『街道をゆく 台湾紀行』
『哈日哈 ハーリーズ』で少しふれたけど、司馬遼太郎さんの『街道をゆく』シリーズでも、
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江戸時代の日本では、この島のことを、高砂国とよんでいた。
諸本に、その記述が少なくない。
"無主"の地だったという。(文庫版、p.9)
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から始まる台湾紀行は出色の出来だった。
台湾紀行の最後には李登輝前総統と司馬さんの対談が収められていて、当時は現職の総統だった李さんのなど驚きの発言が読める。
「中日甲午(日清)戦争で日本に負けたとき、李鴻章がいちばん初めに日本に割譲したのが台湾でした。台湾は別にいらないんだと。化外の地だからね。日本がもらったって始末に困るよ。そんな感じでした」(p.379)
「江沢民さんと会う機会があったら、私は彼にこういいたいんです。『台湾政策や国家統一という問題をいう前に、台湾とは何かということを研究してみてはどうか』」(p.381-382)
「台湾がもし独立を宣言すると北京も怖いはずです。チベットや新疆も独立をいいだすかもしれない」(p.382)
「たとえば雲林省に行けば、田舎のことばがある。その田舎の言葉で演説すると皆がピンとくる。中国語でいってごらんなさい、わかったものじゃない」(p.385)
「家内は日本の教育を受けているから、家計簿をつけるのがうまいんです、だから、ぼくは安心して仕事ができる」(p389-390)
「植民地時代に日本が残したものは大きい。批判する一方で、もっと科学的なな観点から評価しなければ、歴史を理解することではないと思うな」(p.390)
そして対談の最後を司馬さんは、こう締めくくって「台湾紀行」を終えます。
「この時代(幕末から明治維新にかけて)、河合継之助は新しい国家の青写真を持った唯一に近い―坂本龍馬も持ちましたが―人物だったのに、歴史は彼を忘れてしまっている。台湾の運命がそうならないように、むしろ台湾が人類のモデルになるように、書きながらいつも思っていました」(p.393)
『哈日哈 ハーリーズ』とできれば一緒に。
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