 今期が始まる前、稲本はガンバ大阪から「ローンは今年で最後。完全移籍でガンバに契約金が入ってこなければ、帰ってこい」と因果を含められたという。そうしたこともあって、開幕戦でのゴールなど序盤は飛ばした。しかし、稲本が4-2-3-1あるいは4-1-4-1のCMFでレグヴァンスキーと組めたのは、イングランド代表(とはいっても召集されたのは1回だけだし、その試合でも使われなかった)デービスが、シーズンが始まる前、エヴァートンへの移籍を志願し、フルアムのフロントともめたからだ。

 新しいユニフォームの発表会でニガ虫を噛み潰したような顔で出てきたデービスにもあきれたが、シーズン前、フルアムは昇格組をのぞけば降格候補ナンバーワンだったことも確か。オーナーであるアルファイドはクラブ経営に興味をなくし、イギリス国籍を取得する望みがなくなったので税金対策のためにスイスに引っ込む。20億円近い移籍金で獲ってきたフランス人FWマルレは2シーズンであわせて10台と絶不調でファンから愛想をつかされ、自身もイヤ気をさしてマルセイユに帰る。右からのサイド攻撃の要だったスティーブ・フィナンはリバプールに借金返済のため売却される。おまけに監督は高いカネが払えないので交通事故によるケガで選手を引退せざるをえなかった生え抜きのインド人ハーフのコールマンを使う。チーム状態はガタガタだった。

 こうしたチームにオサラバしようとしたデービスだったが、さすがにお天道様は許してくれず、ケガを負ってフィジカルテストに不合格、コールマン監督のお仕置きで、ずっとリザーブに落とされた。これが秋まで続いた。

 こうしてポッカリ開いたポジションで稲本は、まあまあの活躍をみせていたが、チーム成績がプレミアシップとしては初めて4位に上昇したとたん、デービスは移籍志願発言を取り消して監督とサポーターに謝罪。その声明文とコールマン監督と肩を組んで歩く姿がフルアムのオフィシャルホームページに載ったあたりから、稲本の出場時間は減少していき、使われるのも不得手な右サイドになるなど、実力を発揮できない状況になっていく。

 フルアムの公式HPには掲示板があって(Message Board略してMB)、そこで地元サポに稲本のことを聞いてみると、いつでも返ってきたのが「稲本はプレミアでCMFをやるにはLight Weightすぎる」「でも右サイドをやるにはスピード不足」「シュートはうまいし、よくFWはサポートするけど、そのポジションにはクラーク、マルブランクがいる」という八方塞りの答えだった。

 しかも、年明けからは当初2月初旬に設定されていた契約交渉の期限切れを前に、移籍金を下げないガンバ側にごうを煮やしたコールマンが稲本をスタンド送りにする。コールマンの考え方はアタマにはくるけどハッキリとわかるから、選手とのコミュニケーション能力も高いんだろう。それは、どんな考え方かというと、デービスの時と同様「これからも戦力として使えるメドのたっている選手だけでチームを構成する」というものだろう。

 3月に延長された期限切れを過ぎてもフルアム側は交渉のテーブルにつこうともせず、この頃からスポーツ紙には「稲本が今季限りで退団、移籍交渉決裂で」などの記事が掲載されるようになっていった。スポーツ紙に載せられたコールマンのコメントは「ガンバ大阪の提示額した移籍金とフラムの要求額には大きな差があり、交渉は泡のように消えた。今後、ローン(期限付き)移籍について話し合う予定はない」というようなものだった(3月18日)。

 こうした時に日本人選手の救いとなってきたペルージャもガウッチ会長は「来季セリエAに残留したら100%日本人を獲りたい。欲しいのは稲本。ウチに来たら絶対にレギュラーとして使う」と発言するも、B落ちが確実となり、稲本と代理人の田辺、それにガンバ大阪は打開策をサンプドリアに求める。

 GW明けに「サンプ 稲本獲得へ」というトーチューの大見出しがでる前、3月11日に稲本なぜかミラノに飛び、ACミランとサンプドリアの試合を見たというイナメールが稲本の公式HPに載ったことがあった。

 このときは「ミランからおそいがあるハズもないし」と半信半疑だったが、実はサンプドリアとの交渉が始まっていたことがわかる。そして5月4日のトーチューの「イタリア・セリエAのサンプドリアが、日本代表MF稲本潤一(24)フラム=の獲得に乗り出していることが3日、明らかになった」という記事は田辺のリークだと思う。

 このミラノ行き(実はサンプとの交渉)はフルアム側に影響を与えたようで、コールマンも「潤一に敬意を払うために迅速に結論を出す必要がある」と4月10日に2-0と快勝したレスター戦後、語るようになった。まだ「保有兼をもつG大阪が稲本の完全移籍について契約書で定めた移籍金は3億5000万円(推定)。G大阪側に移籍金譲歩の考えはなく、交渉はこう着している。また稲本も最近10試合で出番は交代出場の1度だけと苦境に立っている」という状況ではあったものの、交渉が再開されたという感触が表に出たのはこれが最初だったと思う。

 2chの稲本スレで「デービスやフィナンが2億前後の価格なんだからも、早くガンバも値段下げろや」という書き込みが増える中、「G大阪、稲本の移籍金見直しへ」という記事が5月2日に登場。記事では「G大阪の佐野泉社長が2日、フルハムが稲本の完全移籍を希望した場合、両クラブ間で設定された移籍金(推定約4億円)を見直す可能性を示した。『稲本は日本に帰ってくるつもりはないだろう。(移籍金を)下げることもある』と柔軟に対応する方針。G大阪はすでにファクスで2度意思確認を出しているが、フルハムからは完全移籍か否かの回答がいまだにきていないため、交渉もスタートできない状態という」と伝えていた。

 交渉が水面下では始まっていることをハッキリうかがわせてくれたのは、コールマンが稲本を使いはじめたからだ。4月17日のリブァプール戦に久々に途中出場。そして5月1日には昨年12月末以来の先発出場を果たし、18試合ぶりにフル出場した。4本のシュート、2本の決定的なスルーパスを放ちコールマンも「おそらくベストプレーヤーだった」「(完全移籍へ4億円とされるG大阪側の要求額に)何マイルも離れている。手が届かない。値段を下げてくれることを期待している」と交渉再開を明らかにした。そして、BBCの完全移籍有望という記事。

 うまく完全移籍が決まることを祈るとともに、ずっと見てきた交渉に関して、まとめてみた。

 それにしても、日本人選手で完全移籍しているのは、中田英、小野、中村、高原(移籍金がやたら安いといわれているが)だけという事実は、こうした選手のJリーガーと比べての優秀さを物語るとともに、まだまだヨーロッパからは本格的に認められていないという事実もあらめて考えさせられる。

 それにしても忘れられないのが2chのイナギャルたちの応援ぶり。2月ぐらいになるとベンチに入れるだけで出場チャンスを与えないコールマン監督に対して「コールマン氏ね」と書くイナギャルが多くなっていたのだが、その効果(?)か本当にコールマンがインフルエンザで入院。結局、2週間ぐらい試合には出場できず入院。一時は交通事故で骨折した足にウイルスが入ってヤバイという憶測も流れて「次は(稲本のライバル)デービス氏ねだ」と盛り上がっていたのには笑った。

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