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April 04, 2004

『「日本」とは何かを』を読んで2

 網野善彦さんの『「日本」とは何かを』を読んで、改めてかんがえさせられたのが、東日本と西日本の差だ。

 東日本では従兄弟婚など近親婚が宗門改帳でも多くみられるし(p.120)、被差別部落のあり方の違いも大きいとしている(p.197)。

 婚姻制度に関しては『歴史人口学で見た日本』速水融、文春新書という超面白本があるが、その中で仮説として

1)東北日本-アイヌ・縄文人型として、フォッサマグナ以北では女性は早婚するが子供を早く生み終え、出生制限してふたたび労働する形態
2)中央日本-渡来人・弥生文化型として、農業の発展に陰りが出ない限り人口制限する必要のない形態
3)西南日本-海洋民型として、若者宿や夜這いなどに象徴される雑婚形態

という3つの形態があることが報告されているが(pp.192-197)、社会の基礎となる家族制度や婚姻形態はこれほどまでに違うということは、もっと注目されていい。実際、フォッサマグナを東西のまたがる男女の結婚は非常に少ないそうだ。

ぼく自身も東京の生まれだが、同和問題の存在を知ったのは高校生になってからであって、それまではまったく、そうした問題自体があることも知らなかった。網野さんも神奈川短期大学の学部学生のほとんどが同和問題といってもなんのことかまったくわからず、なかには「童話」と本気で間違ったという嘘のような本当の話もあることを報告している。そして「これほどの差異が現代日本人の中にあることを、われわれは明確に認識しておく必要がある」として注意を喚起し(p.202)、例えば「連雀」という言葉が東日本では自由の象徴であったのに対し、西国では差別・蔑視を示す置字になっているという例もあげている(p.206)。

 こうした差異はどこから生まれたのかというと、大雑把にいえば、弥生による縄文の侵略だろう。ヤマト朝廷による東北地方への侵略は9世紀に桓武が東北との妥協を選び、軍事による統治をあきらめたが(p.106)、10世紀には平将門の乱が発生し、新皇として即位する事態となる。将門は「暦博士」を置かず、時間を支配するという意識に欠けていた(p.139)とい指摘は新鮮だが、とにかく新政府は2ヵ月で崩壊した。この時期、もし将門の東方政権が長期化すれば、純友の乱の展開いかんによっては、京都の王朝が消しとんでいたことも大いにありえる(p.140)と分析する。

 司馬遼太郎さんは、日本史の転換点は鎌倉幕府の成立であり、土地に根付かない貴族が農村からの税を中央が集めるという律令制度=中国文化圏から、自分の土地を自分が支配するというリアリティが決定的に生まれたという論議をしていたが、モンゴル来襲に対応する警護体制の形成などによる加速もあって、14世紀に入ると、日本国内の地域が、それぞれ自立した動きを明確にみせるようになり、16世紀には南の琉球王国が日本と並立するとともに、群雄が割拠、現代日本人の地域意識の直接の原点となっていく、としている。

結局、西日本から進出して東日本をも平定した太閤秀吉は西日本に続き東日本の検地も行ない、「御前帳」として天皇に献上することにより天下統一を達成。北海道と沖縄を除く列島の大部分が日本国の国制に入ったが、網野さんは「平安後期移以降、16世紀にいたるまでの列島社会の歩みは、『日本国』の姿自体が明確でないほどに多様かつ流動的であり、列島外の動きとの関わりで『日本国』が分裂し、雲散霧消する可能性もけっしてなかったわけではない」「列島内部の地域差はそのぐらいの言語や生活文化に及ぶ深刻さ持っている」(p.210)と結論している。

 これは、実感としてもよくわかるな、という印象。

 また、日本を1300年来の水穂の国というイメージでとらえるのは間違いで、15世紀後半になっても、8世紀(722年)に長屋王が発した良田百万町歩の開墾令がまったく実現されていなかったことから、それは単なる理想にとどまっていたとしているのも、新鮮だった(p.125)。

網野さんは、最初の方に書いているけど、ブローデルの『地中海』に対応するような大陸との交流を含めた『日本海』を書きたかったんだろうな、と思う。

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